短編
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今午前3時39分。
眠れない。
どうしても眠れない。
「明日大事な任務あるのに…」
もぞもぞと布団に潜りこんだはいいが、
全く眠れる気配がしなかった。
「やばいかも…」
大体、原因はわかっていた。
夜、土方さんに告白されたせいだ。
お風呂場に行こうとして、廊下で土方さんと会って、
急に手を引かれて、触れられたところから流れる血液をたどって、全身に光の粒が入っていくみたいな感覚が突然して、
「好きだ、なんて…」
なんであんなこと言われたのか、どうしてこうなったのか、
まるでわけがわからなかった。
頭が真っ白になって、ぐるぐると思考の代わりに血液ばかりが巡る。どう言えばいいんだろう。
「好きってなんだっけ…」
土方さんに告白されたからこんなにドキドキしてるのか。
それとも、私が知らないうちに胸の中で眠っていて、
気付かされたのか。
頭のうしろから波がきて、私を飲み込んでいく。
「っは…」
息が詰まる。
考えただけで呼吸困難になりそうなぐらい頭が容量オーバーで、
別のことを考えようとしてもあの土方さんの表情に遮られる。
「仕事、だめにしちゃいけないよね…」
1、2、3と息をして4秒目で息を止める。
5秒目で吐き出す。
戸を開けて、ひたひたと歩きだす。
空気は冷たいような気もしたし、温かいような気もした。
仕事をだめにしちゃいけないから、なんて。
そんなの言い訳に決まってる。言い訳しないとこのままじゃ息が詰まってしまいそうだった。
まるで土方さんの言葉が、表情が私を飲み込んでいって、私を溺れさせるのだ。
土方さんの部屋の前に立つ。
声をかけようとまた1、2と息を吸ったときだった。
「お前…」
先に土方さんが戸を開けた。
3の息を吸えなくて、止まってしまう。
意識して見なかった土方さんの瞳と私の瞳がぶつかってちかちかと光った。周りに光の粒が散って、顔がまともに見えなかった。
この人、こんなに光ってたっけ…。
好きな人の顔って眩しいって聞いたことがある。
ほんとに、ほんと?
「とりあえず、入れ」
そう声をかけられても一歩も動けなかった。
交わった視線がゆらゆらと揺れながらまたぶつかる。
息って、どうやってするんだっけ。
「さな、…おい」
土方さんに手を引かれた。
まただ。触れられたところから流れる血液をたどって、全身に光の粒が入っていくみたいな感覚。
確かに、夜のときもそれはあったけどそんなの全然比較にならないぐらいにはたくさんで、私が光ってしまうのかと思った。
それとも土方さんが光ってるなら、私が影になるのだろうか。
「こんな時間に男の部屋に来ると、夜這いだと思われても何も言えねぇぞ。」
土方さんが瞬きするたびにまた光の粒がはじける。
「…夜は、すまなかった」
「…いえ」
やっと言葉が出たけれど、なんだか私の言葉は黒く感じた。
土方さんが光ってるからだろうか。
「あの、」
土方さんがなにか言おうとしていたが遮った。
多分、なんとなく謝られるのはわかってたから。
そうじゃない、私が聞きたいのはそれじゃない。
もしかしてだめになっちゃうと考えたらそれは嫌だと思った。
あれ…私…
「そう思われてもいい、です」
土方さんがまた、ぱしぱしと瞬きをした。
やっぱりきらきらしてる。
「あの、どうして、土方さんはそんなにきらきらしてるんですか?」
「…は?」
「いや、あのおかしいこと言ってるのはわかってるんですけど、その、」
「お前のほうがきらきらしてるだろ」
「…え?」
言われてることがさっぱりわからなかった。
頭の後ろから風が吹いて土方さんの呼吸と混ざる。
「お前が、…さなが前からきらきらしてるんだろうが」
わかるけれどわからない。
「だからその、…初めてみたときから、さなはきらきら光っててな…」
「え…?」
「そしたらお前がすることが全部光って見えて、多分、それでさなのことが好きだって気づいたんだよ…だからその、いや…」
「好きです、土方さん」
その瞬間、土方さんの目からなにかぴかぴかと光る星のようなものが流れた。
本当はそれがなにかわからなかったけれど、多分自分からも同じ星が流れていると確信した。
「…さな」
「だって、きっと今星が私の目から流れているでしょ?」
「…ああ、ほんとにその通りだ」
2つの星はくるくると交差しながら闇夜へ消えていった。
私と土方さんが握った手からはまた新しい星がぴかぴかと生まれて、それも闇夜へ消えていった。