学園テーマパーク

【最終話】


当然、トモヤスがトイレから帰ってきても着替えなどしていない。

「どうして着替えてないの?」

「あんなの着替えられるわけないだろ!」

紙袋のなかには学園テーマパークの名物、転入生変装セットが入っていたのだ。制服とともにカツラ、眼鏡までそろっている。

「いい考えだと思ったのになー。おれとコウセイがいちゃいちゃしたら、腐女子のみなさんも喜んでくれると思うよ」

「喜ぶかよ!」

「喜ぶね。キスしたり、手をつないだり、抱き締めたり。大したことないのに笑ったり。おれ、コウセイとならいっぱいしたい。ねえ、おれのパートナーになってよ」

パートナーの意味をコウセイは勘違いしそうになる。トモヤスは仕事のパートナーになってほしいと言っているのだ。しかし、もし恋人としての言葉なら、これほどうれしいことはあるだろうか。

「もし、まだ男同士のことに抵抗あるなら……」

「ない、そんなもの」

「でも、触らせてはくれないよね。おれコウセイの全部に触りたいのに」

落ちこんだようにこぼすトモヤス。目をそらし、睫毛を伏せた顔をコウセイはほうっておけない。

「いいよ、触れ」コウセイは胸を前に突き出した。何ならタンクトップも脱ごうかという男っぷりだ。

「え?」

「そんでもって、おれが転入生になる。お前のパートナーとしてな」

コウセイがほほえむと、トモヤスの顔が近づいてくる。唇が触れ合うと同時にコウセイは押し倒された。
「や、やめろ」という言葉は絡み合う舌で吐息に変わる。
二人がとうとうベッドの上でいちゃつこうとするとき、保健室の外、学園の前では裸のマネキンが立ち尽くしていた。
どこか物悲しい眼差しを注いでいるように見える彼は、今日でその役割を終えた。

それからのテーマパークはどうなったのか、早く言えば大繁盛だ。映画のロケ地として有名になり、来客数は軒並み増えている。

今ではテーマパークの従業員も増えた。たった二人でやっていたことが数百人単位で行われている。

コウセイとトモヤスは今も学園テーマパークにいる。周りが恥ずかしくなるほどいちゃつきながら、転入生と会長として歓声の中心にいる。

〈おわり〉
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