3章
夢小説設定
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「プシュ~~~~」
「ついたわ」
揺れが凄かったが魔バスを出ると、妙な懐かしさを覚えるほど学校だった。
「ふ~。それじゃ、オイラはこれで……」
「ちょい待てピーちゃん」
まったく、油断も隙もない。
「キャンプを途中でやめたら退学だぜ!それでもいいのか?」
「あの時とは全然、状況がちがうっぴ!!」
ピスタチオの言葉にアランシアは思案する。
「………そうかなぁ……。校長先生は全部知っていたんじゃないかなぁ」
「知っててオイラたちをキャンプに向かわせたっぴか!?」
あの校長なら有り得そう。というかマド先生に隠れて魔バスに乗り込んで退学とか言ってたし。
「この学校の卒業生の5人に1人はエニグマ憑き……もし、それが本当ならもうすぐ戦争がはじまるってのもありえない話じゃないわ」
普段穏やかな彼女も、光プレーンでも出来事から色々と考えていたのだろう。
「大人達じゃ解決できない何かを探させるために危険を承知で、私達をエニグマに会わせたのかも知れないね……」
まだ子供である彼らとエニグマを会わせる意味は憶測だが分からないわけじゃない。なら私は…。
いや、それよりも…。
「バルサミコ。魔バスはどうやって光のプレーンに来たの?エニグマの狙いはあくまで私達であったはず」
魔バスが光プレーンにいたことの辻褄が合わないのだ。
魔バスは散り散りになった私達の拠点にもなる。
融合を目論むエニグマにとって、見知らぬ地に迷い込み心身ともに疲弊していた方が入り込みやすいのだから、存在自体が不都合だろう。
というかピスカプーク程度のエニグマが魔バスを移動させることなんて出来ない。
「さすがアリアだな。よく気がついたじゃねぇか。実は魔バスを光のプレーンに送り込んだのはエニグマじゃなくて、校長なんだ。この国の他の魔法使いは誰一人として、敵か味方かわからねぇ。いざって時にグラン・ドラジェが頼れるのは、オマエらだけなんだ」
その言葉にグラン・ドラジェの目的が分かったような気がした。
「なんてこった……」
「私達、グラン・ドラジェに見込まれてますの!?」
見込まれている。だってあなた達は彼が必死に探し求めた生徒達なのだから。
「喜んでいいのやら、悲しんでいいのやら」
「イクシカナイッテコトダゼベイベ~」
「オニだっぴ……先生はオニだっぴ…」
「ドンマイ。ピーちゃん」
「……ハァ……なんだか、気が遠くなって来たわ。だけど大人達に頼れないってわかった以上、私達でなんとかしなきゃ!!」
やれることがあるのなら、私達がやるしかない。
「急ぐんだったら、オレが召喚機を動かしてやるぜ!召喚機ってのは、他のプレーンから生き物を呼び出したりする機械なんだが改造すれば、こっちから向こうに生き物を送りこめるようにもなる」
「それじゃ、順番に一人ずつ行くかーっ!」
「オイラはイヤだっぴ!! 」
ピーちゃん平常運転過ぎん?
「おおっと、焦るなよ!行けるのはカフェオレだけだ!」
「オレカ…ガックシ……」
「ドワーフに改造してもらったジェネレーターにだなぁ、召喚機の魔道パルスを流してタービンを逆回転させるわけよ」
「セツメイガ、アバウトナンデスケド…シクシク……」
「で、カフェオレにガナッシュらを探しておいてもらう。魔バスが修理できたらすぐに助けに行く。これでいいだろ?」
「カフェオレだけじゃ無理だろ。色んな意味で」
レモンの鋭いツッコミが入る。
確かに誰かに改造されるか、分解されるのがオチだろうなぁ。
「私も行くよ。カフェオレと一緒に召喚機に入れば行けるだろ?」
「私も!!」
「私も行きますの!」
「そんなに何人も入れねぇ。せいぜい3人だろ」
「じゃあ私とレモン!」
「誰と行くかは、カフェオレが決めな。カフェオレが一番頼れるヤツを選ぶといい」
「イカナイッテノハ、ダメデスカ?ダメデスネ……ワカッテマシタ……シクシクシク……」
「カフェオレちゃん!がんば!」
「………シクシクシク……」
モロ機械音の鳴き声が響く。
音はシュールだが、ある意味貧乏くじを引いたものだしな。そっとしておこう。
「それじゃ、オレは召喚機を改造してくらぁ」
バルサミコが去った後、全員がカフェオレを見る。
「で?誰と行くの?」
「ソレデハ……ボウシガステキナアリアサンニ……2000テン…」
いきなり何を言ってるんだコイツは。
「ボケてる場合じゃねぇだろ」
「ボケもクソもないって。カフェオレ……まさか私をご指名じゃないわよね?」
「ソ、ソノマサカデス……」
まさかの続投ルートか。
魔バスの修理も長引きそうだし、先に闇のプレーンに行けるなら行っておいた方がいいか。
正直もう少し休みたい気持ちもあるけど、そうも言ってられない状況だったらまずいし。
「アリア、大丈夫…?」
黙り込んでいたことに不安に感じてしまったのか。
レモン達が様子を伺っていることに気付いた。
「ああ、ごめん。平気。私は行くわ」
「良かったですの」
「あなたは誰にとっても特別な存在だから大丈夫よ」
「その特典は遠慮したいなぁ」
どうせろくな目に遭わないよきっと。
「アリアと……もう一人は?」
「ソウダンシテモ、イーデスカ~?」
「緊張感ないなぁ。心が和んできたよ」
それはキルシュだけだろうね。
私は和んでないから。
「アリアノアネゴ、ドウシマスカ?」
もう1人誰にするか。
申し訳ないけどピーちゃんとブルーベリーは遠慮したい。
闇のプレーンは光プレーンに比べて危険な事が増えるだろう。
すぐにクラスメート達と合流できるかどうかも分からない。
降り立つ場所によってはとてもそれどころではなくなるかも知れない。
とにかく無理はさせられない。
まぁピーちゃん連れて行くのは個人的には面白そうではあるけれど。
残るはキルシュ、レモン、アランシア、ペシュ。
んー……戦力的には申し分ないけどキルシュは外そう。何たって暑い。
会話が漫才になりかねない。余計な労力を消費しそう。
ペシュは……うん。精神的にあれかな。何も言わずにおこう。
「決めたわ」
「誰にしますの?」
「アランシア」
「え~~~~~ッ!!なんであたしがぁ~~?」
「闇のプレーンでの日々を有意義に過ごす為?」
ある意味、苦渋の選択ではある。
だが共に辛苦を乗り越えて欲しい。
先行組が決まり、アリア達は召喚部屋へ 向かう。
すでに改造が済んでいたようで、さっそく召喚器へ乗り込む。
「魔バスが修理できたらすぐ迎えに行くからなー。それまで頑張れよー」
「とにかくやってみる~。ちょっと不安かなぁ」
「大丈夫よアランシア。あなた達は私が守るから」
エニグマ如きに負けはしない。
内心決意すると、クラスメート達から不思議そうな表情を向けられていることに気付く。
「どうかした…?」
「いや……なんか…」
「?」
「アリアちゃんってそんな顔もしますのね」
どういう顔ですかね?
意気込み過ぎて変顔してたとか…?
それは恥ずかし過ぎる。カシス達がいなくて良かった。
「闇のプレーンに行ったら、ギュウヒ・オグラを探しな」
「なにゆえ?」
「ギュウヒ・オグラは、以前はこの学校で各プレーンの地理について教えていたんだ。今は引退して闇のプレーンにいるって話だ。まずはギュウヒ・オグラを探して、闇のプレーンの地図をもらうといい。ギュウヒ・オグラはレヒカフ沼の南西あたりにいるって話だ」
会いたくないなぁ。でも地図持ってない。
「ソレデハミナサン!!ジュンビハイーデスカ!?」
「おー……」
「コエガ、チイサイデスネ……」
「「おー……」」
不安が少し重たい心を抱えて、闇のプレーンへと飛び立った。
next.