4章
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シードルも加わって、マサラティ村に戻った。
(ヘイルクラブのハサミは一部分解してカフェオレのオーブンの中である。)
すぐに村長の家に向かうと、門番と話しているメースの姿があった。
「この実をシナモンに……お願いします」
「バカな。ジェラ風穴からわざわざ……」
「お願いします。この実をすりつぶして、シナモンに飲ませてください!」
「いや、いかん!そんなもので熱は治らん!ウーズ熱にかかったのは、お前みたいな悪魔とこそこそ会ったりしたせいだ」
もはややっかみに近い言動に、憤りしか感じなくなってくる。
「僕は悪魔じゃない!!」
「シナモン様をたぶらかしておいて何を偉そうに!お前はその実をダシにして、シナモン様に会いたいだけではないか!見え透いているぞ!」
本当に言ってる事が滅茶苦茶すぎる。
「どうしてわかってくれないんだ! もし本当に彼女がウーズ熱なら、早くこの実を飲ませないと!」
「わかった。その実は預かろう。そしてお前がこの村を出て行くと約束するなら、その実をシナモン様に飲んでいただこう、それでいいだろう?」
「そんな!」
「ちょっと!!さっきから聞いてれば酷い言い草ね。言ってることが滅茶苦茶なの理解してる?」
アリアはいてもたってもいられず、門番とメースの会話に割って入る。
「彼は命懸けでそれを取りにいったのよ。村を出ていけなんて、あまりに酷いんじゃないの?」
「余所者には関係ない!」
「私達はこの目で見てきた。メースはたった一人でこの実を取りに行った。誰も取りに行こうとしなかったのに、たった一人で」
そうたった一人で。
「誰かのために必死になることもできず、自分可愛さに何もしてこなかった臆病者のあなた達に、関係ないなんて言われる筋合いはない」
門番を睨みつけていると、メースが口を開く。
「……シナモンは、本当にウーズ熱なんですね?」
「ああ、そうだ」
「だったらこれを、シナモンに……」
「村を出るのか!?はっきり聞かせてもらおう!」
「さようなら。もう二度と来ない」
「メース!!」
「アリアさん、ありがとう。あなたは優しい人です。でも、いいんです。それじゃ」
アリアにお礼を言うと、メースはその場を去る。
「ハッ。バカなヤツ」
「バカはどっちだよ」
「ぐっ…!」
門番が手にしていたアイスシードを奪い取る。
「な、なにをする!」
「カフェオレ、こいつ抑えといて」
「ラジャー!」
「アランシア。申し訳ないけど、魔法で眠らせてもらってもいい?」
「いいわよ~」
アランシアはにこやかに音の魔法を使って、門番を眠らせる。
「君って本当容赦ないよね」
「文句でもある?」
「あるわけないでしょ」
「なら良かった。行きましょう」
「ほらね。やっぱり嘘だったじゃない」
門番を片付けて(門の傍で爆睡中)、颯爽とリーダーの家に入ると、出会った時と何ら変わりないシナモンがいた。
そのうえ、今までの出来事をまるで知らなかった。
「ナニモシラナインデヤンノ。ノンキナモンダゼベイベー」
「……何?何の事??」
アリア達は村のリーダーであるジンジャーを見る。
それにつられるように、シナモンもジンジャーへ駆け寄る。
「お父様!!一体どういう事!?私がここにいた間に何が起こったの!?説明して!」
「私も詳しくは知らされていない。ただ一つだけ言えるのは、メースという男は他の誰より勇気を持っていたってことだ。すまない・・・こんな父親で許してくれ」
「分からない!!何なのそれ!!何も分かんないっ!!」
シナモンは走り出して家を飛び出す。
行き先は予想できるが、メースは恐らくもういないだろうけれども。
「仕方がないんだ。私だって辛いさ……。見ての通り、この村の男達はメースやシナモン程に、心が大人になりきっていない。旅の人……シナモンはきっと、村外れのメースの家に向かったはず。もし娘がメースの後を追うと言い出したら、これを渡してくれ」
ジンジャーからキャムティ金貨10枚を渡される。
「自分で渡せばいいのに~。さよならも言わないなんて~!酷い話だわ~!サイテー!」
「金の問題じゃないだろ?分かってんの、オッサン?自分の娘が一生誰かを恨んだまま生きて行くなんて、耐えられるかい?」
余所余所しい対応に不満をジンジャーにぶつけるアランシアとカシス。
「……分かっているとも。私はシナモンの父親だ。皆の思うところは、痛いほどわかるとも……」
わかる、か……。
「……それなら。あなたにはすべき事があると思うわ。ここのリーダーでしょう?リーダーっていうのは、導いていく者の事を指すんじゃないの?それが出来ず傍観者に徹するのは、リーダーなんかじゃない。変化を恐れてはいけない。それでは、ただの臆病者よ」
アリアは静かに言うが、ジンジャーはそれ以上口を開くことはなかった。
「行こうアリア。もういいよ」
シードルの一言でリーダーの家を後にして、メースの家へ向かう。
「メースはどうしたんですか!?知ってたら教えてください!!」
すでにもぬけの殻となっていたメースの家で、シナモンは必死になって問い掛ける。
「……って事になるかな。これはあなたのお父さんから」
これまでの経緯を話して、シナモンにキャムティ金貨を渡す。
「これから先は、あなたが決めるのよ」
「…私、行きます。彼を探して一緒に帰ってきます」
そう決意したシナモンの瞳は、とても綺麗で真っ直ぐだった。
「皆さん、お気遣いありがとうございます。きっと……これが私の運命なんだよね」
シナモンは一度目を伏せる。
「メースが私の為に命をかけてくれたように……私も彼を探すために命をかけてみる。私は彼に…んーん、彼だけじゃなくてマサラティ村の人にも本音を全部ぶつけていきたいの。 彼は悪魔なんかじゃないって、全身全霊をかけて言いたいの」
「アンタが本気なら、もう止めはしないぜ。GOOD LUCK!死ぬなよ、シナモン!」
「闇のプレーンは危険な事が多くて心配だけど、あなたが決めた事なら私は応援するわ」
「ありがとう。機会があったら、またどこかで会いましょう。さようなら」
そう言って立ち去るシナモンの背中を見送る。
「信じようぜ、彼女を。校長がオレたちを信じてくれてるように、彼女を信じよう」
「校長がどう考えてるかなんて、本当のことはわからないけどね」
「それね。ドルドルと珍しく意見があったわ」
「君と意見が合う?……うぇ」
「最後の地味に酷くない?」
とりあえず船で南にわたってタピオカティ村だったはず…。
確かあの村はアイツのお気に入りだったような。
どうかいませんように……!!
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