彼方の光

夢を見た。
冷たく暗い水底に沈む夢。
凍てつく水は肌を刺し、自分の手も見えないほどの暗い昏い闇に包み込まれる。
遥か彼方の頭上に、ポツリと小さな光が見える。
ああ、自分はあそこから落ちたのだ。
もう二度とあそこへはいけない、いってはいけないのだ。
そう漠然と思った。
なぜだろう、と考えると弟だと思った。
あの光は弟なのだ。
希望の光、愛おしい光、一等守りたい光。
ああ、とため息が出た。
胸がじわじわ冷たくなった。
愛おしい弟、守りたい弟……。
だけれど、きっと、自分は守れなかったのだ。
何も見えないけれど、光に手を伸ばす。
ちっとも届きやしない。
けれど仕方がない。
だって自分には、触れる資格はないのだ。
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