比嘉 長編 初恋の人 (木手永四郎)
君の名は?
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花 side……
目が覚めると見知らぬ天井
身体中が痛い、だるいし重い
ゆっくりと体を起こし部屋を見渡す
永四郎の姿は無い
グレーと黒で纏まった部屋は静かだ
ふわふわのバスローブを整えながら窓に近付いて見る、重みのあるカーテンを少しだけ開くと朝靄の中に高層ビル群が見下ろせた。
「ここ……何階なんだろ…」
非現実的な景色に見とれながらぼんやりと昨夜の出来事を思い出す。
……あぁ……やばいっ……////
まだ体に残る永四郎の余韻
何時間そうしていたのか分からない
どう行為が終わったのかは思い出せない
『花……』
気配もなく後ろから抱き締められて体はビクつきながらも回された腕に手を添わせた。
『体……痛くないですか?』
「……ん、少し……」
『すみません。』
優しく首筋に落とされるキスがくすぐったい。
『とりあえず、続きはシャワーの後にしましょうか。』
クスッと笑った永四郎が腕を緩めて手を引いた。
永四郎の降ろした髪久しぶりに見る。
きっと私がシャワーから出る頃には何時もの髪型にセットされてるのかな…なんて束の間の無防備な姿が愛おしい。
まるで11年の空白なんて無かったみたい
当たり前に幸せな時間が続いてきた様に思える。
カチャッ……
『好きに使って下さい、』
「ありがと。」
ホテルみたいに整ったバスルーム
ふわふわのタオルに新しいバスローブ
天井にシャワー……
ドラマでしか見た事のない光景に面食らいながら、バスローブを脱ぎ捨てた。
「ちょ……っ……やられた……」
全身に散りばめられた紅い跡に頭を抱えた。
服から出る部分は避けられてる…確信犯
昔からこういう事する人だったわ…
(俺の物に印を付ける事の何がダメなんです?)
真面目な顔でそう言うに決まってる。
熱いシャワーを潜り質のいいアメニティで洗い流す
どこか海外のリゾートホテルにでも来た気分だった。
新しいバスローブを羽織り、化粧水を叩く…
しまった… 私着替えも、化粧品もないじゃん
家に戻らなければ何も無い……
家に帰る=また永四郎と離れなきゃいけない。
急に胸が締め付けられる様に苦しくて涙が込み上げてくる。
家に帰るなんて何でもない当たり前の事なのに
このまま、また会えなくなる気がして堪らなく怖くなった。
トントンっ
『花… 開けてもいいですか?』
「……うん、」
カチャッ…
見上げた永四郎は少し驚いて私を抱き寄せる
『なんでそんなに泣きそうな顔してるんですか?』
「……なんでもないよ」
『無い訳がないでしょうが……俺を誤魔化せるとでも思ってるんですか?……ね、花…やっと会えたんです、我慢しないで何でも正直に言いなさい。俺はもうあの時の子供ではありません。君の願いぐらい叶えられる男にはなってるつもりです。……ね?』
「……っ…うん。」
着替えの事、化粧品の事、家に帰る事、永四郎と離れるのが怖い事、全て正直に話す。
私の背中を撫でながら、相槌を打つ永四郎は少し笑ってる……