比嘉 長編 初恋の人 (木手永四郎)
君の名は?
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『花…っ……』
緩めた腕の中に子猫の様に小さく収まった花 、頬を伝う涙毎包み込んで額に口付けを落とす、懐かしい空港のあの日の様に……
あの時もこんな風に俺を見上げて連れて帰ってくれと言わんばかりでしたね。
今なら君を連れ去る事が出来る、大人になったらを繰り返したあの日々、もどかしかった力の無い子供では無いのだから
『……』
ぎゅっと手を掴んで歩き出す、甲斐君ならこの先にきっと停まってる筈
逸る気持ちを抑えられず足早に車を探す
捕まえた獲物を早く自分のテリトリーに囲ってしまいたいとさえ思った
もし今が夢ならば覚める前に……
いや、早く現実だともっと確信したい。
見つけた車の後部ドアを開けて花 を押し込んだ
ドアを閉めてしまえば…
大人の紳士さは完全に也を潜め、我欲に走る高校生が好き勝手を手に入れただけ…
我ながら情けない、情けない程に花 を見つけた俺は浮かれていた。
甲『おーーじゅんに花やっしー!元気だったかー?』
「甲斐くんっ!!!!?」
甲『久しぶりさー!懐かしいなー!!』
今120%現実を確信出来ました。
ムードぶち壊しの甲斐君のお陰で……
雇った事を今後悔しました。
花 が他の男と話すだけでも腸が煮えくり返る
他の男に視線を向けるだけでも腹が立つ
木『いいから、出しなさいよ』
甲『へいへい』
ぽかんとした花 の奥からシートベルトを引き出す、甲斐君の運転は信用出来ませんからね、花 に傷でも付けられたらかないません。
わざとらしく視線を絡めて俺以外見ないで下さいと念を送る。
カチッと金具を押し込んで自分も座り直した。
自分の分の命綱も押し込み、花 の左手を握った
甲『永四郎、家でいいんば?』
永『ええ…。』
事の重大さを分かってない甲斐君の声に少々イラつきながら短く返事をすると、ゆっくりと車が動き出した、
花 を見つける前の状況に戻った体が夢を見ていたのかと錯覚を起こしそうになる。
いつもの帰り道に睡眠不足から居眠りでしたと
右手の中にある小さな花 の左手、何度もその存在を確かめる
窓の外に流れていく景色が少し歪み、我慢していた波に飲まれた
もう絶対に離さないとその握った手を引き寄せて指を絡めた
涙を見られない様に左手で目を拭い、震える唇を隠した。
歓喜に満ちていた心から仕舞い込んでいた長年の感情が溢れ出す、失った時の絶望、立ち直れないまま何度花 を思い1人で虚しい夜を過ごしたか
今隣を見て花 じゃなかったら……なんて、不安が過ぎる
人と言うのは何故こんなにも脆いのか……
突然舞い込んで来た幸福に動揺し躊躇してしまうのか…
素直に感謝すべきですね。
冷静さを取り戻した頃、車は安全にエントランスへ滑り込んだ。