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異星人に飼育される兄妹②

2025/11/29 20:43
異星人に飼育される兄妹

リクが昏睡から覚め、ミナと再会してからの日々は、巨大な飼育部屋の中、異星人の厳重な監視下に置かれていた。

彼らの飼育者——それは、体長が三メートルはあろうかという巨体の異星人だった。皮膚は粘質な光沢を放ち、奇妙な節足を持つその姿は、地球上の生物とはかけ離れた異形であり、リクとミナは、その姿をただ恐れるしかなかった。

その異星人は、テレパシーによってリクに指示を送ることで意思疎通をはかった。声帯を持たないのか、あるいはその必要がないのか、リクの頭の中に直接、冷たく、感情のない言葉が響く。

「餌を摂取せよ」「排泄を済ませよ」「幼体を保護せよ」

リクの脳に埋め込まれた制御は、このテレパシーによる命令に完璧に反応した。

異星人は定期的にリクの頭部の手当てをした。分厚い包帯を解くと、頭蓋骨に沿って刻まれた生々しい手術の大きな傷跡が露わになった。異星人はその傷に粘性の薬を塗り込み、保冷剤のようなものを当てがった。その手つきは、どこか几帳面で、感情をまるで読み取れない無関心さを持っていた。

食事の時間も異様だった。ミナには、甘い匂いのするビスケット状の固形食が与えられた。しかし、リクに与えられるのは、それをミルクで溶かし、ドロドロにすり潰したものだった。異星人は、リクの脳の負荷を考慮しているのか、あるいは単に幼いミナに合わせて「愛玩動物」としての世話をしていた。
飼育は行き届いていたが、そこに愛情はなかった。ただ「飼育」という行為があるだけだ。リクもミナも、この巨体の異星人を恐れていた。

数週間が過ぎ、リクの頭の傷と熱がようやく引いてきた頃。異星人は、リクに新たな命令を送った。

【従属措置、動作テスト】

テレパシーが、リクの脳の奥深くを震わせた。
目の前のステンレスの皿には、いつものビスケット型の食事が置かれている。異星人の指示は、その皿を指し示し、簡潔に響いた。

「それを、手をついて、四つん這いで食え」

リクの胸中に、強烈な嫌悪感が湧き上がった。
屈辱だ。

俺は人間だ。飼い犬ではない。

理性が、尊厳が、命令を拒否しようと激しく抵抗する。だが、その瞬間、制御された脳が、抗議を許さなかった。

ズキンッ、ズキンッ!

頭蓋を内側から叩き割るような激痛が、リクの全神経を貫いた。拒否の意思が強ければ強いほど、その不快感と痛みは増幅される。

「う……」

リクは、痛みに顔を歪めながら、ゆっくりと、しかし抗いがたい力に支配されて、膝をついた。ミナが不安そうにリクを見上げている。五歳の妹の視線が、彼の屈辱を倍増させた。

やりたくない、と心は叫んでいる。それでも、リクの体は逆らうことができなかった。

彼は床に手をつき、四つん這いになり、顔を皿に近づける。ミルクで溶かされたドロドロの餌を、動物のように啜り始める。

屈辱。絶望。そして、逆らえない己の弱さ。

命令に従うことで、脳の痛みは一瞬で引いた。代わりに、微かな、しかし確かな「安堵」が流れ込む。リクは、命令に従順になった自分が、この屈辱的な行為に「安堵」していることに、心底震え上がった。

彼はもう、かつてのリクではない。異星人の意のままに動く、ただの道具だ。

その現実が、幼いミナの未来を変えるための、リクの決意をさらに深く、暗く沈み込ませた。

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