1章
夢小説設定
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それからベッドに横になって
どれくらい時間が経っただろう?
寝るとは言ったものの……。
「眠れないアル」
そう。ちっとも寝れない。
みんなよく寝れるよね。
いや分かるよ。キャンプどこじゃなくなって疲れてることくらいは。
私だって疲れてないわけじゃない。
海岸ではセサミを除いて誰もいなかった。
だから相棒もこっちに来てるわけで。
そして他のクラスメートも今何してるのか心配ではある。
どうしようもなく一点だけ見つめていると。
「あれは……」
光ってる……もしや。
「ルクス」
「闇に染まらぬものにだけ力を貸しましょう……あら、貴方でしたか。アリア」
「深夜の邂逅ってなかなか素敵ね」
「楽しそうで何よりです」
相変わらずハプニング続きではあるけどね。
でもルクスに会えたのは超ラッキー。
「アリア?」
「!……ごめん。起こしちゃった?」
「いや……何してるんだ?」
「ちょっとね」
ガナッシュにルクスが見えるように、横にずれる。
「ルクスか……」
「なかなか寝れなくてさ」
興奮し過ぎて寝れないとは、敢えて言わないでおこう。
それに良いタイミングかも知れない。
「ねぇガナッシュ」
「何だ?」
「少しお話しない?」
「…………」
キルシュ達を起こさないように、ガナッシュと一緒に宿の外に出る。
「夜とは言え、パペットは寝るのも早いね」
「……」
「まぁここのパペットは、他人にあまり関心が無いみたいだから、当然のことかも知れないけれど」
「…………」
「理の中で生きていく者達に、何も変わらないものなんてあるはずないのに。まるで切り抜かれた世界のよう……この世界に一人で取り残されている感じがしてしまう」
不意に空を見上げる。
空高く昇る月は海岸で見た水面に映った月と変わらないようにも思える。
「まぁそれは置いといて……大変なことになっちゃったね。突如エニグマが現れて光プレーンに連れて来られちゃって……みんな無事だといいけど」
「カシス辺りは、なんとかなってるだろう。だから心配することはないんじゃないか」
その言葉にガナッシュの方を見ると、同じ紫色の瞳がこちらを捉えていた。
思ったよりも近い距離で、驚きながらも目が逸らせなくなる。
ターバンを取っているせいか、草木の色を帯びたセミロングの髪が風と共に、緩やかに靡いている。それはとても綺麗だった。
「…ねぇ」
「何?」
「さっきの……キルシュを攫ったエニグマと話してたことだけど」
「あれか」
思い出したようにそう口にすると、ガナッシュは目をそらす。
「融合しないかって言ってたじゃない?」
「ああ」
「あれ本気だった?」
「…………」
沈黙するガナッシュを横目に、アリアは話を続ける。
「別に責めてる訳じゃない。それはあなたが決めること。融合してもしなくても、そうでなくても。それは君の自由だよ」
「………」
「だけど……大切な物を見失っては駄目だよ」
「大切…?」
「それさえ忘れなければ大丈夫。あなたはあなたよ。この世界にただ一人だけの尊い存在」
ガナッシュにもきっと、何かしら思うところがあるだろう。
それは私に打ち明けてくれることはないにしても。
そもそも打ち明けたところで、私に解決する術などありはしないのだから。
でも。ほんの少し。少しではあるが、どこかに消えてしまいそうな気がして不安になる。
「ーーそうだ。ちょっと後ろ向いて」
「……何する気だ?」
「大丈夫。変な事はしないから」
ガナッシュは訝しげな表情を浮かべたままだが、何も言わず後ろを向いてくれる。
どこかの毒舌とは違って優しいなぁと感心しながら、自らが身に付けてる橙色の首飾りを外して、ガナッシュに付けた。
「いいよ」
「これは……」
付けられた首飾りに、ガナッシュは驚きながらも手を触れる。
「みんなも知ってる通り、私のとても大切な宝物」
私にはきっと、これくらいしか出来ないだろうから。
「ガナッシュにはこれから先、必要だと思うからさ」
「いいのか?」
「貸すだけよ。時がきたら返して貰うわ」
アリアはガナッシュに微笑む。
「楽しいこともあるけどさ、辛い事や悲しい事だっていっぱいある。時には自分がどうしていいか分からなくなったりする。そんな時に、この首飾りが貴方を包み導いてくれる」
それは暖かな優しい光。
「まぁ難しいことは考えず、お守りとでも思ってくれればいいよ」
「ありがとう」
「いいのいいの。じゃあそろそろ寝よう。付き合ってくれてありがとう」
振り返ってみても、この時の私の行動は間違ってはいなかったと思う。
ただあんな事が起こるなんて思わなかったから
君との唐突な別れが、こんなにも近くにあるなんて、分かりもしなかったんだ。