比嘉 長編 初恋の人 (木手永四郎)
君の名は?
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生きて行く大変さに飲み込まれながらも恋愛をしなかった訳じゃない。
仕事で出会った1つ年上の人と2年付き合った、最初は優しくて頼もしかったが、転職失敗を機に家に転がり込んで来て、就職しては辞め、バイトをしては辞め、別れる前の半年はニートになった。
私の金を当てにして毎日毎日ダラダラと家を汚す。
食べたら食べっぱなし、脱いだら脱ぎっぱなし、情だけで過ごした最後の1ヵ月。
決定打は私の財布から現金を抜いていた事に気が付いたからだ。
もうダメだ……
甘え上手だった彼に吐き気がした。
最後の日、財布の中の4万円を叩きつけた
「出てって。このクソニートが!!」
荷物も全て廊下に叩き出して追い出した。
次の日の朝も玄関前に座っていたがシカトして、しばらくネカフェに寝泊まりした。
1週間経って家に戻ったら荷物と共に消えていたので、ホッとした。
きっと友達だと言い張っていた浮気相手の家にでも転がり込んだのだろう。
お誘いはあったがもう誰かと向き合うのは辛い。 当たり障りなく交わして今に至る。
気が付けば29歳の冬。。。
初恋が輝いて見える様な年齢になってしまった。
やりたい事もない、恋愛する気もない、
ただ淡々と生きているだけだった。
生きているだけで精一杯だった。
まだ人生の折り返し地点にも来ていないのに、1年先の未来さえ安易に予測出来る、何も変わらない毎日……
今夜は雪になりそうだ。