4章
夢小説設定
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鬱蒼と生い茂る森の中。
光が射しているが、歩み進めていくとともにその光が遠退いていくように感じる。
この果てにあるのは深淵か。それとも。
少年――ガナッシュはふとそんなことを考える。
エニグマの森へと足を進ませれば進ませるほど、身に付けている橙色の首飾りが光と熱を帯びていた。
まるで自分の不安を拭うように。静かにそれど強かに。
「……」
アリア、お前もここに来るだろうか。
トルーナ村で別れた後、しばらく会えないと思った。
自分を気遣って笑顔を作って、必死になって掴んでくれた手を離した彼女の優しさと眩しさに全てを晒されるどころか、見透かされて拒まれてしまいそうで。
それなのに視線を交わすだけの刹那の邂逅に、嬉しさを覚えている自分がいて。
ここにいるはずがないのに、すぐ近くにいるような気がしてしまう。
ふと首飾りを手に取る。密かに輝く光は、彼の闇を暴くように照らすのではなく。
彼をただ見守るように光り続けている。
「ガナッシュ~!待ってよ~!」
甲高い声が響き現実に呼び戻される。
振り返ると前に首飾りを隠す。
「なんだ、ついて来たのか?」
「放っておくと、どんどん先に行っちゃうんだからぁ!」
「まったく、冷たい男ヌ~。きっとオレの兄貴もこうやってスてられたヌ~」
カベルネの一言に、キャンディが目を大きく見開く。
「え~~~~っ!!カベルネのお兄さんとガナッシュって、もしかしてお付き合いしてたの~っ!?」
「違うヌ~!!オイラの兄キとガナッシュの姉ちゃんが付き合ってたヌ~!!」
「姉は姉で、オレはオレだ。関係ない」
「ガナッシュのお姉さんってすごい美人なんだよね?何度か会ったことあるよ」
「一人でさっさと行ってしまうのは二人とも同じヌ~」
「んもう!お姉さんの事なんてどうでもいいわ! 問題は、これから私たちがどうするかよ!」
「考えてるよ。オレなりにね」
そう言えばキャンディは安堵した表情を浮かべた。
「良かった~。『エニグマを全滅させてからだ!』とか言われたら、どうしようかと思っちゃった」
「いいヌ~。いいヌ~。エニグマ全滅!やってみたいヌ~!!」
「なに言ってるのよ!!できるわけないじゃない!!今までもギリギリで勝ってきたのよ!!偶然なのよ、偶然!!」
「オレの兄キの命をうばった1年前の事故……今思えば、事故でもなんでもないヌ~。殺されたんだヌ~」
「殺された……?何よそれ?変なこと言わないでよー」
「秘密になってるから知ってる人は少ないヌ~。兄キの亡骸を引き取った時、うすうす感じていたんだけど、事故の怪我じゃないヌ~。相手はエニグマに間違いないヌ~。エニグマと戦って……!!命を落としたんだヌ~!!」
「やめましょう、そんな話。聞きたくないわ」
オリーブが悲痛な表情を浮かべる。
「まさか………でも、だからと言ってここでお兄さんの敵でも取るの!?冗談じゃないわ!こっちの命がいくらあっても足りやしないわよ!」
「力を合わせれば倒せるヌ~!!」
「ダメよ……勝てやしない。戦っても戦っても、相手の数は減ってないじゃない。そんなの勝ちとは言わないわ」
「もうその話はやめよう。帰ろうよ、元の世界に」
傷を負ったわけではないのに、ふいに胸のあたりが苦しくなる。
それから逃れようとするかのように、ガナッシュは首飾りを服の上からそっと握り締める。
『これは祈り。貴方を想う私の祈り』
そう言って見送ってくれた彼女の言葉が、心の内で響いていた。