4章
夢小説設定
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「エニグマノモリ~~~!?」
シナモンが颯爽と去った後、機械音が響く。
思ってたよりペースが早い。
闇のプレーンにいる以上はエニグマの森に行くのは仕方ないにしても、どこか急いてるような気がして。
このプレーンにいるクラスメート達のなかで、みんなを先導しているのはガナッシュだろう。
融合にも関心はあったみたいだし、彼は一体何を考えているのだろうか……。
「ッ…」
一瞬、軽い目眩がした。
疲れてるのかしら。
「アリア~どうする?」
「まずは村に行こう」
村に入ると、久々に見た彼がいた。
「シードル!?」
「あ~~~!!シードル~!!シードルだ~!!」
「ツンツン姫。久しぶり」
「相変わらずだね君は」
ジト目でアリアを見るシードル。
「なんとか生きながらえてるみたいじゃねぇか!!ところでオマエ一人か!?他の連中と一緒じゃなかったのか!?」
「そんなに大声で喋らないでよ。みんな見てるからさぁ」
「ドルシーにも恥じらいがあったのね」
「君に言われたくないよ」
相変わらずな様子で一安心…かな?
「で、他の連中は?」
「他の連中って、ガナッシュやオリーブたちのこと?彼らだったらエニグマの森に行くって、沼を渡ったよ」
「え~~~~~~!!それって本当なの~~!?どうしてそんなことを!?」
「うぬぼれてるのさ、彼ら。 きっとエニグマと戦っても勝てるつもりなんだ。やってられないよ!」
「いや、やってられないとは言ってもだねぇ……みんなエニグマに攫われてこっちに来てるワケだし、みんなを探すとなるとエニグマの森へ向かわざるをえないんじゃないかねぇ」
やや宥めるようにカシス。
シードルを理解しているからこその言動だろう。
「てことは私達もエニグマの森を目指すしかないね~。ショコラだって、そこに連れて行かれてるかも知れないもんね~」
「僕はエニグマの森へなんか行かないよ」
目を合わせずシードルがそう言うと、カシスは驚きながら詰め寄る。
「なんだって!?友達がどうなったっていいってのか!?」
「そんなこと言ってないよ。現実の話をしてるのさ。僕達だけで何ができるって言うのさ!!下手に動いても、問題を大きくするのが関の山さ!!安全な場所でじっとして大人の助けを待つのが僕らがすべきことさ!!違うかい!?」
シードルの言うことは尤もだけど。
「お前は正しいかも知れないよ。だけど本当にそう思うなら、オレたちを助けてくれる大人をどこかから呼んで来いよ!!オレたちが何もしなかったら、その間に他の連中がどうなるかわからないんだぜ!!」
カシスの反論にシードルは俯く。
「そんなこと言われても困るよ」
「オレタチ、マバスデイチドガッコウヘ、モドッタンダ。ダケド、コンカイノケンハ、オトナニタヨラズジブンタチデ、カイケツスルコトニシタンダ」
「ムチャクチャだよそんなの。みんなヒーローになりたいだけなんじゃないの?」
それは違う。
私達にはしなければならないことがあるんだ。
「校長が、キャンプの前に言った言葉、覚えてるか?」
カシスはシードルに問う。
「キャンプを途中でやめたら退学だって?ふざけてるよ!それに、今はそんなこと言ってる場合じゃないよ!」
「校長はこうなることを知っていたのさ」
「そうね。生きた伝説と言われるほどの大魔法使いが、何も気付かなかったなんてことないわ。何かあるんだわ、きっと」
「………どうして……?どうして、そんな……!?」
「校長はオレ達を信じてるのさ」
「信じてる……!?」
「オレ達が乗り越えなければならない何かがあるんだ。大人達では、もう変えられない何かがあるんだ。校長はオレ達にそれを伝えようとしているんだ。そして、信じてる」
「信じてる……僕らを信じてる……」
「イコウゼ、シードル。シンライニコタエヨウ」
「イヤだ……」
頑なに拒むシードルに、アリアは静かに歩み寄る。
「大人って狡いね」
「………」
「まだ未熟で、されど限り無い可能性を秘めてるあなた達に期待や希望を押し付けて……でも導く事なんてしない。こんなに君を悩ませて」
「………」
「そんな大人に期待して、事が解決するのを待つのも間違いじゃない。でも助けてくれるかすら分からないこの状況なら、まずは私達で出来る限りの事をしてみない?」
シードルに向けて手を差し伸べる。
「一緒に行こう。ここにいても何も始まらないわ」
しばらく見つめていたが、やがて諦めたように首を振った。
「僕はここに残る。信じてくれなくていい。むしろ僕は、大人達が助けに来てくれることを信じるよ」
「………」
まだ何か伝えられることが……必死に志向を巡らせていると、カシスに肩を掴まれる。
「行こう」
「カシス…」
「もういいよ。それに、ここに残るのも自由だ。止めはしないさ」
「………」
差し出した手は空を掴んだままで。
私達はその場を後にした。
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