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私がきた!!とオールマイトが先生を務めるヒーロー基礎学。湧く教室でもそんな状況に慣れっこな彼はコスチュームを持って戦闘訓練をするという。

各自でコスチュームに着替えて浮き足立つ。
その中でもきっと私の様子は凄かったはずだ。
そう。私はもちろん憧れの彼のコスプレ。
ブドウ頭に露出がどうの言われたがそんなの気ならない。私が幸せに浸ってるんだからただただそれを邪魔しないでほしい欲求だけだ。

戦闘訓練の設定はアメリカン。
核兵器を持って立てこもる敵。ヒーローは核を回収するか敵を捕縛するか。逆に敵は核を時間いっぱい守るかヒーローを捕縛するか。それで勝者が決まる。
くじ引きで引いた同じメンバーを探す。

「よろしくね治田さん」

「絶対勝とー!!」

「尾白君と葉隠さん、レイって呼んで。よろしく」

「わかった!それじゃあ私のこと透って呼んでね!」

同じチーム同士握手を交わして最初のチームの観戦をする。
すごい。爆豪の個性。爆発の緻密なコントロールで目くらまし。身体が吹っ飛ばない程の威力で宙で止まったり。まだまだ荒削りだけど自分の個性を戦闘の場で最大限に活かしてる。
まぁ、結果勝ったのはヒーローチーム、緑谷と麗日だったが。
それでも1番印象に残ったのは爆豪。

「レイちゃん、次私たちだよ!」

「あ、そうか。敵チーム頑張ろう」

そう。今回は敵。対するヒーローは轟と障子。
2人の個性は知らないが全力で取り組むまで。

「2人とも、私本気出すから靴と手袋脱ぐね」

え、それもしかして裸。気まずく顔を背けた尾白が同じことを思っていると物語っていた。

「あの2人の個性知ってる?」

「障子は握力が強いってことぐらいかな」

先日の個性把握テスト。2人の個性はあまり披露してなかった気がする。だが轟のあのコスチューム。氷関係なのは必須だろう。

「透ちゃんはヒーローの確保お願い。私と尾白君は核担当いこう」

尾白は頷いてくれて葉隠もテンション上がりぎみな声で同意してくれた。
演習が始まってすぐ、部屋の中が冷気に満たされた。危険本能が働いたか、尾白を抱えて傷つけちゃいけない核の上に避難していた。コレ絶対減点される。
部屋は氷漬け。冷凍庫のような状態で、きっとこのビル全体を覆ってるんだろうと予想する。

「ごめん尾白君、急に移動させて。どこか痛めなかった?」

「いや、もう、この状況に着いていけてないっていうか、なんか、ごめんよレイさん」

尾白の耳が少し赤くなる。息が白くなる様子を目を細めて見て、核の上から降りる。
葉隠の方はどうだろう。通信機へ話す。

「こっちは無事だけどそっちは」

「やられた!寒いし裸足だから痛い!!」

「わかった。今から行くから。尾白君はここで核をお願いね」

「了解」

歯がガタガタいう音まで聞こえた。まぁ、裸だからなぁ。遠い目をしてヒーローが来る前に急げと床を蹴った。
廊下の中央、不自然に出来上がってる2本の氷柱。もしかしてあれ足?真ん中透き通ってるし若干動いてる。

「透ちゃん」

「レイちゃん!もう凍死するかと思った!!」

「今助けるから!」

空中で一回転して氷にかかと落とし。床の氷が割れて葉隠の足に着いていた氷が砕け散る。
それと同時に葉隠を抱き上げる。

「え、え!?」

「床冷たいから」

廊下の曲がり角から轟が姿を現す。
腕の中から、わー…と声が上がる。わかる。ラスボス感がすごい。葉隠を床へ下ろして核へ向かうように指をさして轟と向かい合う。まさか、こんなに早く手合わせ出来るなんて思わなかった。首元のネクタイを緩め、にっこり笑う。

「来たなHERO。ここから先には行かせない」

「、、取りこぼしたか」

お互いが動きを見据える。
動いたのは同時だった。
轟が足元から針状の氷を這わせる。
それが当たらないように氷を利用して滑りよける。壁まで滑るとある程度の高さで壁を蹴って轟の元へ飛ぶ。
轟は勢いのある蹴りを避けて、片足一本で着地したレイを足払いしたが空中に高く飛んで避けられる。
かなり高さのある天井を蹴って轟が反応できない程の速度でお腹を狙って蹴りを入れた。
あまりの衝撃に反対側の壁に打ち付けられる。

「さぁ、どうしたヒーロー。この程度か」

床に滑り落ちた轟。
うめき声を上げながら立ち上がるのを待つ。
その間に通信機から尾白の声。

「まだ障子の姿見えないけど、そっちはどう?」

「余裕だけど気を付けて。核取られちゃ負け」

「分かってるよ。そっちも気を付けて」

了解、と通信を切ったと同時にさっきとは比べ物にならないぐらい巨大な氷の針がいくつも迫る。
わざわざ通信終わった辺りで攻撃仕掛けてくるのはまだ優しさがある。確かに全力で蹴らなかったけどかなりの威力だっだろうに。
身体を貫こうとする氷を蹴り砕いていく。

「個性のせいかな。挙動が大雑把」

「っな、消えッ!!」

大きく腕を振るう動き。
巨大な氷壁で遮るのはいいがもし崩された時は自分の視界も塞がることも考えて置かなきゃ、こうなるよ。
一気に懐へ入り込んだ。
慌ててガードに入ろうとする動きも遅い。
胴の真ん中目掛けて蹴り上げる。
再び壁に叩きつけられたところをテープで縛り上げる。

「ヒーローチームWIN!!!」

「え」

オールマイトの声に唖然としていると奥から浮いた手袋がやってくる。葉隠か。

「レイちゃんごめん!障子君窓から侵入してきて核守れなかった!」

「ん、いいのいいの。これで次の対策も考えられるし。あとこれ着ときな」

上着を脱いで肩があると思われるところに被せる。暖かい!と喜ぶ葉隠になんでもないとひらり手を振り、轟のテープを外していく。

「ごめんよ。痣になってると思うから授業終わったら一緒に保健室行こう」

項垂れる彼に手を差し出す。
その手をじっと見つめて、轟は手を重ねた。

「お前、」

「ん?」

「強いな」

レイは笑う。でしょ?と自慢げに。
料理を褒められた時とはまた違う顔。
轟だって弱くはないはずだ。父に個性が出てから散々鍛えられてきた。だが、目の前でストレッチをする彼女はそれ以上に強かった。

「肩貸すね」

素早い動きに拒否も出来なかった。
けれど、すぐそばに感じる人肌はかなり久しぶりに感じるもので、とても安心する。




「じゃあ良かったところと悪かったところ皆で上げていこうか!」

オールマイトの声に勢いよく挙手した八百万が発言を許可される。
ちなみに轟にはまだ肩を貸したまま。
もう少しだけと押し切った。

「ヒーローチームはもう少し作戦を練ってから行動した方が良かったと思いますわ。現に治田さんが動けて同じチームを解放していますし、障子さんがいなかったら轟さんが捕まった時点でヒーローの負けですわ。
一方で敵チームは役割を決めて動けていましたし最初に核を足場にしなければ良かったでしょう」

八百万の講評にオールマイトは頷いて付け足す。

「今回のベストは治田少女!反応の良さと司令塔としてまさに言うことなし!状況を素早く判断して行動力もある。ただ核への対応はもう少し丁寧に。それさえ無ければこのクラスだとプロに1番近いぞ!!」

オールマイトからのお墨付きに苦笑いする。
轟はそんな横顔を不思議そうに眺めていたが、レイ自身からすればここにいるみんなより長生きしてるからなぁという感じである。






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