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ヒーローが授業をする。ただそれだけの普通の授業が1つずつ終わっていくが、何よりつまらないのは今私はクラスメイトで友達と呼べる人物がいないということ。
既に出来始めた友達のグループの輪の中に私が入るためには何かきっかけが必要なはず。

ふむ、とひと房落ちてきた髪を指で遊びながら考える。学校で友達という存在が居た時期は小学生ほど昔だ。しかもそれは外国でのこと。

向こうはいい。好奇心や興味、無関心や悪意が真っ直ぐ向けられる。だから私が無個性だと知ってもほとんどの人が無関心を決め込んだがそれでも話し掛けてくれるやつらはいた。ほとんど男だったけど。

「さてと、、」

出席番号でいうと私を抜かして1番最後の八百万に向かってゆっくり歩く。今は休憩時間で真面目な彼女は早くも次の授業の準備をしている。

「八百万さん」

柄にもなく少しだけ緊張して声をかけた。

「…なにかご用でしょうか?」

少しつんとした態度で振り返ったところで、レイは友好的な笑みを受けべてみせる。

「席が近いもの同士、これから仲良くしてもらえると嬉しい。私、レイチェル・V・治田。レイって呼んでくれたら嬉しい」

レイの今出来る精一杯の友好的な挨拶。

「…そうですわね。治田さんは“補欠”と先生もおっしゃっていましたし、」

その言葉と、最初の話し掛けたのがレイだと気付いた上での態度でダメだと悟った。今までからの経験で。

「授業や学校生活で困ったことがあればお声かけください。その時はお力添えいたしますわ」

作った笑顔で言う八百万は体の向きを前方に向けてしまい、会話が終了。
彼女の言葉からすると、困ったことがあれば助けるが、逆を言うと困ったことがなければ話しかけるな、と。そう受けとれる。
"補欠だから"…言わば見下しているんだ。このヒーロー科にいるはずのヒーローを目指している彼女が。

「…やっぱり"あなたは"私を呼ぶ時は治田って呼んで。そんな日は先だろうけど」

一見すればにこやかだが、今までの会話を聞いていれば穏やかな空気なんて流れていないのがわかる。その言葉に振り返る八百万を無視して自分の席に戻る。

やはり、どこの国でも一緒らしい。
ヒーロー社会の落ちぶれを実感せざるおえない。
鞄から取り出した棒付きキャンディーの包み紙を外して口に入れる。
オールマイトが身近にいるのに日本は特にひどい、と考え事をしながらちゅぽん、と音を立てて口から出す、入れるを繰り返す。
視線を感じて目線を上げると、クラスメイトのほとんどが何か照れたような恥ずかしいような赤い顔をしてこっちを見ていて少し驚く。
どこか憂い顔で唇についた甘い味を追って舌がチロ、と舐め上げる姿は同じ歳には見えない色気がある。

「ヒーロー科バンザイ」

目が血走って、座学後なのに息を荒くしながらレイの姿を脳に焼き付けようとする紫のは、さすがに自分のことに疎いレイ自身でも身の毛がよだつ悪寒と危機感を覚えた。





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