甘くない話

【会長の夏休み】会長視点


この時期が近づくと、いつも胸クソが悪くなる。暑いからとか、別にあいつと一緒にいられなくなるからとかではない。それだけは言い切れる。

つーか、あいつとおれは関係ねえし。

ただ単に見栄という名のパーティに出席するのが、嫌なだけだ。

今、あいつに夏休みの予定を聞かれて、ホントにいらっときた。せっかく一緒にいるのにつまんねえこと聞いてんじゃねえ。
だから、せっかくって何だよ、おれ。
最近頭の調子が悪すぎる。

あいつの目の前だと、どうしてだか、力が入りすぎて失敗してしまう。
水泳大会はひどかった。あいつにいいところを見せようとすれば、足がつって泳げなくなったし。
まあ、あいつが助けてくれたからよかった。
海パン姿も見ちまったしな。

だから、男の海パン姿が何だって言うんだ!
暑さのせいか、やっぱりおかしい。
海パン姿を思い出してしまって、窓の外に顔をそらした。

「おれとどこかに行きませんか?」

言葉の意味を確かめる前に、素早くあいつを見た。
どこにでも生えてそうなじゃがいも顔。目はぼけっとして、言葉の名残のまま口を開いている。
生徒会にはふさわしくないほどアホ面。

でもおれは、どこにでもいる生徒のなかからこいつを書記に選んだ。はじめは興味半分だったとしてもだ。

周りからうとまれ、生徒会から底辺な扱いを受けようとも、こいつは書記で居続ける。大した男だ。

まあ、これが恋愛感情ではないにしても(つーかないだろう)、おれが気に入っているのは確かだし。

ぐだぐだ考えるのも馬鹿らしいので、仕方なくも二人きりで遊ぶことになった夏休みの予定とやらを頭に描きだした。

〈おわり〉
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