比嘉 長編 初恋の人 (木手永四郎)
君の名は?
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あっという間に退職の日を迎えた。
背負った重たいリュックをドサッと下ろした様にホッとした。
プライベートで遊ぶ程仲の良い人も居ないので当然結婚式に呼ぶ事もない、形だけの見送りを受け上司から小さな花束を貰って会社を後にした。
甲『花〜!迎えに来たさ〜!』
会社の前に横付けされた車の窓が開き、甲斐君がニコッと笑って手招きする。
いつもなら永四郎も居るはずなのに、今日は甲斐君だけ。
甲『木手はまだ仕事残ってるからって、やーを連れて来いってよー』
「あぁ……そうなんだ。」
大人しく後部座席に乗り込むとゆっくり走り出した車。
甲斐君と2人きりは初めてかもしれない
甲『今日で仕事終わりなんだろ?羨ましいやー!玉の輿やっしー!』
「……うん。まさかだね……」
甲『不安か?』
「うん。たまにね永四郎が知らない人みたいに見える時があるの……当然なんだけどさ……」
甲『そりゃー11年も過ぎてるし、お互い大人だもんな、でもさー花、木手はあの頃のまんまやっし!花じゃなきゃダメだからさ、やーがいなくなってからの木手はじゅんに怖かったし、心がさ〜空っぽにやなったみたいで見てられなかったさ。こっちに来てからも眠れないとか頭痛いって毎日……やーと再会してから昔の木手に戻って俺も嬉しい。だからさーもう居なくなるな、ずっと木手のそばに……まぁ、いるよな、結婚するんだもんな!』
「うん……甲斐君、ありがとう。私も空っぽだったから、甲斐君にもまた会えて嬉しい」
甲『会社に行けば知念もいるさー!凛は沖縄だけど、慧君も都内にいるさ』
「え?そうなの?」
甲『うん、聞いてないのか?知念は社長代理になったし、慧君は系列のホテルでシェフしてるさ〜』
「そうなんだ!知念君が代理で田仁志君はシェフ……平古場君にも会いたいな……懐かしい。」
甲『そのうち会えるさー!あー会社にいればテニスしてた時の他校の奴らもたまに会えるぜ!跡部とか真田とか柳とか、結構仕事で一緒にやる事も多いさー』
「へぇ〜」
甲『花、これから大変かもしんねーけどさ、俺も知念もいるし、木手の事で悩んだ時は頼れよ、いつでも相談に乗るさ!』
「うぅ……そんな事言われたら泣いちゃうよ〜!!!ありがと!!!頼りにしてます!」
甲『おう!まかしとけ!それでさ、俺とあみちゃんが上手くいく様に助けてくれたらありがたい……』
「分かった!紹介してね」
甲『頼む〜!!!……よし、着いた、このまま地下駐車場まで行って俺が社長室まで案内するさ!』
大きなビルの地下へ滑り込んで車を降りる、甲斐君の後を追って裏口からエレベーターに乗り込んだ。
最上階のフロアに出ると1番奥の扉へ
カチャ……
甲『お疲れ様ですっ』
林『裕次r……あ……お疲れ様です。』
甲『えっと、秘書課の林あみさん』
「初めまして。」
甲斐君が畏まって紹介してくれた可愛らしい女性、例の愛しのあみちゃんはこの方だね…… お辞儀をすると丁寧にご挨拶を返された。流石秘書。
林『秘書の林あみです。宜しくお願い致します。』
甲『えっと、花、もう彼女じゃなくて、なんて紹介すればいい?』
「え……あ……うーん。」
カチャッ
木『婚約者かもう嫁でしょうね……遅かったですね。』
「……嫁っ……/////」
林(察し……)
木『林君、俺の奥さんになる人です。もしかしたら秘書として働くかも知れませんから仲良くしてくださいね』
「あ、あの、山田花です。よろしくお願い致します」
林『こ、こちらこそっ!宜しくお願い致します』
木『残りの仕事が終わったら皆で食事にでも行きましょうかね、何が食べたいか3人で決めておきなさいよ。』
永四郎はそう言うとまた部屋に戻って行った。
応接セットに3人で座って何が食べたいか吟味する。
甲『木手の奢りやっし……』
林『……迷いますね……』
「お寿司もいいけど、お肉も捨て難いっ!!!」
甲『思いっ切り高いの行こうぜ!』
林『経費で落としてみせます!!!』
「うーん。どうしよう……」
甲『慧君のとこは?』
林『流石、裕次郎っ!』
甲『花、鉄板焼き!高い肉を目の前で慧君に焼いてもらうさ!』
「決まり!」
林『問い合わせます!』
手際よく電話をかけ始めた林さんがあっという間に貸切で抑えてくれた。
3人で悪い笑みを浮かべながら永四郎が出て来るのを待つ
カチャッ……
木『決まったんですか?』
「うん」
知『花……?久しぶりさ、元気だったか?』
「知念君……久しぶり」
知『……永四郎……良かったな……』
木『……えぇ……さぁ、行きましょう、甲斐君飲みたいならタクシーにしますか?』
甲『良いんば!!』
林『大きい車を手配済みです』
全員(流石〜!!!!!!!!!!)
大きな高級車に乗り込んで田仁志君の勤めるホテルへ、皆の影に隠れて再会を知らない田仁志君の元へ。
田『はいさい、来たな野郎共!』
懐かしい大きな声が聞こえる。
永四郎の後ろからそっと顔を出す。
田『…………ん?……あぃ〜もしかして……花?やーか?』
「久しぶり!田仁志君!」
田『懐かしいなー!おい、いつ帰って来たんば?外国に行ったって……』
「5年前に帰って来たの」
田『……5年前……まぁ、深くは聞かねぇけど、一緒にいるって事は……そう言う事なんだろ?』
木『珍しく勘がいいですね』
田『……永四郎のちら見れば、わかるさ』
木『…………顔ですか……』
田『何年友達だと思ってるさ、』
甲『昔のちらに戻ってるからな』
木『……あぁ、もう、早く始めなさいよ』
田『花、いっぺーかめ!』
「出た、かめ(笑)いっぱい食べる!!!」
田仁志君の手際のいいヘラ捌きに見とれながら昔話に花が咲いた。
大きな鉄板の上で野菜もお肉もいい音で焼かれていく、ピンクのお肉がじんわりと色付いてとろけていく。
田『さー野郎共。かめー!塩とわさびがオススメさ!』
言われた通りに塩を少しつけて頬張ると口の中で甘い肉汁がじゅわぁーっと広がり柔らかいお肉がとろっと解けてあっという間に無くなる。
「おいしぃ……美味しすぎて脱力しちゃう……」
田『今日のは鹿児島の黒毛和牛A5、炙り肉寿司も食べるか?』
『『『「食べるっ!!」』』』
木『君達、ホント元気ですね……』
男子高校生の部活帰りぐらいの勢いで食べまくる甲斐君と知念君、真ん中に座った私と林さんは味わいながらゆっくりと頂いた。
木『花、今日でお勤めは最後ですよね?』
「うん」
木『お疲れ様。』
「ありがと。永四郎のお陰。」
木『まぁ、これからが忙しくなりますけどね、』
「頑張る」
木『えぇ……とりあえずお疲れ様』
2人だけで乾杯する。
明日からは結婚式の準備に専念出来る
沖縄へ行く準備もしなきゃいけない
でも永四郎の帰りを家でご飯を作りながら待っていられる事が嬉しい。
料理も少しは勉強しなきゃ……
美味しい幸せな夜だった。