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ONEPIECE×ヒロアカ






さむい。

この匂い…海かなここ。

どうやって海まで…ああ。

わからない。

でもなんだか、安心する。

「おい!生きてるか!?なんだってこんな…!」

「ッッ!…だ、れ」

「生きてたか!大丈夫だ俺が助ける。なに、今更一人増えたってなんも変わんねぇからよ!」

自分が濡れるのも構わずに海へ入ってそのまま抱えられた。ここは水路か。一体どこの国なんだ。ああ。抵抗できるような力もない。血を流しすぎたせいかもしれない。
やたら太い腕に抱えられて水から上がる。水色の髪の男が急ぎ足で路地を駆ける。自分の体から落ちる水滴が、生命が零れていくようで恐怖に震えた。

「寒いか!?すぐ町医者のとこ連れてって手当てさせるからもう少しだけ頑張れ!それまで寝るなよ!」

「…あ、りが…とう」

「いいってことよ!にしてもなんで水路に落ちてた。海王類に襲われて流れ着いたのか」

「ヴィランに、やら、れて…」

カイオウルイってなんだ。獣の類いか。
確かに私の体には猛獣に襲われたような3本を大きな傷がある。今も血は止まってない。素人でも一目で重症ってわかる傷。

「ヴィランって名前の男か!?女にこんな傷負わせて水路に捨てるなんて男の風上にも置けねぇ!俺がこの町で見つけたらボコボコにしてやる!!」

ヴィラン、が通じてない…?人の名前だと思ってるのか。ヴィランとは敵のこと。言い換えて悪いヤツ。誰にだって通じるはずの常識が、わかってない。
ここは、どこなんだ。こんな町並み知らない
。日本じゃないことは確かで、でも海外でもヴィランは通じるはずでも現に知らなくて。
突然、暗闇の中に置き去りにされたような虚無感ととてつもない孤独感が襲いかかって来た。ああ、体の震えが止まらない。

「おい起きろ寝るな!目閉じるな!おいヤブ医者急患だ!さっさと起きて治療しやがれ!!早くしねぇとコイツ死んじまう!!」

「…ったく、お前の急患はほんとに急患なの、か…って!死にかけじゃねぇか!!診察台に乗せろ!」

「だからそう言ったろ!!」

新しい男の声。病院独特の鼻を刺激する匂い。暖かい腕が離れて冷たくて硬いものに横になる。
それらが全て他人事のように感じる。
眩しいライトが照らされて、視界が真っ白になる。途端に腕にチクリと新しい痛みを感じて、気付けば布団の上で目を覚ました。




僅かに感じる海の匂いと他人の家独特の香りに飛び起きる。瞬間に身体を駆け巡る痛み、そして目眩に布団へ逆戻り。
ここは、どこなんだ?家、だよね。なんで家の中にオブジェみたいな大砲あるの?しかもいくつも。雑魚寝してる彼らはサーカスの人?町で会ったら変態扱いされるような服着てる。いやいや、助けて貰ったのに失礼だよね。
あの水色髪の人はどこに、と首から上だけ動かすようにして探してみるが見当たらない。
あっ私のヒーローコスチューム畳んで置いといてくれたんだ。サポートアイテムも無線機も救助用具も全部揃ってる。

「お?起きたか?」

「あ、はい…ッ変態!?」

「よせやいそんな褒めんなって」

「…え!?」

下半身ブーメランパンツ1枚の水色髪の男に、命の恩人にも関わらず変態呼びしたのに本気で照れた様子で手をひらひら振る。その男の様子にまた驚いて体を固くさせた。と同時に傷が引き攣るような痛みに呼吸を浅くして耐えた。

「まだ安静にしてろよ。帰るとこねェんだったらずっとここ居ていいし、コイツらだって同じようなもんで俺の子分だしな」

床の男たちを親指でさして、次に妹分もいるなと別の扉を指さした。つまりここ預かりになっても女は私だけじゃないから心配するなと言ってるらしい。
さて、どうしようか。ここがどこも分からないのにこの怪我で動くわけにはいかない。せめて動けるようになるまで甘えさせてもらおうか。

「よければ、ここへ置いてください」

「よしきた!!俺の名前はフランキーだ!アニキって呼んでもいいぜ!」

「アニキ、さん。私は雫です」

「シズクか!いい名前だな。おっと、忘れてた。ほら氷嚢頭においてもっかい寝な。怪我人は寝て食って寝るのが1番だ」

彼の手に溢れる程大きな氷嚢は目元まで隠して頭全体覆うぐらい大きい。真っ暗な視界とじんわり伝わってきた冷たさに心地良さを覚える。

「ありがとうございますアニキさん」

「いいってもんよ。子分の世話はアニキがすんのは当たり前だからな!」

まだ体力が回復してなかったのか、それとも怪我で身体が睡眠を欲しているのか。目を瞑ればすぐに眠気が襲ってきた。
もういいですかアニキ、やら、そのままもう1回眠ってろ、のささやき声にしては少し大きめの音量が聞こえてくるが、問題なく意識は沈んでいってくれた。






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