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青の祓魔師×名探偵コナン






「ーーで、最後に被害者と会っていた方は呼べたのかね」

「はい目暮警部!佐藤刑事が連絡をとって迎えに行きました」

路地で起きた殺人事件。
その場にいるのは殺された男性、齋藤脩。警察とその関係者大勢と3人の容疑者。第一発見者である毛利小五郎とその娘と居候の子供。
第一発見者達は何度も事件解決をして、毛利小五郎が元々警察官だったこともあって早々に容疑者から外れた。
赤いRX-7が近くの路地に止まって佐藤刑事が出てくる。後部座席のドアを開けて、相手の手を取った。
もしかしたら高齢の方かもしれない。しかし綺麗な姿勢で現れた姿はそうじゃなかった。
佐藤刑事の腕に掴まって、ゆっくり歩みを進める女性は目元全体を覆う包帯をしていた。
盲者だ。

「ただいま戻りました」

佐藤刑事が支える手とは反対の手で敬礼をした。

「あなたが結月楓さん」

「はい。警察の方ですか?」

「ああ。はい。申し遅れました。警視庁捜査一課の目暮です。今回お呼びしたのは亡くなった齋藤さんに関してなんですが」

「…亡くなった?」

「ええ。あなたと会った帰りに。刺殺でした」

驚きを隠せていない状態で見当違いの方向を向く。

「あなた自分がゴーストになってるってわかって私に話しかけてたでしょ。嫌になっちゃうわ。それで、誰に殺されたの?私が今回だけ言ってあげる」

誰もいない方向に、どこか楽しそうに笑いながら話す。頭のおかしい人にしか見えない。だがゴースト、と言った。

「結月には亡くなったはずの齋藤さんの声が聞こえてるんですか?」

「はい。あなたは…毛利小五郎さんというのね。彼ね私が来なかったらあなたが頼りだったみたいよ」

話が脱線仕掛けている。ゴホン、と目暮警部が咳払いをして注意を引く。結月楓が現れてから事件の状況が進んでない。

「私は脩さんの相談に乗ってたのよ。彼も視える体質らしくてずっと悩んでたみたいで。私はもう目が見えないけど感じ取れるの」

「どうやって?」

少しだけ間をあけて、彼女は下を見た。声をたどって、江戸川コナンがいる方向へ。するとあら、と口元を押さえて数歩下がった。佐藤刑事も困惑しながら一緒に下がる。

「こんなに憑かれて元気な子供がいるのね。それで影響がでないのもすごいわ。感じ方?もうそこにいるってわかるのよねぇ」

「えっ、待ってください!コナン君おばけに取り憑かれてるんですか!?」

「ええそうよ。あなたどちら様?」

毛利小五郎の娘の毛利蘭といいます。と早口で言って結月さんに詰め寄る。取り憑かれてるって治せるんですか!?それともちゃんとお寺とか神社でお祓いした方がいいんですか!?
結月さんの腕に縋り付く勢いの蘭を佐藤刑事が間に入って止める。

「いいですか。まず犯人は直樹さんという方で凶器はそちらのお宅の木に刺さってるらしいです。かなり上の方ですよ。彼ダーツ得意らしいわ。動機、は直樹さんの恋人が脩さんを好きになったからだとか。脩さん嫉妬されて…何とも運がないといいますか。…いえ、あれは魔除けなので人間相手だとどうしようもないですよ。で、蘭さんの方はこのままで諦めて下さい」

「は?」

誰かが間抜けな声を上げる。色々といっぺんに話すからどれが誰に向けてなのかが分かりずらい。しかもその間に死んだはずの齋藤さんへ向けての返事もあるのだから。
結月さんはこちらの話です、と一礼をしてまだ話し続ける。
これでは埒が明かないと、目暮警部が直樹さんと呼ばれた人物の方を向く。一見好青年の男が憎しみと怒りと羞恥を混ぜたような複雑な顔をして結月さんを睨むがそんなもの見えてなく、結月さんはそのまま齋藤さんがいるという方向を向いて話す。

「…えー、井上直樹さん。結月さんが言ってることは本当ですかな?」

「…はい。そうですよ」

まさか、本当に?現場に緊張が走る。警察はいつでも取り押さえられるようにすぐに動ける準備もする。
自白したことで何かが吹っ切れたのか、狂ったように笑いながら話し始める。

「あーもうホントおかしいよな。あいつの為に何もかも捧げてきたのに、それがあんな根暗を好きになったから別れたいって?ハッ!ないね!オレを好きにならないなら、いっその事って思ったら…!!いやぁいい気分だ!!」

この人、まさか恋人まで殺して…!?
この人が犯人だと分かったから、警察がほかの容疑者達を彼の周りから離れさせる。さっきまでとは反転したような変わりっぷり。

「あらあら」もう聞き慣れた彼女の声が場違いにも響く。子の緊張感の中には似合わない呑気な声。
犯人もそれが気に食わなかったようで、ひと目でわかるほどイライラして結月さんを睨む。

「脩さん、何もしないで。そこの彼女もですよ。あなた達ではどうしようもないですから」

「何がどうしようもないって!?今更死んだゴミクズに何ができるってんだ!??目の見えてねぇ頭のおかしいクソアマが偉そうにしてんじゃねぇぞ!!!」

佐藤刑事が庇うように前に出る。それすら気に食わない。1本踏み出したところで警察に取り押さえられる。
しかし、その細い体のどこから力が出てくるのか、警察の鍛えられた男の体を軽々持ち上げて塀へぶつける。次に警察は犯人の両腕両足と胴にしがみつく。
だがその歩みを止めることはできない。

「"その心には悪がある。主よ、その行いによってその悪行によって報い、その手の行為によって支払い、彼らに報復したまえ"」

彼女の声が響く。この日本で知ってる人は非常に少ないだろうが、コナンは聖書の一節を唱えてるんだとすぐに気付く。
ピタリと止まった男の歩みだが、その身体を震わせて突然取り押さえてる数人の警官を投げてよこす。

「キサマァ!!!」

「"彼らを討ち滅ぼし二度と立ち上がらせたもうな"」

佐藤刑事が警官を庇おうと1人受け止めるが勢いに負けて路地に転がる。この騒動に警官の対応も遅れてる。
コナンはいち早く気付く。この状況で1番危険なのは、犯人と結月さんの間にには一切邪魔できる間もない一本道があること。

「結月さんが危ない!!」

危険を知らせたコナンの方を見もせずに全速力で彼女の元へ走り出した。

「"主は祝されよ!"」

「クソが!てめぇエクソシストかアァぁ!!?」

その声は不思議と二重に重なってるようにも聞こえるが、この騒動に誰も気付かない。男の大振りの拳が彼女を狙う。誰もが当たると思った拳を、少しだけ頭を動かしたことで避ける。

「"私の願いは聞き入れられた"」

「その喉潰してやる!!」

「"主は私の助け、私の盾である!"」

反対の手でアッパーのように突き上げられた拳を後ろへ下がって躱す。そしてその手首を掴んで横に引き摺るように引き倒す。
熟練された動き。目の見えない人がやっているとは思えないほど自然な動き。

「"汝、途に滅びん!"」

「あガガガが!!!」

犯人は悲鳴を上げながら体を痙攣させる。
やがて力が抜けたのを確認して彼女は手を離した。首に手を当てて脈と呼吸があるのを確認が終わると辺りを見渡す。

「皆さんご無事ですか?」

「あなたに怪我は!?」

「何ともありませんよ。救急車呼びますか?」

「いえいえ!それは我々がしますのでどこか安全な場所で休んでいて下さい!」

擦り傷だけですんだ佐藤刑事が車の中まで手を引く。屋内にも行けないとなれば車内の方が安全だと考えたからだ。
実際その選択は正しかった。
疑問が膨らんだコナンはすぐ話せる位置に結月さんがいれば質問攻めにすること確実だったから。
数台の救急車が来て警官が運ばれる。その中に拘束具を付けられた井上さんの姿もあった。
事情聴取の為に佐藤刑事の車でそのまま警察署へ向かった結月さんの姿を、コナンだけは鋭い目で見送っていた。







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