学園テーマパーク
【第三話】
一日の仕事が終わり、寮に帰ってきたコウセイは、部屋に入って真っ先に台所へ向かった。
やかんに水を湧かし、カップラーメンのビニールをはがす。いつもの光景、いつもの行動。
「ああ、喉が渇いた」
ひとりごとにも慣れた。
冷蔵庫には、缶ビールが行儀よく二列になって縦に並んでいた。
「本当に細かいやつ」
昨日遊びに来たときに、わざわざ並べてくれたのだろう。
トモヤスが冷蔵庫の前にかがみこんで整理をしている姿は、コウセイを笑わせるには申し分なかった。
「あいつ」
声を押し殺すように喉で笑う。しかし、俺様会長トモヤスの顔を思い浮べるとコウセイは眉根を寄せた。
忘れようとしていた。昼間の教室でのことを思い出したからだ。
「ああ、マジで気持ち悪い」
と言っている割に、気持ち悪さはなく、コウセイはそれが腹立たしかった。
突然で驚いたにせよ、少しでも自由にさせた自分が情けないのだ。
「考えたって仕方ない」
忘れてしまうのが一番だと、火を止める。どんな状況でもコウセイの腹は減るのだ。
食事が終わると、缶ビールを開ける。周りにコンビニもない地域のため、町まで行って買ってきた貴重なビールだ。
町に行くときもかたわらにはトモヤスがいた。
またしても、俺様会長トモヤスが脳裏に浮かぶ。
「マジで、とっとと消えろ」
悪態をつきながら、ちびちび飲んでいると、ピンポーン。
かざりっけのない音が響いた。
ここに来るのはたった一人しかいない。
コウセイは一度、扉を見てから缶ビールを置いた。
男だ。
乙女ではないのだから、逃げる必要もない。
何なら罵声の一つでも浴びせて、力任せに殴ればいい。
そうだ。男同士、包み隠さずぶつけてやろう。コウセイは必死で自分を奮い立たせた。