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腐向け的なソレ

「ねえ、きみ何か香水とかつけてるの?」


 ふいと年下の友人から言われたその言葉に、今日そんなに強く匂いするのか? と服の裾を鼻に寄せた。

いつも通りだと思うけど……。


そこまで考えて、彼の鼻が常人よりも良いことを思い出す。

「ああうん、一応少し。もしかしてキツイ?」

 少し眉を下げてそう聞くと、彼は「いや、そういうわけじゃないよ、大丈夫」と慌てて付け加えたらしく手を振る。

「ただちょっと、いつもと違う感じがして……」

 やっぱりきつかったんだろうか。

特別なことはしてないはずなのに。

そう自分の行動を思い返すと……ああ確かに、昨夜は新しく買った石鹸を使った気がする。

同室の彼にはめずらしく好評だったっけな。

もしかしてその匂いだろうか。

バラの花弁入りとは書いていたけれど、特に使っていて気になるようなものもなかったのだけれど。


 そのことを伝えると、あからさまに彼はホッとしたような顔をした。

それからそんな自分の心情に首をひねって、こちらにはなんでもないと言うような顔を見せる。

 その百面相があまりにおかしくて、可愛らしくて思わず笑うと、少しむくれて彼は「なんで笑うの」と小さくこぼした。

「そんな笑われるようなことしてないと思うんだけど」

 まだまだ子供だなあ。

自分の感情くらいちゃんと隠さないと不利なのに……まあ彼はそこがいいところなんだけど。


だから久しぶりにここで再会したときは驚いた。

自分のことを覚えていないのもそうだけど、鉄面皮になっていたから。

でもすぐに元通りにはがれてしまうのがはツメが甘くて、本当に可愛らしい。

オレが守ってあげなきゃ、なんて気分になってしまう。

もちろんそこまで彼が弱くないことも知っているけれど、今の彼はとても不安定だ。


 彼が余計に不安にならないように、せっかく買ったけれど、あの石鹸は少し使うのを控えよう。

代わりに同室の彼に使ってもらう方向で。

また彼らも仲良くなってくれるとオレは嬉しいのだけど。
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