比嘉 長編 初恋の人 (木手永四郎)
君の名は?
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俺だってこの歳まで他の人と付き合わなかった訳じゃない。
取引先のご令嬢と見合いした事もあった、
嬢『木手さん、ご趣味は』
『仕事です。』
嬢『お休みは何を?』
『仕事を……』
嬢『…………えっと、好きなタイプの女性はどんな方ですか?』
『…………特には』
嬢『……そうですか……』
上手くいく訳が無い。
イマイチ興味をそそられない。
数回デートをした人もいたが、最終的にはお断りさせてもらう。
楽しくない訳じゃないけれど、気疲れしてしまうんです。
女性達の目の奥が笑っていない事、俺と見合いをすると言う事は=金が絡んでいる。
金が絡むぐらいなら割り切った関係の女の方が100倍マシな気がします。
誰かと夜を共にしても、あの夜に勝る事は無いと分かっている
誰かに触れる度に……
最後の夜を思い出す。
花が高校3年生のクリスマスイブ
俺達が最後に会えたあの日
余裕も何も無い
大人の真似事だったかもしれない
それでも、ただ愛おしくて
この腕の中に居て欲しくて
お互いの体温が溶けていく感覚がたまらなかった
大学を辞めてでも引き止めるべきだっただろうか、
誰に反対させても連れて逃げるべきだっただろうか……
いや、それはきっと違う
花に苦労をさせる事になっただろう
自分達の幸せだけ求めた所で本当の幸せとは言えない
俺に力が無かっただけだ。
はぁ……
今日は仕事にならない。
ずっと忘れていた筈の事まで思い出してしまう。