翌日。

朝食の準備もない為、ナギとヒロインは
久々にゆっくりとベッドの中でまどろんでいた。

まだ目を覚ましていないヒロインの寝顔を
ナギは愛しそうに見つめた。

小さな寝息を立てながら、自分の腕の中で安心しきって寝ている。
こんなに大切に思えるものが他にあるんだろうか？

ナギはギュッと抱きしめたい衝動に駆られるが、起こしては可哀そうだと我慢した。

この子が毎朝一番に目に映るのがオレだったらいい、
そんな独占欲がいつの間にか自分にも沸いている事に笑みがこぼれそうになる。

そんな事を考えていると、
ん…とヒロインから、小さな声がもれた。

ﾅｷﾞ
「悪い…起こしたか？」

ヒロイン
「…おはよう、ナギ。」
　
眠たそうにトロンとした目をし、ナギの胸にすり寄った。

ﾅｷﾞ
「ん？どうした？」

ナギはそっと髪をなでながら、かわいさのあまり
体が少し熱くなるのを感じた。

ヒロイン
「いつも船だと、目が覚めるとナギいないから、
　今日は一番におはようが言えて嬉しいな」

朝食の準備のために、朝はヒロインを起こさないように部屋を出て行っていたナギ。
思いがけないヒロインの言葉と、嬉しそうな笑顔に、ナギの体はしっかりと反応してしまった。

ヒロイン
「ナギ…？」

ﾅｷﾞ
「お前…分かってそういう事いってるだろ？」

ヒロイン
「えっ…？」

ナギが下半身をグッと当ててくる。

ヒロイン
「やっ…ナギ、どうして？」

ﾅｷﾞ
「どうしてじゃねぇよ
　…はぁ、何もしねぇけど…朝からあんま煽んなよ…」

なんの事か分からずに、キョトンとしているヒロインの顔をみて
今から抱いてやろうかと、意地悪な思考が巡る。

ﾅｷﾞ
「…起きるか？メシ食い行くだろ？」

ヒロイン
「うん！！」

元気よく答えるヒロインに、ナギは笑いながら頭をなでた。

ﾅｷﾞ
「くはっ！　ったく、お前は…犬みてぇ…」




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宿の食堂へ行くと、リュウガとハヤテ以外のメンバーが既に食事をとっており、
ナギとヒロインを見つけると声を掛けてきた。

ﾄﾜ
「おはようございます！
　ここのご飯とってもおいしいですよ♪
　もちろん、ナギさんのが一番ですが！」

トワのニコニコした顔に、ヒロインも嬉しそうに答えた。

ヒロイン
「おはようございます！
　あれ？　ハヤテさん…珍しいですね、ご飯の時いないなんて…」

そう言った瞬間、異様な空気が流れた。

（あれ…言っちゃまずかったのかな…？）

それぞれの顔を見つめるが、誰も返事を返してくれそうにない…。
ナギの顔を見上げようとした時、ソウシから声が上がった。

ｿｳｼ
「ハヤテは二日酔いだよ。
　昨日シンと一緒に飲み明かしたみたい」

ヒロイン
「えっ？シンさんとですか？」

ｼﾝ
「なんだ、オレとじゃ悪いのか？」

ヒロイン
「いえ…でも、珍しくないですか？」

いつものように聞いているつもりなのに、これ以上聞くなとばかりに
目を合わさないシン。
それを察したかのように、ナギが手を引き
朝食を取りに行こうと促す。

ﾅｷﾞ
「お前の好きなベーグルあるぞ！
　サーモンとクリームチーズはさんでやろうか？」

ヒロイン
「うん！」

気にはなったものの、これ以上は聞いてはいけないんだと思い
ナギが自分の為に、どんどん朝食を取ってくれるお皿へ視線を落とした。

自分以外のみんなは、きっと知っている。
そんな疎外感に寂しさを感じるが、昨日のハヤテの様子を考えると
軽はずみな事をしてはいけないような、そんな気がした。

ヒロイン
「ナギって、どうして私の好きなものが分かるの？」

ﾅｷﾞ
「お前は顔に出るから分かりやすい…。
　…今もハヤテの事、気になってるだろ？」

ヒロイン
「えっ？」

パッと顔を上げると、ナギの視線とぶつかった。

ヒロイン
「そんなに…分かりやすいかな…？
　…うん…　昨日のハヤテさん考えると心配。
　それにご飯も食べないなんて…二日酔いでもいつもは…」

何も知らないヒロインが、自分の事でハヤテは悩んでると分かったらどう思うのか…
ナギは、しょんぼりとしているヒロインの頭にポンッと手を置き、優しくなでた。

ﾅｷﾞ
「あとで何か旨いもん作ってやるか」

その言葉にヒロインは嬉しそうに顔を上げ、「うん！」と答えた。

正直、他の男の事で一喜一憂してるヒロインを見ているのも面白くない。
そもそも自分の彼女の事で悩んでいるハヤテの事を思うと、
なんだか複雑だった。