第Ⅰ章
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暗くて寒い牢屋の中で、僕達兄弟は身を寄せていた。弟の手は小刻みに震え、息も荒く、体温がとても高い。弟は今にも息絶えてしまいそうだ。僕達は、薄く汚れた布切れを纏って冷たい石畳に座り込んでいる。僕達は捕えられたのだ――‘ 違法奴隷商人 ’によって。
数年前、奴隷が合法とされ、国が直々に奴隷市場を運営するようになった。国営の市場に奴隷を卸す奴隷商人以外は奴隷の管理は禁止されている。しかし、国が違法に運営している団体や奴隷を不当に扱う商人などを取り締まっているとはいえ、その全てが根絶した訳では無い。その違法奴隷商人に、僕達は捕えられてしまったのだ。
「おい、お前ら! 何してやがる。もう仕事の時間だッッ!」
男は牢の扉を開け、僕達の前に仁王立ちした。彼は奴隷商人の手下。定期的に見回りに来て、仕事を怠けたり、無駄に話したりしていないかを確認しに来る。そう、今はもう仕事の時間だ。物を運んだり、機械を使って服を作ったり……。でも今はそれどころじゃない。
「お願いします、弟が、高熱を」
「あ? ンなもん知るかよ。痛くされたくないならとっとと出るんだな」
「で、でもっ! もうずっとうなされて」
「うるせぇ!!」
男が鞭を勢いよく振り上げた。僕は弟を庇うように抱きしめ、ぎゅっと目を閉じる。しかし、来るはずの痛みは感じず、代わりに銃声が響いた。恐る恐る目を開けると、男が頭から血を流して倒れていることに気が付く。驚きと恐怖が入り交じり、声が出ない。
見あげれば奇抜な服装に身を包んだ女が、胡散臭い程の笑みを浮かべて立っていた。顔の上半分は仮面で隠れていてその服装はサーカスのピエロのようだ。その手には煙を上げる銃が握られている。
「やぁやぁ、君を助けに来たよ。小さい方は私が抱えるから、君は1人で歩いてもらえるかい?」
そう言うと女は僕に向かって手を伸ばす。その手は救いか、さらなる地獄への誘いか。でも、僕にはその手を取るしか道は残されていなかった。
数年前、奴隷が合法とされ、国が直々に奴隷市場を運営するようになった。国営の市場に奴隷を卸す奴隷商人以外は奴隷の管理は禁止されている。しかし、国が違法に運営している団体や奴隷を不当に扱う商人などを取り締まっているとはいえ、その全てが根絶した訳では無い。その違法奴隷商人に、僕達は捕えられてしまったのだ。
「おい、お前ら! 何してやがる。もう仕事の時間だッッ!」
男は牢の扉を開け、僕達の前に仁王立ちした。彼は奴隷商人の手下。定期的に見回りに来て、仕事を怠けたり、無駄に話したりしていないかを確認しに来る。そう、今はもう仕事の時間だ。物を運んだり、機械を使って服を作ったり……。でも今はそれどころじゃない。
「お願いします、弟が、高熱を」
「あ? ンなもん知るかよ。痛くされたくないならとっとと出るんだな」
「で、でもっ! もうずっとうなされて」
「うるせぇ!!」
男が鞭を勢いよく振り上げた。僕は弟を庇うように抱きしめ、ぎゅっと目を閉じる。しかし、来るはずの痛みは感じず、代わりに銃声が響いた。恐る恐る目を開けると、男が頭から血を流して倒れていることに気が付く。驚きと恐怖が入り交じり、声が出ない。
見あげれば奇抜な服装に身を包んだ女が、胡散臭い程の笑みを浮かべて立っていた。顔の上半分は仮面で隠れていてその服装はサーカスのピエロのようだ。その手には煙を上げる銃が握られている。
「やぁやぁ、君を助けに来たよ。小さい方は私が抱えるから、君は1人で歩いてもらえるかい?」
そう言うと女は僕に向かって手を伸ばす。その手は救いか、さらなる地獄への誘いか。でも、僕にはその手を取るしか道は残されていなかった。
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