1章「種」
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「いや、想像以上だ」
すべての確認を終えて、私は疲れ切っていた。今は木陰に寝転んで休憩させてもらっている。
下にアレクさんの隊服を敷いちゃってるのがすごく申し訳ないんだけど……でもそんな事考えてる余裕なんてなかった。
体が重い。
「アレク、なんであんなことしたと。一歩間違えたら腕がなくなってたかもしれん、ディアちゃんにも相当な負担をかけて」
「力加減は間違えるつもりはなかった、あれが『自分が思い描いた結果の怪我』だよ。でも確かにそうだ、もしもを考えてなかった僕が悪いね。彼女に負担をかけるつもりもなかった」
「……わかってるならよか。せやけどいつもアレクは無理するったい。……ちゃんとディアちゃんに謝っとくんやよ。あたしはこの紙、ユリアさんに届けてくるけん」
「ああ、わかってるよ。頼んだ」
「ディアちゃん、回復するまで待っててあげるか、救護室に連れてってあげてにゃ」
「ああ」
遠くで二人の話し声が聞こえる。何話してるんだろう。
仰向けで寝ているから、木漏れ日が顔に眩しい。でも綺麗……。
だめだ、頭がぼんやりしてる……。
不意に顔の右隣りからガサガサと草を踏み入るような音が聞こえた。そのまま音はひときわ大きな音を立てて途切れた。代わりにアレクさんの小さな声が風に乗ってきた。
「起きてる……?」
少し遠慮がちに彼の声が降る。
それからひょいと顔を上から覗き込み、張り詰めた糸が緩む様に、ふにゃりと笑った。
「起きてるじゃん」
「……ごめんね。そんな風にしたかったわけじゃないんだ。君の力の限界を知るために必要な……いや、これは言い訳だね。弁明するつもりはないよ、君をここまで疲弊させたのは事実だから。ごめん」
少し身を引いて、しゅんとした顔で彼は言う。
ああ、この人は本当に、比喩でもなんでもなく、この仕事に「命」をかけてるんだ。
直感的に理解してしまった。
酷く深く激しい愛をこの人は持ってるんだ……。
「ここで寝ているよりなら救護室に行こう。ベッドがある」
「無理をさせた。あとはゆっくり休んで」
素肌が瞼を撫でる。それに抗うこともせず、視界は闇に沈む。同時に疲弊から来る眠気が襲って、一瞬にして意識が浮いた。
「起きたときには君の所属も伝ぇ──」
声が、世界がどんどん遠のいていく。
優しい手つきと体が宙に揺れた感覚を最後に、私の記憶は途切れた。
すべての確認を終えて、私は疲れ切っていた。今は木陰に寝転んで休憩させてもらっている。
下にアレクさんの隊服を敷いちゃってるのがすごく申し訳ないんだけど……でもそんな事考えてる余裕なんてなかった。
体が重い。
「アレク、なんであんなことしたと。一歩間違えたら腕がなくなってたかもしれん、ディアちゃんにも相当な負担をかけて」
「力加減は間違えるつもりはなかった、あれが『自分が思い描いた結果の怪我』だよ。でも確かにそうだ、もしもを考えてなかった僕が悪いね。彼女に負担をかけるつもりもなかった」
「……わかってるならよか。せやけどいつもアレクは無理するったい。……ちゃんとディアちゃんに謝っとくんやよ。あたしはこの紙、ユリアさんに届けてくるけん」
「ああ、わかってるよ。頼んだ」
「ディアちゃん、回復するまで待っててあげるか、救護室に連れてってあげてにゃ」
「ああ」
遠くで二人の話し声が聞こえる。何話してるんだろう。
仰向けで寝ているから、木漏れ日が顔に眩しい。でも綺麗……。
だめだ、頭がぼんやりしてる……。
不意に顔の右隣りからガサガサと草を踏み入るような音が聞こえた。そのまま音はひときわ大きな音を立てて途切れた。代わりにアレクさんの小さな声が風に乗ってきた。
「起きてる……?」
少し遠慮がちに彼の声が降る。
それからひょいと顔を上から覗き込み、張り詰めた糸が緩む様に、ふにゃりと笑った。
「起きてるじゃん」
「……ごめんね。そんな風にしたかったわけじゃないんだ。君の力の限界を知るために必要な……いや、これは言い訳だね。弁明するつもりはないよ、君をここまで疲弊させたのは事実だから。ごめん」
少し身を引いて、しゅんとした顔で彼は言う。
ああ、この人は本当に、比喩でもなんでもなく、この仕事に「命」をかけてるんだ。
直感的に理解してしまった。
酷く深く激しい愛をこの人は持ってるんだ……。
「ここで寝ているよりなら救護室に行こう。ベッドがある」
「無理をさせた。あとはゆっくり休んで」
素肌が瞼を撫でる。それに抗うこともせず、視界は闇に沈む。同時に疲弊から来る眠気が襲って、一瞬にして意識が浮いた。
「起きたときには君の所属も伝ぇ──」
声が、世界がどんどん遠のいていく。
優しい手つきと体が宙に揺れた感覚を最後に、私の記憶は途切れた。