ごった煮
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ピンポンと、軽快な音が部屋に響く。その音を合図に私は慌てて立ち上がり、玄関先へ走った。サンダルを履き、ドアスコープを一応覗いておく。
うん......シャツとサスペンダーしか見えない。
鍵を解除し扉を開くと、前に会った時と全く変わらない、恋人の姿が。そんな彼は、私の顔を見た途端にこりと微笑んだ。
「こんにちは。元気にしてたかな」
頭を少し下げて、私と目線を合わせて挨拶をしてくれる。それに対し、私も挨拶と体調はすこぶる良いよと返した。
「それはよかった」
そう目元を緩ませる彼の手を引いて家へ上がってもらう。この日の為に念入りに掃除もしたし、お部屋の消臭剤?だっけかな。なんてものも初めて買って置いた。一人暮らしにぴったりなサイズの、無難な部屋。それが、彼......月島さんが居てくれるだけで、なんて緊張するんだろう。
とりあえず、ベッドの傍に腰掛けてもらってから自分は飲み物を出そうと冷蔵庫に寄る。ピカピカに磨いたマグカップにそれぞれ珈琲と林檎ジュースを注ぐ。
どうぞと、片方を彼に差し出す。でも、彼はぼんやりと部屋を眺めていて気づいてないようだ。そんなに変だったかな......? それとも、女性の部屋が珍しいのかな。
「......月島さん?」
「あ......わざわざすまないね。ありがとう」
「いえ、熱いので気をつけてくださいね」
少し間を空けて、近くに座る。まだ子供舌な私は、ひんやりとした林檎ジュースを1口飲んだ。
......これで冷めてくれないかな。さっきから顔に熱が集まって仕方ない。心臓も普段通りにリズムを刻んでいたはずなのに、どくりどくりと音を大きく、振動も早くなって困ってしまう。やっぱり私に部屋に来てもらうなんて早かったのでは? そんな今更言っても遅いことを考える。
「ななしちゃん。緊張、してるのかな?」
なんて、普段通りの表情で私の顔を覗き込んでくる月島さん。落としそうになったマグカップに力を込めて、
「そ、そりゃあ......してますよ! あなたと、一緒に居れる......のは前からありましたけど、こんな、如何にも二人きりってのは初めてな気がします......から」
「......それも、そうだね」
あれ......。変なこと、言っちゃったかな。私。
あー、駄目だ! 私の部屋じゃないみたいで、頭がぐるぐるする!
残ったジュースを胃に流し込む。味はもうよく分からない。どうしよう? なにか、彼でも楽しめるような本なかったかな。向こうに閉まってあるダンボールに、小説がたくさん入ってたような......?
そう思い立って月島さんに背を向け、腰を上げた。
......つもりだった。
「......つ、月......しま、さん......?」
「......ごめんね。このままで、しばらく居てほしい」
私より何十cmも大きな彼に、覆われるように抱きしめられた。背中から、他人の体温が伝わって混ざり合う。かれの、つきしまさんの匂いが、至近距離でする。一瞬黙っていた鼓動が、倍になって鳴り響く。
「この気持ちを、どう......伝えたら良いのか、わからなくてね。困ったものだよ」
声が、脳に直接届く。彼が小声で喋っているから、吐息が耳に当たってくすぐったい。
どんな表情で言っているんだろう......? いつもの笑みを浮かべてかな。それとも、今まで見たことない顔をしているのかな。
「面白みのない台詞だけど、聞いてくれないかな。......僕はななしちゃんと、こうして居られてとても嬉しい。ひしひしと君が、すき......なんだと、実感しているよ」
「その、つまりは......僕も酷く緊張しているんだ。お互い様ってことだね」
腕が緩み、彼の方を向かされる。その表情は想像以上だった。初めて見た、月島さんが頬を赤らめている姿なんて。
絵の具のように、彼の白い肌に滲む赤が可愛らしいな......なんて思ってしまう。
「そう、みたいですね......」
「うん。なんだ、君も随分と......まるで林檎のようだね」
「仕方ないですよ。月島さんに、あんなことされるとは考えてませんでしたから」
「うん......」
すると彼はサスペンダーを整えたり、ちらりと横目にマグカップを見始めた。何にそわそわしているんだろう?
「ななしちゃん......少し、目を瞑ってほしいのだけれど」
「えっ」
まさか。アレか。したことは数回あるが、未だに慣れない。その上やっぱり体格差がここまであると色々圧倒されてしまう。手とか、体とか......唇、とか。包み込まれるような、覆われるような、そんな感じがプラスされて余計どぎまぎしてしまうから。
それでも、こくりとうなづいて瞼を下ろす。彼の息が、私の肌にかかる。
ちゅ
ほんの数秒だけくっつき、小さなリップ音がして離れた。それだけで私は最高潮に熱くなる。頬なんてもうインフルエンザの時みたいで......
「......? 月島さん?」
こつりと、軽く額がぶつかる。それで目を開くと、写るのはうっとりと蕩けた瞳をした月島さん。
もう一度呼ぼうと口を開く前に彼の大きな、ごつごつした手で両頬を包まれてしまう。そのまま、再び唇を重ねた。先程とは違い、より長く、より深く、角度を変えて隙間なく密着するようなキス。
最後はぺろりと、唇を舐められた。
「甘いね」
それは、さっき飲んだ林檎ジュースのせい?それとも、私が?
味わったことの無い口付けに、ぼーっとした頭で月島さんを見つめる。同じように私を見る彼は、次第に眉が下がっていく。
「嫌、だったかな」
「い、いえ。嫌ではなくて......」
言葉にハッとして、今したことに大分遅れて照れてしまう。空気で受け入れてしまったが、なんだあのキスは。というかキスって、こんなにすごいことなんだな......改めて感じた。不自然に髪を弄る私に、月島さんは
「もっとすごい口付け、するかい?」
なんて意地悪に笑い、私の唇を指でなぞる。
「け、結構です! 飲み物おかわりしてきます」
反射的に離れ、マグカップを手に立ち上がって逃げた。再び火が灯ったように熱くなる体を、ぱたぱたと手で扇ぐ。やっぱり、月島さんだなぁ......と、どこか感心している自分がいた。
うん......シャツとサスペンダーしか見えない。
鍵を解除し扉を開くと、前に会った時と全く変わらない、恋人の姿が。そんな彼は、私の顔を見た途端にこりと微笑んだ。
「こんにちは。元気にしてたかな」
頭を少し下げて、私と目線を合わせて挨拶をしてくれる。それに対し、私も挨拶と体調はすこぶる良いよと返した。
「それはよかった」
そう目元を緩ませる彼の手を引いて家へ上がってもらう。この日の為に念入りに掃除もしたし、お部屋の消臭剤?だっけかな。なんてものも初めて買って置いた。一人暮らしにぴったりなサイズの、無難な部屋。それが、彼......月島さんが居てくれるだけで、なんて緊張するんだろう。
とりあえず、ベッドの傍に腰掛けてもらってから自分は飲み物を出そうと冷蔵庫に寄る。ピカピカに磨いたマグカップにそれぞれ珈琲と林檎ジュースを注ぐ。
どうぞと、片方を彼に差し出す。でも、彼はぼんやりと部屋を眺めていて気づいてないようだ。そんなに変だったかな......? それとも、女性の部屋が珍しいのかな。
「......月島さん?」
「あ......わざわざすまないね。ありがとう」
「いえ、熱いので気をつけてくださいね」
少し間を空けて、近くに座る。まだ子供舌な私は、ひんやりとした林檎ジュースを1口飲んだ。
......これで冷めてくれないかな。さっきから顔に熱が集まって仕方ない。心臓も普段通りにリズムを刻んでいたはずなのに、どくりどくりと音を大きく、振動も早くなって困ってしまう。やっぱり私に部屋に来てもらうなんて早かったのでは? そんな今更言っても遅いことを考える。
「ななしちゃん。緊張、してるのかな?」
なんて、普段通りの表情で私の顔を覗き込んでくる月島さん。落としそうになったマグカップに力を込めて、
「そ、そりゃあ......してますよ! あなたと、一緒に居れる......のは前からありましたけど、こんな、如何にも二人きりってのは初めてな気がします......から」
「......それも、そうだね」
あれ......。変なこと、言っちゃったかな。私。
あー、駄目だ! 私の部屋じゃないみたいで、頭がぐるぐるする!
残ったジュースを胃に流し込む。味はもうよく分からない。どうしよう? なにか、彼でも楽しめるような本なかったかな。向こうに閉まってあるダンボールに、小説がたくさん入ってたような......?
そう思い立って月島さんに背を向け、腰を上げた。
......つもりだった。
「......つ、月......しま、さん......?」
「......ごめんね。このままで、しばらく居てほしい」
私より何十cmも大きな彼に、覆われるように抱きしめられた。背中から、他人の体温が伝わって混ざり合う。かれの、つきしまさんの匂いが、至近距離でする。一瞬黙っていた鼓動が、倍になって鳴り響く。
「この気持ちを、どう......伝えたら良いのか、わからなくてね。困ったものだよ」
声が、脳に直接届く。彼が小声で喋っているから、吐息が耳に当たってくすぐったい。
どんな表情で言っているんだろう......? いつもの笑みを浮かべてかな。それとも、今まで見たことない顔をしているのかな。
「面白みのない台詞だけど、聞いてくれないかな。......僕はななしちゃんと、こうして居られてとても嬉しい。ひしひしと君が、すき......なんだと、実感しているよ」
「その、つまりは......僕も酷く緊張しているんだ。お互い様ってことだね」
腕が緩み、彼の方を向かされる。その表情は想像以上だった。初めて見た、月島さんが頬を赤らめている姿なんて。
絵の具のように、彼の白い肌に滲む赤が可愛らしいな......なんて思ってしまう。
「そう、みたいですね......」
「うん。なんだ、君も随分と......まるで林檎のようだね」
「仕方ないですよ。月島さんに、あんなことされるとは考えてませんでしたから」
「うん......」
すると彼はサスペンダーを整えたり、ちらりと横目にマグカップを見始めた。何にそわそわしているんだろう?
「ななしちゃん......少し、目を瞑ってほしいのだけれど」
「えっ」
まさか。アレか。したことは数回あるが、未だに慣れない。その上やっぱり体格差がここまであると色々圧倒されてしまう。手とか、体とか......唇、とか。包み込まれるような、覆われるような、そんな感じがプラスされて余計どぎまぎしてしまうから。
それでも、こくりとうなづいて瞼を下ろす。彼の息が、私の肌にかかる。
ちゅ
ほんの数秒だけくっつき、小さなリップ音がして離れた。それだけで私は最高潮に熱くなる。頬なんてもうインフルエンザの時みたいで......
「......? 月島さん?」
こつりと、軽く額がぶつかる。それで目を開くと、写るのはうっとりと蕩けた瞳をした月島さん。
もう一度呼ぼうと口を開く前に彼の大きな、ごつごつした手で両頬を包まれてしまう。そのまま、再び唇を重ねた。先程とは違い、より長く、より深く、角度を変えて隙間なく密着するようなキス。
最後はぺろりと、唇を舐められた。
「甘いね」
それは、さっき飲んだ林檎ジュースのせい?それとも、私が?
味わったことの無い口付けに、ぼーっとした頭で月島さんを見つめる。同じように私を見る彼は、次第に眉が下がっていく。
「嫌、だったかな」
「い、いえ。嫌ではなくて......」
言葉にハッとして、今したことに大分遅れて照れてしまう。空気で受け入れてしまったが、なんだあのキスは。というかキスって、こんなにすごいことなんだな......改めて感じた。不自然に髪を弄る私に、月島さんは
「もっとすごい口付け、するかい?」
なんて意地悪に笑い、私の唇を指でなぞる。
「け、結構です! 飲み物おかわりしてきます」
反射的に離れ、マグカップを手に立ち上がって逃げた。再び火が灯ったように熱くなる体を、ぱたぱたと手で扇ぐ。やっぱり、月島さんだなぁ......と、どこか感心している自分がいた。
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