ONE PIECE
強い風が吹く空の下。
煌びやかな着物を着た一人の女性が、黒装束を着る巨大な鳥に抱えられて海の上スレスレを飛んでいる。
悪魔の実、トリトリの実を食べたその姿は梟。
本来夜行性の鳥である為、太陽の光から目を守るためにサングラスをかけている。
「姫様」
そう呼ばれた女性は顔を上げる。
少し疲れの浮かぶ表情ながら目の輝きはとても強い。
「陰、約束覚えていますね」
水平線の向こうへ見える戦火の上がる島を見ながら言った。
その声に男は少しだけこうべを垂れて肯定する。
その内容は女にとっては簡単なもの。
しかし、男にとってはそうではない。
あの場所へ姫を置いて、生きて国へ帰る。
姫に忠誠を誓って生きてきた男にとって、1人死ぬかもしれない島へ置いて帰るというのは自らが死ぬよりも辛い約束だった。
「陰、暗い顔をしないでください」
姫の顔を見た男は胸が痛む。
とても綺麗な笑顔だ。
悲しいことなんてありはしないと、させはしないと決意を固めた笑顔。
「おじ様も、恩人も救う。民を思えば止めるべきなんでしょうが、それでも決めたのです。父上のように1度ぐらい自由に行動すると」
「…あの人の真似を、姫様がするものではありませんよ」
それを聞いてふふっと上品に口元を袖で隠して笑う。
別れは近い。
男は雲の上まで高度を上げて、真下に島と、懐かしいあの男が居ることを確認する。
「ご武運を」
「はい。きっと帰るわ。大丈夫。だから今度は泣かずに待っていて。また、会いましょう」
今世の別れじゃない。
また、という次がある表現を使ってくれた。
腕の中にあるのは自分の命より大事な主。
ひとつその言葉に頷き返した。
そして、腕の中の温かさを手放す。
ありがとう、と聞こえた声に涙が流れた。
背後で激しく放たれた光に、涙が止まらない。
それでも、主の命令を果たすべく翼を動かした。
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