AI

異星人に飼育される兄妹①

2025/11/29 20:41
異星人に飼育される兄妹
八月の日差しが、鉄棒の影をアスファルトに濃く焼き付けていた。

中学三年生、十五歳のリクにとって、この夏休みは最後の中学生としての夏休みだった。十歳年が離れた妹、ミナの面倒を見ることが、彼にとって最も重要な役目だった。ミナはまだ五歳だった。

「リク兄ちゃん、ブランコもっと高く!」

公園の片隅で、ミナの元気な声が響く。リクは妹の小さな体を空へ軽やかに舞い上がらせた。その無邪気な笑顔を見ていると、すべてのわずらわしさが消える気がした。

だが、その瞬間、空が裂けた。

ゴオオオッ、バリバリバリ……ッ!!

夏の快晴の空に、巨大な亀裂が入り、その向こう側から、おぞましい異形の影たち、異星人が溢れ出してきた。交渉も警告もなく、彼らは地球を一気に蹂躙した。

リクはミナの手を引き、必死で逃げたが、その願いは叶わなかった。市街地への避難ルートは抑えられ、リクとミナは、両親の元へと帰る暇もなく捕獲された。「愛玩用」として飼育される運命となったのだ。

そして、リクだけがミナから引き離された。異星人の定めたルール——十二歳を過ぎた個体は、反抗の芽を摘まれる——に従って、脳への制御手術が施されたのだ。

手術台から解放されても、リクは数日間、意識を失ったままだった。

彼の頭部は、巨大な外科手術の傷跡を隠すように、分厚い包帯でぐるぐる巻きにされていた。頭蓋骨を開かれ、脳を直接いじられた傷の痛みは、全身を灼く高熱となって彼を襲った。喉は渇ききり、意識が浮上するたびに、激しい吐き気と、頭をハンマーで叩き割られるような痛みに襲われ、再び暗闇へと沈んだ。彼は、生きながらにして、人間であることを壊されたのだ。

どれほどの時間が過ぎたのか。
朦朧とする意識の中で、リクは一つの命令を感じ取った。「飼育部屋へ移動せよ」。それは、頭蓋の奥から響くような、絶対的な指示だった。
痛みに耐えながら、彼はよろめき、その部屋へと送られた。部屋の中は、無機質なステンレスとガラスで構成された、動物園の檻のような空間だった。
そして、部屋の隅に、不安そうに膝を抱える五歳のミナの姿があった。

「リク兄ちゃん!」

リクの姿を見つけた途端、ミナは弾かれたように駆け寄ってきた。リクは、包帯だらけで熱い体を顧みず、ミナを抱きしめた。

「ミナ……無事か……」

だが、その瞬間、リクの意識は、既に引き裂かれていた。
異星人の命令は、もはや絶対的な「法則」となっていた。それに従うことに対して、体はまるで快感にも似た、穏やかな充足感を覚える。反対に、ミナを連れてここから逃げ出そう、異星人に抵抗しよう、といった反抗の意図を抱いただけで、リクの脳内には強烈な不快感が、頭をかち割るような激痛となって走る。それは、生物として本能的に避けるべき、究極の嫌悪だった。

リクは制御されたのだ。

彼は、五歳のミナを腕に抱きながら、この地獄のような現実に打ちのめされた。自分はもはや異星人に逆らえない、ただの道具になってしまった。
ミナはまだ五歳。手術を施される年齢(十二歳)までは、まだ七年もある。この支配下では、ミナもいずれ、その意思を奪われ、人形のように生きていくことになるだろう。

リクは、強烈な痛みに耐えながら、自分の中の微かな「人間」の部分で、静かに誓った。

「俺は、道具のままかもしれない。だが、この体で、ミナだけは……必ず、守り抜いてみせる」

彼の未来は、異星人の命令に従うことと、妹の自由を守り抜くという、矛盾した使命に引き裂かれていた。

コメント

[ ログインして送信 ]

名前
コメント内容
削除用パスワード ※空欄可