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勢いよくシンのいた航海室を出て、デッキを目指そうとしたものの
結局何も出来ず、今に到っている…。
ナギ
「………」
静まり返っている厨房。
息苦しくて、こんなんだったら1人で夕食を作る方が
ましだとさえ思えてくる。
リュウガ(ヒロイン)
「………」
怒っているのは、空気で分かる。
話すきっかけを完全に失ってしまったナギは
全然料理に集中出来ない。
ナギ
「!」
サラダを作っていたヒロイン。
皿を取ろうと動いたのを見て、ナギはチャンスだと思った。
いつも使う皿は、高い位置にあり
背が届かない為、ナギが取ってあげていた。
棚の方に歩き、手を伸ばしたが
ヒロインは軽々とサラダ用の皿を取っていた。
ナギ
「!?」
そうだった…。
今のヒロインはリュウガになっていて、いつもの身長より20センチ近くは大きくなっている。
リュウガ(ヒロイン)
「あ… なんか…結構何でも出来ちゃうの…
色んなトコに手が届くし、何でも持てるし…
入れ替わって良かったのかも…」
ナギ
「っ!」
寂しく笑うヒロイン。
ナギは胸がズキンと痛んだ。
そして無意識に後ろからギュウと抱きしめていた。
リュウガ(ヒロイン)
「えっ…ナギ…?」
突然抱きしめられて驚いた。
でもいつもと全然違う。
抱かれる感じも、ナギの手の位置も…
リュウガになってしまったという事を、さらに実感した。
ナギ
「…ヒロイン…ごめん…」
容姿は全然ヒロインじゃない。
染みついた酒の匂いとか、肩幅が大きいとか…
違いを上げれば数えきれない。
それなのに、抱きしめたいと思った。
寂しそうに笑ったヒロインが、容易に想像出来た。
リュウガ(ヒロイン)
「あ…えっと…ナギ! これマ、マズイよ!
だってだって…私…私じゃ…」
ナギ
「そうだけど… そうじゃねぇって…
ヒロインなのに…本当にごめん…」
リュウガ(ヒロイン)
「ナギ…」
肩に深く顔を埋めるナギ。
どんな事をしても、絶対に許さないと決め込んでいたのに
ナギの弱った声に、つい気が緩んでしまいそうになる。
リュウガ(ヒロイン)
「あの…私…」
そう言い掛けた瞬間ーーーー
トワ
「ナギさ~ん、僕も手伝いま………うわっ!
船長!? えっえっ??!?
あ…い、いいんですよね?
あれ? そうですよ、いいんですよ…ね?」
目の前の光景にパニックを起こしているトワ。
頭で思っている事と目で見た事が理解出来ていないようだ。
取り乱しているトワに続いて、ソウシが顔を出した。
ソウシ
「あ… うん…そうだよね…
いいけど、結構ありえない光景過ぎて驚くなぁ…あはは」
皆のリアクションに恥ずかしさが急に込み上げ、
ヒロインはバッとナギの腕を外し離れた。
リュウガ(ヒロイン)
「あの…コレはその…
…えっと私、お酒取ってきます!!」
顔を真っ赤にして、ドタドタと厨房を出ていくヒロイン。
ソウシ
「ごめんね? お邪魔しちゃったね…
私も何か手伝おうと想って…」
ナギ
「………」
振り解かれた手が、妙に切なく感じた。
それからしばらくして、夕食が始まり
メンバー全員が少しギコチなく会話をした。
一番気にもしてないのが、リュウガだ。
明日は船長会議があるというのに
変わった姿を楽しんでいるようにも思える。
ヒロイン(リュウガ)
「不便な事もあるけどよぉ、なーんか考えたら女風呂にも
堂々と入れるし、抱きついたって
女同士なら、結構平気だろ?!」
リュウガ(ヒロイン)
「っ! 私の姿でそんな事しないで下さい!!」
いつものように酒をあおりながら言うリュウガ。
しかしグラスが空になり、酒を足そうとしたが
その手をナギが止めた。
ナギ
「ヒロインの体なので、無理に飲まないでください」
ヒロイン(リュウガ)
「あぁ? なんだよ!
これくらい全然平気だっつーの!」
ソウシ
「…船長。 呂律が回ってないですよ?
ヒロインちゃんの体は、お酒に慣れてないんですから
いつものペースで飲んだら、体を壊します」
ナギの威圧的なオーラを感じ、リュウガは酒瓶からパッと手を離すと
不機嫌に料理を頬張った。
ヒロイン(リュウガ)
「つまんねぇなぁ… 決まり事が多すぎて
何も出来ねぇじゃねぇか…」
リュウガ(ヒロイン)
「決まり事って… 当たり前の事ばっかりですよ!」
ヒロイン(リュウガ)
「着替えにトイレに… 好き勝手出来ねぇなんて
窮屈に決まってんだろ!?」
シン
「…それは日ごろの行いのせいかと…」
ヒロイン(リュウガ)
「あぁ?」
声は違えど、モノの言い方がリュウガそのもので
やはり入れ替わりの現実を突きつけられる。
そう考えると、何だかもうどうでもいいように思えてきた。
リュウガ(ヒロイン)
「…いいですよ…」
ヒロイン(リュウガ)
「あ?」
リュウガ(ヒロイン)
「着替えもお風呂もトイレも…
もう船長に任せます。
あ、あと思ったんですけど、船長の体だと
ナギと一緒に寝るって出来ないので、医務室借りてもいいですか?」
メンバー
「「………」」
何もかもを諦めたかのようなヒロインの言い方に
メンバー全員が驚きながらヒロインを見つめた。
リュウガ(ヒロイン)
「? ごちそうさまでした。
部屋の荷物少し動かしたいので、少し部屋に行きます」
そう言って、さっさと席を立って行くヒロイン。
あんな言い方をするヒロインは初めて見た。
いつもは、どんな事があっても前向きに
明るく接してくるような子なのに…
ナギはいてもたってもいられなくなり
ガタっと席を立った。
ヒロイン(リュウガ)
「なんだよ… あんな言われ方されっと、何もする気になんねぇっつーの…」
ソウシ
「…ヒロインちゃん、相当参っているみたいですね…
早く効果が消えるといいんだけど…」
コンコン…
ナギ
「ヒロイン?」
ナギは自分の部屋をノックして、ドアを開けた。
リュウガ(ヒロイン)
「あ…ナギ…
ごめんね、ゴハンの途中で…
みんなが食べ終わったら片付けしなくちゃだし
今のうちにって思って…」
手元を動かしながら、言い放つ言葉。
ナギはたまらなくなり、ヒロインを抱き寄せた。
リュウガ(ヒロイン)
「ナ、ナギ? あのダメだって…
私じゃないんだって…」
ナギ
「そんな事もういい…
部屋も出て行かなくていい。
オレが床に寝る」
リュウガ(ヒロイン)
「それはダメだよ!」
ナギ
「…お前と離れるのは無理だ…」
ナギの言葉が嬉しくて、いつものように甘えてしまいそうになるが
ハッと自分の手を見て、ナギの腕の中から抜け出した。
リュウガ(ヒロイン)
「やっぱり…元に戻るまでは…こういう事するのやめよう?
ほら、声も姿も違うし…」
そう言って、視線を逸らしたが
グッと顎に手を掛けられ、ナギの顔が近づく。
ハッとして視線をナギに戻す。
ナギはこの姿でもキスをしようとしている。
この距離ではもう言葉では止められない。
そう考えるとどうしていいのか分からず
パニックに陥りそうになる。
リュウガ(ヒロイン)
「あ…う…ごめんっ!」
そう言って、ゴツン☆とナギの額に頭をぶつけた。
ナギ
「った! …何んだよ?」
ナギの手が緩んだ隙に、ヒロインはスルリと体を離し
そのままドアの方へと向かった。
リュウガ(ヒロイン)
「ご、ごめんね? でもやっぱりこの姿じゃしたくない!!」
そう言って、部屋を出ると医務室へ駆け込んだ。
リュウガ(ヒロイン)
「はぁ…もぉ……」
急に態度を変え、いつものように接してくるナギに戸惑ってしまう。
嬉しい反面、複雑だ。
(だって…船長の姿でキスとか…ないないないない!!!)
ドアに寄り掛かり、バタバタと身悶えていると……
ソウシ
「ふふっ何かあった?」
リュウガ(ヒロイン)
「!!!!」
まさか医務室にソウシがいると思わず、ヒロインはものすごく驚いた。
ソウシ
「ヒロインちゃんがこの部屋使うって言うから
部屋を少し片付けようかと思ってね」
リュウガ(ヒロイン)
「あっ…い、いいんです!
寝れればいいので!」
ソウシ
「そうはいかないよ」
そう言ってソウシはベッドの傍にあるキャビネットやテーブルの上を片付けてくれる。
ヒロインは申し訳ないと思いながらも
部屋から持ってきた枕をベッドに置いた。
ソウシ
「…ごめんね?」
リュウガ(ヒロイン)
「え…?」
片づけをしながら話し掛けるソウシの背中を見つめた。
ソウシ
「こんな事になっちゃって…
ナギともケンカさせちゃったね…」
リュウガ(ヒロイン)
「全然ですよ! それにナギとはケンカっていうか…
その…ちょっと戸惑ってるっていうか…」
ソウシ
「? あぁ、姿が変わった事に戸惑うのは当然だよね?」
リュウガ(ヒロイン)
「そ、そうなんですけど…」
言いづらそうに視線を泳がすヒロイン。
不思議に思いながらも、ソウシはいつものように
そっとヒロインの頭を撫でた。
ソウシ
「大丈夫だよ。 すぐ元に戻るから…
ふっ…何だか不思議だね。
姿は船長なのに、こうしてヒロインちゃんみたいに
自然にやっちゃうなぁ…ふふっ」
そのソウシのさりげない優しさが
何とも嬉しかった。