比嘉 長編 初恋の人 (木手永四郎)
君の名は?
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木手side……
沖縄に旅立つ1週間前、今日の午後は花のドレス選び、自宅に来てもらっても良かったのだか複数のドレスを試着させたい俺の我儘で店へ出向く事にした。
甲斐君に花を迎えに行ってもらっている、到着まで書類を片付けながらソファーに鎮座した来客に溜息を吐いた。
『んで、なんで真希さんがいるんです?』
真『会わせなさいよ永四郎、その女に!』
『……はぁ……真希さん、写真なら見せたでしょ?』
真『実物が見たいの』
『見てどうするんです?』
真『……べ、別にどうもしないわよ』
『虐めないで下さいよ』
真『虐めないわよ……別に……』
元男性とは思えない美しさ、誰もが目を奪われる程の女帝が膨れっ面をして押し掛けて来て彼此1時間。
俺の結婚を知った真希さんは納得がいかないとごねる。
真『私が紹介したお嬢さんを何人泣かせたと思ってんのよ!どれだけあんたに有利な縁談だったか分かってる?』
『えぇ……分かってます』
真『それを、初恋の女に再会したからなんて……凡人の女と電撃婚?ありえないわよ。ね、永四郎っ、初恋の思い出に逆上せてるだけなんじゃないの?大体ね、凡人がこの世界に耐えられる訳無いじゃない、どうせ数年で精神病むわよ。』
『真希さん、俺はね花を表に出す気はないんです。』
真『だったら、そんなの囲いの愛人でいいじゃないっ!それなりの振る舞いで永四郎を立ててくれなきゃ困るわよ』
『何も困りませんよ、今までと変わりなくやればいい話です。』
真『甘いっ!永四郎、あんた激甘よ!』
『はぁ……真希さん、何度も言いましたけど、俺は、花と居られる為なら全て捨てても構わないんです。』
真『チッ……何処まで浮かれてんのよ……全く……辛い思いするのはあんたじゃないってーの!相手が辛いのよ……あんたが見えない所で!!』
『……花の心配を……』
真『……他所の大切なお嬢さんなんだからね。』
『えぇ……分かってます。』
真『あんたにも幸せでいて欲しいのよ、今までの努力を捨てて欲しくない』
『えぇ。』
真『捨てても構わないなんて甘い事言わないで、社員全てその家族の人生も背負ってるんだから。』
『はい。』
トントン……
甲『連れて来たやっしー!……ッ!ま、真希さんっ……』
真『裕次郎〜!』
甲『お、お疲れ様です……』
真『さ、出して頂戴!!!』
キョトンとした花が甲斐君の後方から顔を出す。
ソファーから立ち上がった真希さんは真っ直ぐに花の前に仁王立ちして頭の先からつま先まで目線を何度も往復させた。
「初めまして、山田花と申します。宜しく御願い致します。」
真『CLUB吟の真希よ……ちんちくりんね……表になんか出せないわ、こんなの……永四郎、ダメよこんなんじゃ。』
『真希さん……』
真『美容院に最後に行かせたのは何時?その靴、服も、化粧品も全部ダメ!永四郎、エステに行かせたの?鞄も何それ、待って、ネイルも……やだ、目眩がして来たわ、こんな状態でドレス選び?ありえないわよ!!! 』
『………………』
真『普通にありえない、ダイヤも磨かないとただの石なの!予約は何時なの?林っ!!!』
林『はいぃぃ!15時です!!!』
真『今11時ね、4時間、足りないけど何とかなるわ、裕次郎っ!車ッ!』
甲『!!!!!!』
真『15時までこの子預かるわよ永四郎っ!時間に銀座店に連れてくから、来なさい!!!』
「…………永四郎っ……え、」
真『時間が無いの、早くして!!!』
鬼の様に怒った真希さんが有無を言わさず花を連れ去った。
悪い様にはならないと分かっている、昔俺もあんな風に連れ回されて身なりや立ち振る舞いを教え込まれた。
恥ずかしい思いをしない様にと母親の様に世話をしてくれた。
自分の事ばかりで、花の事は自由にと花に任せていた。
カードを渡していたが、花が自分の服や化粧品に使った金額は庶民的な物だった気がする。
俺の服は俺の好みに合わせて新しい物が入荷させると勝手に届く、全てが手配されている生活に馴染んでしまって花の事まで配慮出来なかった自分が情けない。
花は今の花のままで俺にとっては最高の人だから……
女の支度と言う物を俺は知らな過ぎた。