Desire 2
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ヒロインはチャックも上げられぬまま
ズボンを押さえ、必死でナギの部屋を目指した。
ナギはデッキにいた。
もし移動していたとしても、この時間に部屋に居る事はまずないはずだ。
ドタドタと階段を降りる。
この熱い体をどうにかして鎮めないと…
それだけを考え走っていると、
突然飛び出して来た人影とぶつかりそうになった。
リュウガ(ヒロイン)
「っ!!」
ナギ
「っ! せん…あっ…ヒロイン?」
一番会いたくない人物に遭遇してしまった。
普通にすればいいのに、リュウガにされた事と
突然会ってしまったナギに戸惑って
オドオドと怯える事しか出来ない。
ナギ
「? どうし……っお前!」
ナギの視線が段々下がり、乱れたズボンに目が止まった。
リュウガ(ヒロイン)
「な、何でもない!」
ナギ
「何でもなくねぇだろ! どうしたんだ?」
リュウガ(ヒロイン)
「どうもしないっ!」
ナギ
「ヒロイン!っ」
そう言って、ヒロインはものすごい勢いで廊下を走って行く。
何があったのだろう。
トイレに行こうとしてたのか…。
それとも何か…
ナギは考えを巡らせる。
ヒロインは階段を下って来ていた。
ナギは階段上の部屋を思い浮かべる。
上の階にあるのは、航海室と船長室。
航海室にはシンがいて、船長室には…リュウガがいるのだろうか?
どちらかに乗り込もうかと思ったが、ヒロインの事の方が心配だ。
怯えた不安そうな表情が、頭に焼き付いていた。
ナギはヒロインの後を追って
部屋へと向かった。
ベッドに潜り込んだヒロインは
必死で気持ちを抑えた。
少し触られただけなのに、こんなに反応してしまうなんて…
慣れない体に振り回されてばかりだ。
ヒロインは見ないように、ギュッと目を瞑り
下着とズボンを直す。
(早く元に戻りたい…)
そしたらナギは、いつものように接してくれるだろうか?
外見が変わり、ナギの反応に傷付き
もうこんな風に振り回されるのは嫌だ。
ヒロインは半分開き直って、リュウガの言う通り
この姿を楽しむ事を考えた。
(ナギがあぁいう態度なら、私にだって考えがある!!!)
ヒロインはやっと落ち着いた下半身を起こし
ガバッとベッドから立ち上がった。
すると部屋のドアが開き、心配そうな顔をしたナギが入ってきた。
ナギ
「あっ…大丈夫か?」
(…今更心配な顔されても遅いよ!)
あれだけ避けてたクセに…
ヒロインはそっけなくナギに言い返す。
リュウガ(ヒロイン)
「何? 全然大丈夫だよ!」
ナギ
「え…でもお前…」
リュウガ(ヒロイン)
「仕事全然終わってないから、片づけてくるね」
ナギ
「オ、オイヒロインっ!」
無視するかのように部屋を出ていくヒロイン。
バタリと閉まったドア。
ナギ
「はぁ…」
ナギは大きなタメ息をついた。
さすがに自分でも反省している。
突然リュウガに変わってしまい、あまりにも戸惑ってしまったが
変わってしまった本人は、それ以上に困惑しただろう。
(…なのにオレの態度はなんだよ…)
ヒロインがあんな風に避けるのは当然だ。
外見だけじゃなく、中身でもヒロインに惚れたのに…
リュウガという視覚からの問題が、どうにもナギには乗り越えられない。
本当だったら、不安に感じているヒロインを抱き寄せて
「大丈夫だ」と言ってやりたいのに…
ナギはまた大きなタメ息をついて、ボスンッとベッドへ深く座り込んだ。
・・・・・・・・・・・・・
それからナギは何度かヒロインに声を掛けようとした。
だが、当のヒロインは完全無視を決め込んだようだ。
(…相当怒らせちゃったな…)
話し掛けようにも、他のメンバーに話を振ったり
話し掛けにくい状況を作る。
リュウガ(ヒロイン)
「船長になると、仕事が楽ちんです!
背も高いから、どんな所も届くし
力もあるから、重いモノも持てるし!」
ハヤテ
「ほ~んとだな!
船長も普段から仕事してくれりゃあいいのにな?」
ハヤテとデッキ掃除をしながら話していたヒロイン。
ハヤテは思いの外、入れ替わった事に対しての抵抗がないのか
メンバーの中で一番いつものように話してくれる。
リュウガ(ヒロイン)
「……ハヤテさんは、私がこの姿になっても抵抗ないんですか?」
ハヤテ
「あ~? そりゃ最初は見た目にビビったけど、
中身はいつものお前じゃん?」
リュウガ(ヒロイン)
「ハヤテさん…♡♡」
ヒロインは思わずハヤテに抱き着いた。
ハヤテ
「おわっ! 何だよ急に!!
ってか、痛てぇよ! 力、加減しろって!」
リュウガ(ヒロイン)
「あっす、すいません!
そっか、船長になってるんだった」
元のヒロインにされるなら大歓迎だが
リュウガに抱かれるのは、やはり少し複雑だ。
それでも心を許したように笑い掛けられるのは
気分がいい。
ハヤテ
「…そう言えば、ナギ兄は?
お前ナギ兄の手伝いとかしねぇの?」
いつもくっついているのに、今日は違う仕事ばかりしている。
リュウガ(ヒロイン)
「…ナギは…」
その先の言葉が見つからない。
シン
「……オイ、ナギ…
そのデカイ体、スゲェ邪魔だ…」
ナギ
「………」
ナギは二階のデッキから、一階のデッキを見下ろしていた。
船長会議が行われる島へ向かって船を動かしているシンは
目の前に長身のナギがいて、視界が上手く確保できない。
シン
「そんなに気になるんなら、とっとと会いに行け」
ナギ
「……それが出来りゃとっくに行ってる…」
シン
「あ?」
自分で撒いた種ながら、ナギはヒロインの傍に行く事が出来なくなっていた。
完全に無視されてしまっている今、こんな遠くから
様子を覗く事しかできない。
シン
「……ヒロインの事となると、どうしようもねぇな…」
ナギ
「…お前だったらどうする?」
シン
「あ?」
ナギ
「お前の恋人が船長と入れ替わったら…」
一階のデッキを見下ろし、手すりにもたれているナギの背中を見つめた。
ナギがこんな話をしてくるなんて思わなかった。
相当弱っているのか…
シンは呆れながら、答えた。
シン
「…オレだったら…船長をそこまで自由に出来る事はないから…
散々こき使って、ありえない事させるかもな…」
その言葉にハッと振り返ると、何とも冷ややかな顔で
舵を切っているシンがいた。
ナギ
「…お前…結構怖いな…」
シン
「……お前はどうするつもりだ?
入れ替わったのを受け入れず、そうやってヒロインを避けるのか?
フン、そっちの方がよっぽど酷いだろ?」
ナギ
「あ?」
シン
「何だ無自覚か?
ヒロインの外見が変わっただけで、避けて…
ヒロインのヤツ、相当傷ついているぞ?」
ナギ
「………」
そんな事は言われなくても分かっている。
シン
「別にいつものようにしなくてもいいだろ?
触れ合ったりするだけの関係なのか?」
ナギ
「違っ…」
シン
「違くねぇだろ?
現にお前はこうして眺めてるしか出来ねぇし
困惑して傷ついてるヒロインを放っておいたのはお前だろ?」
ナギはズバリと言われたシンの言葉に、顔をしかめた。
シン
「ククッ…アイツの機嫌を直すのは、相当根気がいりそうだな?」
ナギ
「……邪魔したな…」
心ここにあらずという表情で、ナギは航海室を出て行く。
シン
「フン…面倒なヤツらだな…」
シンは悩んでいるナギが羨ましくも思う。
航海室から下を見下ろすと、リュウガの姿をしたヒロインとハヤテがじゃれている。
確かに、あの姿を受け入れるのは時間が掛かりそうだ。
そのまま仲が拗れればいい。
少しでもそう考えてしまう自分が、ナギの言う通り
少し怖くなる。