比嘉 長編 初恋の人 (木手永四郎)
君の名は?
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木手side……
『はぁ……』
トラブルが落ち着いた日の夜、重役達を真希さんの店へ置き去りにして車のシートに沈み込む。
もうこれ以上の問題が起きない事を祈るばかりだ
流れていく景色に白い物が混じる
『…雪…ですか……』
通りで寒い筈だと思いながら、スマホの予定表を眺める、明日は社内から出ずに済みそうだとホッと胸を撫で下ろす。
『甲斐君、積もりそうなら明日は運転しなくていいですからね』
甲『積もったら、俺、休んでいい?』
『ええ、貴方に雪道を走らせるのは命が危ないですからね…』
甲『俺も死にたくない。』
自信なさげにいつもより速度を落として走る甲斐に苦笑いしながら、長い付き合いの友達とお互いの安全を思い合うこんな会話も悪くないと思う。
ゆっくり流れていく景色、街ゆく人々は寒そうに肩を竦め誰もが足早に家路を急いでいる様だ。
ふと歩道に傘を持たず舞い降りる雪を見上げた小柄な女性の姿が目に留まる、見間違いかも知れない、通り過ぎる景色はまるでスローモーションで、脳内には花の
何パターンもの姿がフラッシュバックする
見間違いでもいい…
『甲斐君、停まってくださいっ!!』
甲『はぁ?どうしたんば?永四郎』
『いいから、停りなさいッ!』
車が停り切れない内にドアを開けて飛び出した、ガードレールを飛び越えて走り出す、あの場所から50m…
重みのあるロングコートとスーツが邪魔くさく感じる、
もし花 だったら…
俺は……
連絡をくれなかったのに……
嫌われてるかもしれないのに……
あれから11年過ぎているのに……
今更、俺は何をしたいんだ…
走りながら色んな事が頭の中で葛藤する
拒絶されたら……
そうビビりながらも止まらない足、
ひと目だけでも会いたい……
もう一度だけでいい……
黒いトレンチコートに白いマフラー、 黒いロングの髪……
走りながら歩道に行き交う人の中から先程の影を探す。
見つけた……
『花っ 』
1m程後方まで辿り着き恐る恐る名前を呼んだ…
心臓が止まりそうな程苦しい、早く間違いじゃないと確信したい、鼓動が早くしろと俺を急かす、ずっと埋められなかった大きな空白が花 を恋しがって疼いた。
俺の全てが花 で満たされたいと望んでいる、
苦しくて苦しくて込み上げてくる感情が手を震わせた
『花 っ……』
我慢出来ない俺の全てが、いい加減にしてくれと足を動かし、早く確かめろと左手が女性の右腕を捕まえた……