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神に拾われる話⑦
2026/01/02 20:24神に拾われる話
どれほどの時間が流れたのか、了には分からなかった。
走り続けた、と思っていた。
必死に足を動かし、腕を振り、闇の中を進み続けたはずだった。
だが、景色は一切変わらない。
光も、壁も、出口もない。ただ、どこまでも続く闇。
「……は……っ、は……っ……」
呼吸は荒く、喉は焼けつくように痛んだ。
肺に空気を取り込むたび、穢れが一緒に入り込む感覚がして、胸の奥が重く沈む。
ついに、足がもつれた。
前に倒れ込むと同時に、身体がもう動かないことを悟った。
腕に力が入らず、膝も感覚を失い、ただ闇の中に横たわるしかなかった。
「……う……」
喉の奥から、嗚咽が漏れる。
もう、歩けない。
もう、進めない。
穢れに侵された身体は鉛のように重く、皮膚の表面では不気味な斑点模様が浮かび上がっていた。
黒と紫が混ざり合ったそれは、まるで無数の虫が皮膚の下を這い回っているかのように蠢き、疼いた。
掻こうとしても、腕が動かない。
痛みと痒みが入り混じり、意識をかき乱す。
「……と……さん……」
声は震え、途中で途切れた。
「……かあ……さん……」
闇は、何も返さない。
返事が来ないと分かっていても、呼ばずにはいられなかった。
それしか、彼が“人間である証”を繋ぎ止める術は残っていなかった。
了は、顔を伏せたまま、声を押し殺して泣いた。
肩が小刻みに震え、涙が止めどなく溢れる。
「……こわい……」
まるで、夜道で迷子になった子供のように。
「……たすけて……」
闇は深く、静かで、どこまでも冷たかった。
澱神の気配は感じられない。だが、それが消えたわけではないことを、了は本能的に理解していた。
――逃げ場は、ない。
もう一度立ち上がる力も、叫ぶ声も、残っていない。
穢れは確実に彼を侵し、意識を削り、心を摩耗させていた。
それでも。
最後の力を振り絞るように、了は小さく呟いた。
「……かえりたい……」
闇の中で、誰にも届かない祈りを抱えたまま、
蓮見了は、力尽き、泣き続けていた。
それは――
世界から取り残された魂の、あまりにも静かな慟哭だった。
走り続けた、と思っていた。
必死に足を動かし、腕を振り、闇の中を進み続けたはずだった。
だが、景色は一切変わらない。
光も、壁も、出口もない。ただ、どこまでも続く闇。
「……は……っ、は……っ……」
呼吸は荒く、喉は焼けつくように痛んだ。
肺に空気を取り込むたび、穢れが一緒に入り込む感覚がして、胸の奥が重く沈む。
ついに、足がもつれた。
前に倒れ込むと同時に、身体がもう動かないことを悟った。
腕に力が入らず、膝も感覚を失い、ただ闇の中に横たわるしかなかった。
「……う……」
喉の奥から、嗚咽が漏れる。
もう、歩けない。
もう、進めない。
穢れに侵された身体は鉛のように重く、皮膚の表面では不気味な斑点模様が浮かび上がっていた。
黒と紫が混ざり合ったそれは、まるで無数の虫が皮膚の下を這い回っているかのように蠢き、疼いた。
掻こうとしても、腕が動かない。
痛みと痒みが入り混じり、意識をかき乱す。
「……と……さん……」
声は震え、途中で途切れた。
「……かあ……さん……」
闇は、何も返さない。
返事が来ないと分かっていても、呼ばずにはいられなかった。
それしか、彼が“人間である証”を繋ぎ止める術は残っていなかった。
了は、顔を伏せたまま、声を押し殺して泣いた。
肩が小刻みに震え、涙が止めどなく溢れる。
「……こわい……」
まるで、夜道で迷子になった子供のように。
「……たすけて……」
闇は深く、静かで、どこまでも冷たかった。
澱神の気配は感じられない。だが、それが消えたわけではないことを、了は本能的に理解していた。
――逃げ場は、ない。
もう一度立ち上がる力も、叫ぶ声も、残っていない。
穢れは確実に彼を侵し、意識を削り、心を摩耗させていた。
それでも。
最後の力を振り絞るように、了は小さく呟いた。
「……かえりたい……」
闇の中で、誰にも届かない祈りを抱えたまま、
蓮見了は、力尽き、泣き続けていた。
それは――
世界から取り残された魂の、あまりにも静かな慟哭だった。