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異星人に飼育される兄妹③

2025/11/29 20:45
異星人に飼育される兄妹
リクとミナが閉じ込められた飼育スペースは、全面が継ぎ目のない真っ白な素材で構成されていた。空間は広大で、部屋の隅には二人が寄り添って眠れる簡素な白い寝台が備え付けられている。その他、壁の一部が窪んだ水分摂取スペースや、奥まった場所にある排泄と体の洗浄を行うスペースまで、機能的に整備されていた。

特筆すべきは、部屋の一面が透明な強化ガラス張りになっていることだ。そのガラスを通して、リクは「外」を眺めることができた。

しかし、そこにリクの知る世界はもう存在しなかった。

かつて高層ビルが立ち並んでいた都市の風景は跡形もなく消え失せ、地球人の建造物は徹底的に破壊されていた。瓦礫の山の上に、異星人たちは無機質で巨大な、彼ら独自の造形を持つ建物を新しく建造し始めていた。それは、急速に侵略者の世界へと変貌していく光景であり、リクはいつからか、その窓の外を眺めることが日課となっていた。

隣で、ミナは飼育者から与えられた、色も形も均一な積み木のようなおもちゃで遊んでいた。五歳のミナにとって、この白い部屋での生活は、遊びと規則に支配された、異常な日常となってしまっていた。
二人の食事は一日二回、朝と夕方に決まった時間に与えられる。飼育当初、リクはミルクで溶かされた流動食だったが、頭部の傷が癒えてからは、ミナと同じビスケット状の総合栄養食に切り替わった。味気のない、栄養だけを詰め込んだ固形物だったが、腹を満たすには十分だった。

二人は、異星人によって供給される真っ白で清潔な衣類を着用し、不潔になることは許されなかった。定期的に巨体の飼育者が現れ、部屋の隅々まで整備し、二人の健康チェックや衛生面の管理を行った。まるで、高価な実験動物のように。

何日、あるいは何ヶ月が過ぎたのか。時間は単調に流れ、リクの意識を麻痺させていった。

この清潔な白い檻の中で、リクの心に最も重くのしかかったのは、父と母の存在だった。彼らがどこにいるのか、そもそも生きているのかどうかすら、知る由もない。

ミナは、慣れない生活の恐怖と寂しさから、度々「お父さん、お母さんに会いたい」と泣き出すことがあった。

ミナの嗚咽が続くと、部屋に設置されたスピーカーから、テレパシーを増幅したような、異星人の冷たい叱責がリクの脳に直接響く。

【幼体の泣き声を止めろ。環境の安寧を乱すな】

そして、もしリクがすぐに泣き止ませることができなければ、制御された脳に激痛が走るという罰が与えられた。

リクは、命令と、自分の心の痛みと戦いながら、ミナを抱きしめるしかなかった。

「ミナ、泣かないで……大丈夫、兄ちゃんがいるから……」

そう言いながら、リク自身もまた、両親を恋しく思い、涙を流すことしかできなかった。この白い檻の現実に、ただ耐えるしかなかった。



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