こはくの色

【第二話】


フェスティバルが近づくにつれて、学園内はいよいよ慌ただしくなってきた。
草原せんぱいのいる生徒会も、ほとんど表舞台に出てこないほどに、忙しいようだ。

青士せんぱいや関さんとも顔を合わせない少しだけ淋しい? (平穏な)日々が続いている。

だけど、ぼくも風紀委員に入ったし、クラスの出し物もあるから、暇な時がなかった。

今日も風紀委員の第二会議室では、場所の確認があった。どのクラスがどんな出し物をするかという情報も得られる。

それによると、関さんと青士せんぱいのクラスはホストとキャバ嬢(意味は最近知ったんだ)のカフェで、生徒会は劇……。ぼくのクラスはおばけ屋敷だった。

となりから手元をのぞきこんできた一安くんは、「あれ、それって」と目線を滑らせて「うわ」とこぼした。

「兄貴たちのブースだけには行きたくないな」

「え、おもしろそうだと思うけど。青士せんぱいのホスト姿を見てみたいなあ」

「小沢くん、そんなこと言えるの? 兄貴に襲われたくせに」

一安くんのひとことであの場面を思い出す。
細いと思っていた腕に抱き締められたとき。草原せんぱいが現れなかったら、どうなったことか。ぞっとする。

「忘れてたの。まあ、小沢くんらしいけどさ」

「あ、小沢じゃなくてマノって呼んでほしいなって。ダメかな?」

「呼んで……いいの?」

「いいけど、どうして?」

「う、ん、いや、いいよ。今からマノって呼ぶ。というわけでマノ」

「うん」

「つまんない会議から抜け出そうよ」ニカッとほほえむ。

同じ委員会に入ってから気付いたのだけど、一安くんは会議が嫌いらしい。前もケータイから呼び出しを受けて、嫌々という感じだった。
意見を言い合う会議なら、率先して参加するけど、確認のための会議が大嫌いだと言うのだ。

今日はちょうど書類どおりの会議だったので、一安くんは会議の半分くらい眠りこけていた。頬にうっすら跡がついているのはそのためだった。

「委員長にばれちゃうよ」

「まあ、そうだね。でも、つまらないよりかはマシ」

不適に笑う一安くんには勝てない。困ってため息を吐くけど、抵抗はそこまで。こっそりとかがむ一安くんに続いた。
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