恋ってやつは…(前半)
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(…チッ…はかどらねぇ…)
ナギは食堂のテーブルで、食費や材料を管理するノートを広げ、
不満そうに頬杖をつきながら、トントンとペンでノートを叩いていた。
約10分前。
ヒロインと一緒に、おやつの準備をしていたナギ。
クルミが大量に手に入ったので、今日のおやつは
ヒロインのリクエストもあり、『くるみクッキー』にした。
オーブンに生地を入れて、ヒロインは洗濯物を取り込むと言って
甲板へと出て行った。
ナギは焼き上がるまでの時間、食堂で事務的な作業をしてしまおうと座った矢先のことだった。
いつも休憩時間は自室で過ごす事の多いシンが、珍しく食堂のテーブルへ読書をしに来た。
お互い特に会話もなく、気にもしないで過ごしていたが、
シンにコーヒーでも入れてやるか…と席を立った。
少ししてコーヒーのカップを持って戻ると、ソウシの姿があった。
この組み合わせに、物凄く嫌な予感がした。
ナギはソウシの分のコーヒーも用意し、席に座った。
……そして、今に至る。
なんとも言えない居心地の悪さ。
なんでこの2人はよりによって、ここで読書をしているのか?
ソウシもシンも読書をする時は、大抵自室でする。
2人とも読書に集中しているかのように、
ナギに視線を移す事もしない。
シン
「…気が散る。何か聞いて欲しいのか?」
静かな食堂に、ノートをペンで叩く音が響き
シンがチラッと目を上げ、ナギを見た。
ソウシ
「私も気になってた。 何か話したいのかい?」
ニッコリと笑うソウシ。
ナギはパタリとペンを置き、2人に向き直った。
ナギ
「…聞きたいのはそっちだろ?」
この2人がコンビを組んで、わざとここへ来たのは明らかだ。
きっとヒロインとの事を聞きたいに決まってる。
リュウガが『最果ての島の宝の地図』を手に入れる為、ヒロインを使って大海賊と取り引きをしたのは、数日前の事。
その日、ナギとヒロインは関係を少し進める事が出来た。
最後までする事は出来なかったが、体の関係が結ばれなくても
心の深い所で結ばれたような、そんな日だった。
しかしナギは隠せても、ヒロインの態度や表情は
ナギとその日何かありました! と言っている位
本人の意思とは裏腹に、周りの人間には分かり易いものだった。
ソウシ
「ふふふ、ナギ
ヒロインちゃんと何があったの?」
ナギ
「………」
シン
「フン、アイツの態度を見ていれば
手に取るように分かるがな…」
ソウシの何でも分かってるって余裕の表情と
シンのすかした顔。
ナギは今すぐにでも席を立ち上がって、この場を離れたかった。
しかし、シンの一言でナギは少し表情を曇らせた。
シン
「まぁ、分かりやすい態度のヤツって言ったら、
ヒロインだけじゃないけどな。」
ナギも感じていた。
もっともヒロインも、その本人も
その事は全く気付いていないだろう。
ソウシ
「クス、本当だね。
こんなに分かりやすいのに、気付いてないんだもんね。」
ナギ
「……それを言いたかったのか?」
ナギの問いかけに、ソウシは笑顔を作り
シンは手元の本に視線を戻した。
ハヤテ
「あー腹へったぁ!
ナギ兄! 今日のおやつ何!?」
勢いよく食堂のドアが開き、オナカをさすりながらハヤテが入ってきた。
シン
「はぁ…読書も終わりか…」
ハヤテ
「あぁん?どういう意味だよ?」
シン
「そのままの意味だ。
少しその落ち着きない行動をどうにかしろ」
ハヤテ
「んだとぉ!」
ソウシ
「はーいはい!そこまでね。
ほらいい匂いしてきたよ? ナギもう出来る?」
ナギ
「あぁ…」
ナギがゆっくり立ち上がると、ドカッとハヤテが席に座った。
シン
「フン、食い物の事には敏感なのに
感情にはとことん鈍いやつだ…」
ソウシ
「シン!!」
ソウシが目でシンを宥める。
ナギはまた何か起こるのではないかと、オーブンを開け、
クッキーのふんわりとした甘く香ばしい匂いを浴びながら
はぁ…とタメ息をついた。
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