比嘉 長編 初恋の人 (木手永四郎)
君の名は?
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俺を見上げる花 の瞳はあの日と同じで、驚いた唇がたまらなくて今すぐにでも奪ってしまいそうだ、大人になって俺を見上げる化粧をしたその顔が俺の心を強く締め付けて離さない。
声にならない言葉を絞り出す様に愛おしい唇から俺の好きな声が小さく吐き出される
「なんで……っ」
縋り付く様な瞳がみるみる潤んで行く、行き交う車と街の雑踏に消える声…
二度と君を失う訳にはいかないんだと俺の理性は消え去り、欲するままに力任せに抱き寄せた……
彼女の問に答えてあげる余裕など微塵もない
ただ、もう離れる訳にはいかない、何が何でも手に入れたい欲が俺を暴走させる
『花……会いたかった……』
君からの連絡を待ちながら、何度もポストを確かめた、声が聞きたいのに聞けない、会いに行きたいのに何処へ行ったのかも分からない、この腕に抱き締めたくても叶わない、突然消えてしまった俺の愛しい君……
ずっと忘れられなかった、君が俺の中に残した光はあまりに大きくて眩しくてその存在の大きさを失って初めて俺の全てだったと思い知った。
他の誰にも埋められないブラックホールと化したその穴が君の声一つ、潤んだ瞳をひと目見ただけで満たされていく…
君がいない時間に凍り付いた俺の感情が嘘みたいに溶けていく
いつも悩ませる頭痛の芯が暖かく包まれた様に緊張を緩めて脱力させられる
俺達は離れるべきじゃなかったんだ
1つで在るべき魂を引き裂いてしまってはならなかった
『ずっと…君を…っ……』
沖縄から離れて本土に行く時に近所のおばーに言われた
おばー『永四郎、世の中にはね魂の片割れが1人おる。本土に行ったらその人探しなさいねー、あんたの事探してるさー、見つけたら魂が喜ぶから分かるよー』
おばーの言葉が今なら分かる、
おばー俺漸く見つけました。
片割れ……魂が喜ぶ……
1つに戻って行くとはこう言う事だと確信しました
魂が待ち望んだこの瞬間、腕の中で震えている花 をこの場所から早く連れ去りたいと腕を緩めた。