比嘉 長編 初恋の人 (木手永四郎)
君の名は?
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跡『……お前が??結婚?何の冗談だ』
木『冗談では無いんですがね。』
打ち合わせに来た跡部君にそれとなく相談を持ち掛けて見たが、少し笑いながら呆れた様に溜息を吐かれる。
跡『んで?相手は何処のお嬢さんなんだ?そう言えばお前、俺様の従姉妹も振ったそうじゃないか、不貞腐れて大変だったらしいぞ。まぁ、あの女見た目は良いが性格がな…クククッ……』
木『彩さんですね……その節は失礼しました。跡部君の従姉妹と知ったのは後になってからでしてね。 俺程度の財力では幸せにしてあげられないと思いましたのでお断りさせて頂きました。』
跡『結構本気だったらしいぞ…』
終始笑いを堪えながら茶化す跡部君に申し訳なく思いながら、今後の身の振り方に光が欲しかった。
木『仕事とのバランスをどう取れば良いか、休みもろくにありませんし、彼女に負担をかける事も心配なんです。余り大きな場所に慣れているとは言えないので…』
跡『あーん?庶民の女って事か?まぁ、表に出なきゃいけない事もあるからな…嫁の出来が仕事に響かないとも言いきれねぇしな、色々と気が利かねぇのはちょっとな…俺はそう言うのが面倒で特定の女は作らねぇ。そのうち勝手に断れない見合いでもさせられそうだぜ。ま、お前がしたい様にするべきなんじゃねーの?休みなんて下の奴にどうにでもさせればいい、会社もデカくなってんだから、なんでも1人でやる事はねぇーし、ある程度任せる体制にシフトチェンジだな。もう少し楽にやっても良いと思うぜ俺は…』
木『そうですね……』
何でも先頭で全ての責任を抱えたままやって来た俺にとって、財閥御曹司の意見は目から鱗でした。 成金の俺と代々お金持ちの御曹司の器の違い…余裕…って奴ですね…
跡『教育係が必要ならウチのを貸してやってもいいぜ』
木『検討します。彼女の様子を見ながら……あの、跡部君……』
跡『あーん?何だ。』
ずっと心の隅で燻ってる事をこの際話して置くべきかと躊躇いながらも口に出してみる。
木『もし、彼女がこの生活に着いて来れない時は、俺は全てを手放そうと思っているんです。その時は…』
跡『木手…折角頑張って会社やって来たんだろうが。その努力や時間も捨てるのか?情けねぇな…』
木『………それぐらいの女なんです。』
跡『…ったく、どれだけいい女なんだよ…ま、お前の覚悟は分かった。そん時は俺様が丸ごと買ってやるよ…クククッ…悪い様にはしねぇから、』
木『助かります。』
こんなにも情けないお願いをしてしまうなんて跡部君以外には出来ない、大人になれば成程、立場を気にして本音を話す相手が居なくなる。
静まり返った部屋で、俺の疲労感を他所に優雅に珈琲を飲む跡部君はカップを置いて立ち上がった。
跡『…そこまで好きになれる女なんて俺は出会えねぇかもしんねぇな。今度会わせろよ、んじゃ、またな。』
木『えぇ、今日は御足労頂いてありがとうございました。次は俺が其方に。』
跡『あぁ…』
2時間程の打ち合わせを終え颯爽と出て行く跡部君を見送り、少しホッとした。
財閥相手に仕事となるとそれなりに気を使う、昔の交だからとウチの会社を使ってくれる跡部君には頭が上がらない。
彼の纏う優雅さは俺には一生身につかないだろうと思う
後30分後には内部の報告会が始まる、眼鏡を外して目を閉じる、一人でやる事はないか…… 俺が任せられる人材……
『はぁ……引き受けてくれますかね……』
頭に浮かぶ1人の姿、きっと嫌がるだろうなーと予想は出来ているが、彼以外は思い浮かばない。
打診してみるかと林に声を掛ける
『林君、企画部の部長と甲斐君を呼んで下さい。大至急。』
林『はい』