chocolat
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シン
「………」
シンはヒロインが隣に来て、無防備に体を寄せ
キャンドルを探している姿に、胸が高鳴った。
こんな小娘相手にドキドキしているなんて
本当にどうかしている。
だが、港で声を掛けてくるグラマラスな女や
色気たっぷりの女を見ても、一度も胸が高鳴るなんてなかった。
キレイな女と情事を済ませ、欲を満たせばそれで済んでいたが
ヒロインと出会って、この胸を締めつける感情を知った。
(…ただ横にいるだけなのに…どうかしてる…)
まるで何かの媚薬でも嗅がされたような気分だ。
甘いチョコレートの香りと、ヒロイン自身の抱き寄せたくなるような香り…
シンはスルリとヒロインの腰に手を回した。
ヒロイン
「!? シ、シンさん?」
シン
「…キャンドル欲しいんだろ?
ただで渡すのは納得いかない…」
ヒロイン
「えっえっ? な、何ですか?」
シンとの距離がグッと近くなる。
これはいつもの冗談に決まってる。
シリウスのメンバーはいつもこうやってからかって来る。
さすがにヒロインも相当慣れ、いちいち慌てなくなってきていた。
シン
「さぁ…どうする?
お前はオレに何をくれる…」
シンの顔が近づく。
今までだったら、キスされちゃうとか慌てたが
ヒロインはすかさずシンの着ているジャケットの中に手を滑り込ませ
脇腹を思いっ切りくすぐった。
シン
「っっ!!! チッ!!!」
するとシンはバッと離れ、とんでもなく険しい目つきで睨んできた。
ヒロイン
「ふふっ、シンさんが脇腹弱い事知ってるんですよ?
お礼はちゃんとします。
だから、キャンドルください♡」
シン
「チッ…好きなのを持っていけ!」
ヒロイン
「やはっ♪ ありがとうございます!
どれにしようかな♪」
シンは不覚にも油断した自分を恨んだ。
あんな子供の悪戯のような事をされたのは初めてだった。
こんな性格だから、
冗談を言ってきたり、じゃれてくるような女は
誰一人としていなかった。
(…だから嫌なんだ…不思議な女…)
ニコニコとキャンドルを物色しているヒロインを見て
シンは悔し紛れに言ってやった。
シン
「ナギとの行為に飽きたのか?
ロウソクを使ったプレイをするのも楽しめるぞ?
何なら手ほどきしてやろうか?」
そう言って意地悪く笑うと、ヒロインはキッと睨み返してきた。
ヒロイン
「ご心配なく!
シンさん…そういうの好きなんですか?」
シン
「ふっ…だったらどうする?
興味でも持ったか?」
ヒロイン
「………」
ヒロインは、またニヤツいているシンに
警戒心を抱いた。
ヒロイン
「…興味はないですけど…
シンさんとエッチしたら、怪我が絶えなそうです…
じゃあこのキャンドルもらっていきます」
ヒロインはお礼を言って、部屋を出て行った。
残されたシンは呆然とヒロインが去っていったドアを見つめていた。
(…オレとエッチしたらって……)
ヒロインから、そんな言葉が出てくるなんて思いもしなかったシンは
顔を真っ赤にし、思わず右手で口元を覆った。
シン
「…アイツ…」
オレにそういう事をされている姿でも想像したのだろうか?
まさかの展開にシンの方がやられてしまった。
シン
「チッ…襲うぞ…」
まだ部屋に残っているヒロインの香りを感じ
シンは体の熱が上がっていった。
・・・・・・・・・・・
時計が3時を告げ、シリウス海賊団のオヤツの時間となった。
こちらから声を掛けなくても、皆が自然と集まって
部屋中が甘い香りに包まれている事に
思わず顔が綻ぶ。
リュウガ
「ヒロイン! 随分と勿体ぶるじゃねぇか?
今年はどんなのにしたんだ?」
ヒロイン
「ふふっ、じゃあ持って行きますね?」
ニコニコしながら厨房に向かい、戻ってくると
ヒロインの手には小振りの陶器の器があった。
ハヤテ
「何だそれ? それがチョコ?」
大いに期待していたハヤテは、予想していたサイズ感と違い
ガッカリした表情を浮かべた。
しかしヒロインは、嬉しそうにニッコリ笑っている。
テーブルには三脚上のキャンドル立てが置いてあり
ヒロインはその上に小振りの陶器を置いた。
その瞬間、全員が陶器の中身を確認する。
トワ
「チョコですか?」
ヒロイン
「うん♪」
中にはトロトロに溶けたチョコが入っていた。
ヒロイン
「ナギ、そのキャンドルに火をつけてもらってもい?」
ナギ
「あぁ」
ナギにもこれが何なのか分からない。
皆がキョトンとしている中、ヒロインはカウンターの上に置いてあった大皿を
どんどんとテーブルの上に置いていく。
ソウシ
「あ! これってもしかして…」
ヒロイン
「ふふっはい♡
今年のバレンタインはチョコフォンデュです♪
好きなモノにチョコを絡めて食べてくださいね?」
大皿の上には、イチゴやバナナなどのフルーツから
小さ目のマドレーヌやマシュマロ…
大量に用意されたお菓子を見て、メンバーは身を乗り出した。
リュウガ
「今年は随分と凝ったものにしたな?」
ヒロイン
「はい! 好きなものをいっぱい食べてもらいたかったので♪
いっぱい食べてくださいね?」
チョコフォンデュ自体があまりピンと来ていないメンバー。
しかしチョコの甘い香りと、ヒロインの用意したフルーツや菓子を目の前に
自然と手が伸びる。
ナギ
「…これにチョコをつけるのか?」
ヒロイン
「そう!」
イチゴをピックに取ったナギは、甘い香りを放つ溶けたチョコの中へつけた。
ヒロイン
「食べてみて?」
ワクワクしたヒロインの表情に、正直気後れしてしまいそうだが
ナギはチョコの掛かったイチゴを頬張った。
ナギ
「美味い」
ヒロイン
「でしょ!? 他のも全部チョコに合うヤツだよ?
試してみて?
私コーヒー淹れてくるね?」
そう言って席を立つと、メンバーは楽しそうにチョコを付け始め
「美味い美味い」という声が聞こえた。
ヒロインは満足しながら厨房に入る。
カウンター越しに様子を見ていたが、やはり予想通り
かなりのハイペースだ。
余計にフルーツも菓子も用意しておいて正解だった。
全員分のコーヒーを用意し、食堂に戻ると
大皿の半分が既になくなっていた。
ヒロイン
「やっぱスゴイですね…」
ソウシ
「ヒロインちゃん、すっごい美味しいね!
知らなかったなぁ…
こんな食べ方もあるんだね」
シン
「…お前にしてはいい案だな」
リュウガ
「ホントだなっ!」
トワ
「僕このマドレーヌとクッキーにチョコつけるのが好きです♪
美味しいです~~」
ヒロイン
「あっそれ、私が焼いたの!
喜んでもらえてよかったぁ~」
ヒロインの嬉しそうな笑顔を見て、メンバー全員が温かい気持ちになった。
この子を喜ばす為に、色々してやりたいと思うのに
いつだってもらうのは自分たちの方だ。
全員がそんな気持ちを胸に抱いた。
ヒロイン
「あっ甘いのばかりだと、食べ飽きちゃうと思ったので
ジャガイモのチップスも作ったんです♪
良かったら合間に食べてくださいね」
あまりにも気の利いたヒロインの気持ちに
また胸が締め付けられる。
ヒロイン
「あの…いつも足手まといで迷惑掛けちゃいますけど…
優しくしてくれてありがとうございます!
これからもどうぞよろしくお願いします♪」
照れながら笑うヒロイン。
全員が手を止めて、その可愛い姿をずっと見ていたいと思った。
ヒロイン
「? あれ…?
私…変な事…言いました?」
動きが止まってしまったメンバーを見て、ヒロインは戸惑った表情を見せる。
ソウシ
「ふふっ、んーん
ヒロインちゃんがあまりにも嬉しい事言ってくれるから
感動しちゃった」
リュウガ
「がははっ!
ホントだなっ! この船にそんな礼儀正しいヤツはいねぇぞ?
やっぱりお前は海賊にはなり切れねぇな?!」
シン
「…こんなドン臭い海賊どこにもいませんよ」
ハヤテ
「言えてるな!
昨日なんか洗った洗濯物運んでてコケて
また洗い直してたしな?」
意地悪なハヤテの言葉に、ヒロインはムッとして
ハヤテからピックを取り上げた。
ヒロイン
「そういう事言うんですね?
…ハヤテさんはいらないって事でいいですよね?」
ハヤテ
「バッバカ!! ちげぇよ!」
ヒロイン
「…じゃあどういう意味ですか?」
ハヤテ
「……それは…」
言い淀んでしまうハヤテ。
いつになく弱々しいハヤテにヒロインは微笑んでしまった。
ナギ
「謝った方が身の為だぞ? ハヤテ」
かなり納得していないしかめっ面を見せるハヤテ。
ヒロインはハヤテに冷たい視線を送る。
ハヤテ
「……すいませんでした…」
ヒロイン
「!」
ハヤテが素直に謝るなんて珍しい。
それほど食べたいと思っている事が伝わり
ヒロインはニッコリ笑った。
ヒロイン
「ふふっはい♪
まだおかわりもあるので、いっぱい食べて下さいね?」
そう言ってバナナを刺してハヤテに渡すと
何故かハヤテの顔は少し赤くなっていた。
ナギ
「これだけ準備してたなんて知らなかった…
大変だったな?」
コーヒーを配り終えたヒロインが、ナギの隣に座ると
ナギはマシュマロを食べている所だった。
ヒロイン
「うん、結構頑張っちゃった。
でもこんなに喜んでもらえて嬉しいな♪」
また嬉しそうにニコニコしながらメンバーを眺めるヒロイン。
ナギはまた大人気ない嫉妬心が湧いている事に気付いた。
分かっていても、やはりヒロインが自分以外の誰かの為に
こうやっている事が嫌だと思う自分がいる。
(…どこまで嫉妬すれば気が済むんだ…)
自分でも驚くその感情に、ナギは自分自身でツッコミを入れた。
そして机の下で、そっとヒロインの手を握った。
ヒロイン
「!!」
一瞬ピクッと体が反応したが、ヒロインは態度に出さない様
他のメンバーと会話を続けている。
一生懸命平静を装っているヒロインが可愛くて
ナギは小さく微笑んだ。