chocolat
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ヒロイン
「よし、これで準備出来た!」
誰もいない厨房で、ヒロインはバスケットに箱を詰め
メンバーの部屋を目指した。
バレンタインデーのオヤツは
残す事なく全て食べ切ってくれ、
大好評で幕を閉じた。
さっき終えた夕食は、ナギが気を使って
ほとんど作ってくれ、結局今日1日厨房を預かるという
ナギを労う計らいは、叶わなかった。
だからその分、ナギには特別なプレゼントを用意した。
(喜んでくれるかな…)
ナギの喜ぶ顔を思い浮かべながら、ヒロインは
倉庫にいるトワを訪ねた。
ヒロイン
「トワくん、入ってもい?」
倉庫の入り口で声を掛けると、驚いた表情でトワが現れた。
トワ
「ヒロインさん! こんな時間にどうしたんですか?」
寝る準備をしていたようで、トワは少し眠たそうな顔をしていた。
ヒロイン
「遅くにごめんね?
あのね、コレ…」
そういってラッピングした透明な袋を渡した。
トワ
「えっ?!」
ヒロイン
「バレンタインの贈り物だよ?」
トワ
「えっ! でもオヤツの時間に…」
ヒロイン
「ふふっこれは、トワくんだけに作ったチョコチップクッキーだよ♪
いつもたくさん助けてくれてありがとう!」
トワ
「ヒロインさん…」
そう言ってトワは顔を少し赤くしながら、袋を受け取った。
チョコチップクッキーはトワの大好物で
ヒロインのお手製の物は、トワが太鼓判を押してくれていた。
だからこそトワの為に作った。
ヒロイン
「少しは日持ちすると思うから、無理に今日食べなくて平気だよ?
今日甘いのたくさん食べたからね」
トワ
「ありがとうございます♡
大切に食べますね!」
トワは嬉しそうに笑う。
その顔があまりにも可愛くて、ヒロインも頬が緩んでしまう。
ヒロイン
「ふふっうん♪ でもいつでもまた作るから
美味しい内に食べてね?
じゃあお休みなさい」
トワ
「はい! おやすみなさい」
トワの弾んだ声を後にして、ヒロインはハヤテの部屋を目指す。
今年はオヤツの時間のチョコフォンデュ以外にも、
メンバー全員に別々のチョコを作っていた。
チョコフォンデュを作るのはそう時間が掛からなかったが
この個別に作ったチョコが、相当手間取った。
メンバーの好きなモノを考えて作ったからだ。
ちゃんと感謝の気持ちを一人一人に伝えたくて作ったものの
来年はこんな事出来ないかもと思うくらい大変だった。
ハヤテの部屋のドアをノックすると
部屋にいないようで、返事が返ってこなかった。
ヒロイン
「あ…お風呂かな?」
そう思い、隣のシンの部屋をノックした。
シン
『誰だ』
ヒロイン
「あっ私です! あのっ渡したいものがあって…」
シン
『………』
シンからの返事が返って来ず、ヒロインは胸がドキドキした。
(…シンさん…出てきてくれないのかな…)
引き返そうか悩んだが、もう一度ノックしようと
拳を握り、ドアを叩こうとした瞬間
ドアが開き、不覚にもシンの胸をパンチしてしまった。
ヒロイン
「ひっ!!」
シン
「…ほぉ…そういう不意打ちで仕返しをする作戦か…」
ヒロイン
「ち、違います!!
たまたまですっ! タイミングが悪くって…」
シンの辛辣な視線に、ヒロインは思わず後ずさってしまう。
相変わらず甘い匂いを纏っているヒロイン。
シンは怯えてるヒロインを見て
腕組みをしながら、また湧き上がりそうな欲情を抑えた。
シン
「…で、何の用だ」
ヒロイン
「あっ…あのコレ…」
俯きながら差し出された箱。
シン
「…何だコレ…」
ヒロイン
「バレンタインのプレゼントです」
シン
「…それならもう…」
ヒロイン
「そうなんですけど!
コレはいつもの感謝の気持ちです!
シンさんプラリネ好きだから、頑張りました」
シンは受け取った箱を開け、中身を見ると
一粒サイズのチョコが10粒入っていた。
ヒロイン
「あ…シンさんがいつも買っているような
高級なお菓子屋さんのとは、比べ物にならないですけど…
結構上手く出来たと思います!」
シンは自分の好みを覚えて、しかも今日渡してくれた事に胸を打たれた。
物凄く嬉しいのに、緩んでしまいそうな口元を引き締めながら
シンは意地悪く言った。
シン
「まだ甘いもん食わすなんて…
病気にでもさせる気か?」
ヒロイン
「今日食べなくてもいいように、日持ちするものにしたんです!
もぉ…シンさんにいつも本貸してもらったり
今日もキャンドル頂いたりしたからお礼って…思ったのに…」
思いの外、ヒロインがションボリしたので
シンは少し焦った。
シン
「フン… そう言う事なら食ってやってもいい。
いい心掛けだな」
そう言って、ポンッと頭を撫でてやると
ヒロインは急にニコッと笑って顔を上げた。
シン
「!」
ヒロイン
「ふふっ やっぱりシンさん優しいです♪
食べてくださいね?
オヤスミなさい」
ヒロインはにこやかな笑顔のまま廊下を歩いて行く。
シンはその後ろ姿を見つめながら、「チッ」と舌打ちをした。
どうやらヒロインには、全て見透かされているようだ。
ついこの間まで、自分の言動に戸惑って
オロオロしていたのに…
今となっては、自分の方が翻弄され
手玉に取られているような気分だ。
シン
「…ホント…気に入らない女だ…」
そう口にしながらも、自分の事を想って作ってくれたプラリネをひとかけら口に入れた。
周りをコーティングしていたチョコが溶け、芳ばしいナッツの香りと
ほろ苦いキャラメルの味が広がった。
シンはあまりの美味しさに顔が緩んだ。
そしてそんな自分が前よりもずっと好きになっている事に気付いた。
ヒロインが次に訪れたのは、ソウシのいる医務室だった。
ドアを開ける前から、微かに薬品の香りが漂ってくる。
コンコン
ヒロイン
「ソウシさん、入ってもいいですか?」
ソウシ
『あれ?ヒロインちゃん?』
少し驚いた声がドア越しに聞こえ、その後すぐにドアが開いた。
ソウシ
「どうしたの? こんな時間に…」
ヒロイン
「あ…すいませんお邪魔しちゃって…」
ソウシ
「んーん、もうそろそろお終いにしようと思ってたから…」
ヒロイン
「そうでしたか…
あの、コレ!」
ヒロインはソウシにもチョコを手渡した。
ソウシ
「? コレは?」
ヒロイン
「日頃の感謝の気持ちです!
ソウシさんにはいつも助けてもらって…
優しい言葉で庇ってくれたり、気にかけてくれて…
いつも本当にありがとうございます!」
可愛い笑顔と一緒に差し出された小箱。
ソウシもニッコリ笑って受け取った。
ソウシ
「ありがとう!
もしかしてバレンタインだから?」
ヒロイン
「はい!」
ソウシ
「オヤツの時に十分もらったのに…」
ヒロイン
「これはソウシさんだけに作ったチョコなんです!
ソウシさんハーブ好きだから、ハーブのチョコなんです!」
ソウシ
「え…」
そう言われ、ソウシは箱を開けてみた。
そこには小粒のチョコが9粒入っていた。
ヒロイン
「生クリームとソウシさんの好きなハーブを煮立てて
チョコと混ぜたんです。
これがレモングラスで、これがミント…
あとこれがカモミールです!
なかなか手に入らなくて、ソウシさんのお好みのハーブだと
これしか作れなくて…」
申し訳なさそうな表情を浮かべているヒロイン。
ソウシは胸がドキドキしていた。
今までここまでして、バレンタインに贈り物をされたのは初めてだったからだ。
まだ手に入れられなかったハーブの話をブツブツしているヒロインを見て
ソウシは優しく微笑んだ。
そして、ポンっと頭に手を置いた。
ソウシ
「君は本当にいい子だね?
感謝してるのは私たちの方だよ…
毎日嬉しい気持ちをありがとう」
ヒロイン
「…ソウシさん…」
ソウシ
「あっそうそう!」
そう言って、ソウシは一度部屋に引っ込んでしまった。
ヒロインはソウシからもらった、あまりにも嬉しい言葉に
少し顔が熱くなっていた。
メンバーの誰よりちゃんと言葉にして、優しくしてくれるソウシ。
男しかいないこの船で、唯一女性としての悩みを聞いてくれ
分かってくれるのはソウシだった。
だから、いつもお世話になりっぱなしだと思っていたヒロインは
お世辞でも、さっきソウシに言われた言葉が嬉しかった。
ソウシ
「お待たせ! はい、コレ」
ヒロイン
「?」
手の平サイズの瓶に、トロッとした液体が入っていた。
ソウシ
「この前髪が傷むって言ってたでしょ?
船に乗ると、潮風でやられちゃうから…
これトリートメント剤!
花のエキスを使って香りづけしたから、いい匂いすると思うよ?」
ヒロインは目を輝かせながら、その小瓶を見つめた。
ヒロイン
「スッゴイ嬉しいです!!
ありがとうございます! ソウシさんにお礼のつもりだったのに…
すいません…」
ソウシ
「ふふっ謝らないで?
喜んでもらえて嬉しいな♪ 今度感想聞かせてね?」
ヒロイン
「はい♪ それじゃあ…おやすみなさい」
ソウシ
「うん、おやすみ」
ソウシはニッコリと笑うヒロインを見送り
そっとドアを閉めた。
そして手に持ったチョコを頬張りながら
調合途中だった薬品に向かった。
ソウシ
「ん! これ美味しいなぁ~」
あのハーブがこんな風にチョコに化けるなんて
予想もしていなかった。
ナギの事でいっぱいかと思っていたが、ちゃんと自分の好みも知ってくれていた事に
感激していた。
ソウシ
「あ…そっか!」
ヒロインのチョコを食べたお陰で、今まで思いもしなかった組み合わせの薬が出来そうだ。
頭にひらめいた物を無心で紙に書きとめた。
ゆっくりじっくり食べようと思っていたチョコが
みるみる無くなっていった。