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名探偵コナン×銀魂







「私、もしもの時のサポートだからよろしくサーモン」

「バーボンです」

組織の取引を任された今日。
早速バカルディから名前を間違えられて速攻訂正する。
バーボンの白いRX-7に乗って移動する。車の中で彼女は夜景を眺めるだけ。夜だというのに日本人でも持ってるのが珍しい番傘を後部座席へ乗せていた。黒いチャイナドレスから覗く白い足はこの空間だとより白く見える。

「そういえば、」

そう切り出せば彼女はコチラを向いた。

「最近食べる量が減ったとウォッカが心配してましたよ」

「うん。ダイエットだよ。一食一升でいいかなって」

「ダイエット」

「うん。ダイエット」

確認するように同じ単語を繰り返す。ダイエット。無縁なものだと思ってた。実際、体のラインがハッキリと出たドレスを着ていてもダイエットの必要性があるとは思えない。
そもそも食べ過ぎだったんだ。一升でも充分1日の食事で持つのにその倍って。

「あっデーモンそこ」

「誰が悪魔ですかバーボンです」

指示された廃工場から少し離れた隅に車を停めて降りる。夜だというのに番傘を忘れずに持ち僕の斜め後ろを歩く。本当にサポートだけのつもりらしい。
倉庫を開けて中に入る。
小規模のギャングか、十数人が中で待っていた。もしかしたらあのコンテナの裏にまだ何人も待機してるかもしれない。ジンから直々に下された任務でもこれはきっと嫌がらせの類いのもののはず。
ある程度の距離になると止まる。ギャングのリーダーらしき人物がニヤリと笑い、双方の開いた空間の丁度真ん中に銀色のケースを投げた。それに倣ってバーボンも持っていた黒いケースを投げた。
チラリと彼女へ目配せをする。ケースを取ってこいと。頷いた彼女は高いヒールの音を倉庫内に響かせ銀色のケースを拾った。

「いやぁ、さすが組織の幹部は美女揃いだ」

「……」

「冷たいねぇ」

一瞥するだけで終わった彼女の興味は、本当に残念だ、と言った言葉で再び男に向けられる。

「美女早く死ぬのは」

素早く広げられた番傘に銃弾が当たって跳ね返る。明らかな敵対行動。拳銃を構えてこちらに狙いを定めた男たちに当てていく。
バカルディは傘を盾に使って走り寄り、僕の視界が急転した。突然のことに身体が固くなって、あまりの状況に理解が出来なくなる。開け閉めする口からは単語にもならない音が漏れるだけ。さぞ今の姿は滑稽だろう。

バカルディが、僕を横抱きにして、走っている。

傘で背中を守って、まるで重さを感じさせないほど軽々とそして素早い動きで走る。
産まれてから今まで、こんな複雑な心境になったことは無い。倉庫の扉が待ち構えているのにも関わらず全くスピードを落とさないバカルディに、嫌な予感がした。

「バカルディ!!ちょっ、待て!!」

「待たない」

少しの浮遊感。扉に向かって蹴り破らんと伸ばされた白く長い足。あんな鋼鉄の扉そんなことで開けられるわけない。
そう思った。
だが予想に反して、ドガン!!と轟音を立てて扉が目の前で吹き飛んだ。あるはずのない光景。抱き上げられた時よりも強いショックに開いた口が塞がらない。
そんな状態の僕を倉庫出入口付近の安全と判断できる場所にそっと下ろして再び倉庫内へ掛けて行った。

ドガン、ガゴン、ゴッ、バン、ドドドッ、キュイン、バァン、ドッカーン…

倉庫の中を除くまでの状況整理も出来ずに、物凄い地鳴りを立てて倉庫内が、爆発した。
バカルディは傘の先端からなぜか出る煙を吹きながら出てきた。そして僕の無事を確認して手を差し出した。掴まれという意味なのはすぐにわかった。
さっき扉を蹴破った時の力が本人のものか確認もできる。かなり体重かける気でしなやかな手を取る。そんなこともバカルディは気づかないほど軽々とした動作で立たせられた。
なぜか悔しい感情が湧き出て、そんな僕の様子を見たバカルディは少しだけ首を傾げる。

「…助けてくれてありがとうございます。しかし今度は強行せずに僕にも撃たせてくれると効率よく生け捕りも確保出来たと思います」

「うん。けどジンが私を寄越したってことはほとんど殲滅を意味したことなんだ。このグループ裏切りの可能性があるってジンから聞いてなかった?」

黙る。ジンからだと?聞くわけがない。僕への嫌がらせにしか思えない。苛立つ感情を高ぶらせて、彼女の能力への恐怖を隠した。
彼女は手に持っていたケースを僕に手渡す。それはこちらが渡すはずだったもの。中身は知らずにウォッカから渡された物だった。

「開けた瞬間爆発だってジンが」

元より取引なんてするつもり全く無かったらしい。僕らがいる所で開けられたらどうするつもりだったのか。いや、彼女の存在があったからこんなことできるのか。

「組織であなたの噂はいくつかあります」

車に乗り込んでそう切り出した。僕の声は震えてないか。うまく笑えてるか。エンジンをかけてアクセルを踏んだ。

「大食いなのは初日知りました。もう1つはラムの懐刀。入って数年でここまで上り詰めた実力者はあなたが初めてらしいですよ」

「…そう。褒めてる?」

ええ、と目の前の道を見つめて返答する。

「…ヘルメット、わかる?」

頭に被るものでいいのなら。そう返そうとして一拍置く。もしかして、

「ベルモット…?」

頷く彼女。ベルモットとヘルメットを頭の中でイコールしてみる。これが本当の仲間なら大爆笑しているところだが、死と隣り合わせのこの世界では苦笑いで済ませるしかない。ふるえるな俺の腹筋。

「今度あなたのご飯食べさせてもらったらって。喫茶店なら客で行く」

米20合食べるやつがポアロに来るだと…!?
その日コイツの貸切にしないと食料全部食い尽くされるんじゃないか?ベルモットが余計な事言ったおかげでその日の予定は馬車馬よりも働くことになりそうだ。

「待ってますね」

安室透は、笑顔で言い切るしかない。
悪態を吐く、降谷零では居られない。





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