chocolat
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ナギ
「………」
ハヤテ
「!!!」
ソウシ
「あれ? ナギ、いつからそこに居たの?」
白々しいソウシの言い方に、ナギは思いっ切り舌打ちをした。
ソウシがとっくに自分の気配に気づいているのは分かっていた。
ナギ
「……コレ、ヒロインがハヤテに持って行けって…」
ナギはサンドイッチの皿をテーブルに置いた。
ハヤテ
「ヒロインが?」
ハヤテはハッと顔を上げ、皿とナギを何度も見つめた。
ナギ
「…それから…」
ハヤテ
「?」
ナギ
「その…さっきは悪かったな…」
ハヤテ
「えっ…」
ナギ
「…感情的になって悪かった…」
目を大きく見開き、パチパチ瞬きを繰り返すハヤテ。
ナギがこんな風に謝ってきたのは初めてだ。
それに悪いのは自分だ。
サンドイッチを摘まみ食いしたのも、勢いでヒロインを抱きしめたのも…
全部ナギが怒って当然の事なのに…
やはりナギには適わないと
大人な態度を示すナギに、ハヤテはしょんぼりとうなだれた。
こんなんじゃヒロインが
自分なんかを好きになるはずがない。
自分のした事にも反省しないで
子供のように食堂を飛び出した自分が恥ずかしくなった。
ハヤテ
「……オレ…食堂戻る…
それもちゃんと食堂で食う…」
そう言ってハヤテは立ち上がり
テーブルから皿を取り、そのまま部屋を出て行った。
ソウシ
「ふ~ん…ナギも随分大人になったもんだね?」
うっすらと笑みを浮かべながら
ソウシが意味深にそう言った。
ナギ
「…別に…」
ソウシ
「ヒロインちゃんの力ってスッゴイねぇ?
ふふっナギをこうして謝らせて、ハヤテを食堂に呼び戻しちゃうんだもん」
ナギ
「……お節介なだけ…」
ソウシ
「あ~そんな事言って!
そのお陰でハヤテと仲直り出来たんでしょ?
素直じゃないハヤテと、無愛想なナギの仲直りって
いっつも曖昧な空気になるじゃない」
ソウシに言われて、納得した。
確かにお互い「ごめん」と言う一言がなかなか言い出せず
結局はギコチない時間を過ごしながら、いつもの関係に戻っていく。
ソウシ
「言葉にすればコレだけ早いのにね…クスクス
あっ!もうケンカとか無しだよ?
ヒロインちゃんのチョコは、美味しく食べたいからね?」
ナギ
「…分かってますよ…
それにケンカしたくてしてる訳じゃ…」
メンバーがヒロインに変なちょっかいを出さなければ
何も問題はないだけの話しだ。
ソウシ
「ふふっナギはもう少し免疫つけないとね?
嫉妬心剥き出してると、ヒロインちゃんだって疲れちゃうよ?」
ナギ
「……?」
ナギは首を傾げた。
「疲れる」とは、どういう事だろう。
眉をしかめながらソウシを見つめると、
ソウシは柔らかな笑顔を浮かべた。
ソウシ
「さっ!戻ろうか?
ヒロインちゃんのサンドイッチなくなっちゃうかも」
そう言って、ソウシはナギの横を通り過ぎながら
ポンっと肩を叩いた。
ナギはソウシの言葉の意味を考えながら歩いた。
ソウシ
「今日のヒロインちゃんって、なーんか傍にいると
甘い香りがして、思わずギューってしたくなっちゃうんだよねぇ」
ナギ
「…あぁ…」
完全に上の空のナギ。
ソウシは気のない返事をいい事に、さらに話した。
ソウシ
「あの甘い匂いを嗅ぎながらさぁ…キスしたらもっとチョコの味がして
もう溶けちゃうくらいに…」
ソウシはナギをからかう為に言い始めたのに
想像するヒロインとの甘いキスがあまりにも良過ぎて
我を失いそうになった。
しかし背後から、物凄い殺気を感じ
ハッと意識を戻し、ニッコリ微笑んで振り返った。
ソウシ
「ナーギ、それそれ!
嫉妬しない嫉妬しない!」
自分の不埒な妄想を悟られない様、ソウシは冷静にそう言った。
ナギ
「チッ…嫉妬とかじゃなくて、ドクター今何考えてた?」
ソウシ
「ふふー内緒♪
さぁてサンドイッチ残ってるかなぁ~」
陽気に鼻歌交じりで食堂を目指すナギ。
ハヤテなんかよりも、ソウシの方がよっぽどタチが悪いと
ナギはまた嫉妬心がチリッと疼いた。
・・・・・・・・・・・・・・
食堂にナギとソウシが戻ると、いつもの食事風景が広がっており
ハヤテはすっかりいつもの元気を取り戻し、
ヒロインの作ったサンドイッチを美味しそうに頬張っていた。
ナギは正直、ハヤテのそういう気持ちの切り替えが上手い所が
羨ましいと思っていた。
いつまでも嫉妬心や、ヒロインの事を考え
モヤモヤした思考が晴れないでいるナギは
食事が終わって、シンクで洗い物をしている今だって
考えていた。
ヒロイン
「ありがとうナギ。
結局手伝ってもらっちゃってごめんね?」
バレンタインの今日は、ナギがいつもしている『料理』を全て担おうと思っていたが
結局は昼食の用意も、食器の片付けも手伝ってもらっている。
やっぱりナギのようには要領よく出来ないなと
ヒロインは肩を落としていた。
ナギ
「…もうチョコの用意は出来たのか?」
ヒロイン
「あ…うん。
ほとんど出来てるの。 あとは盛り付けとシンさんのトコに行って
分けてもらいたい物があるんだ」
ナギの洗った食器を拭きながら、そう言うと
ナギの手がピタッと止まった。
ヒロイン
「? どうしたの?」
ナギ
「あ…いや…」
ソウシの言っていた、ヒロインが『疲れる』の意味が分かった気がした。
シンの所へ行くと言われただけで、「行かせたくない」という気持ちが湧いた。
これだけ長い時間、ヒロインと一緒にいるのに…
ヒロインの気持ちも、ヒロインがそんな女ではない事だって分かっている。
それなのに未だに、この感情が湧くのは
ある意味習慣になってしまっているのだろう。
男だけの船に、女はヒロインだけ
そういう連中ではないとは分かっていながらも
時折嗾けるちょっかいに、ナギもヒロインも振り回される時がある。
(この感情は牽制だ…)
ナギはそう決め込んだ。
嫉妬心ではなく、ちょっかいを出されない為にそういう感情を表に出して牽制する。
そのこじ付けとも言えるナギの自論が
妙に心を落ち着かせた。
ヒロイン
「そう?
あっねぇナギ! ナギはバレンタインにチョコもらった事ある?」
ヒロインは興味本位で聞いてみた。
ナギ
「…ある…」
ヒロイン
「えっ!? いつ?どこで?
何個くらいもらったの?!」
予想外だったのか、ヒロインは皿を拭いている手を止め
思い切り興奮してナギに詰め寄った。
あまりの剣幕にナギは少し身を引いて
それから水で濡れた手を、ヒロインの顔の前でパッと弾かせた。
ヒロイン
「わっ!」
ナギ
「…教えねぇ…」
ヒロイン
「えっ? な、何それぇ!?」
濡れた顔を拭きながら、尚も食い付いてくるヒロイン。
ヒロイン
「…それって…思い出のある女の子からとか…?」
不安そうな表情で見上げてくるヒロイン。
自分の知らない過去に嫉妬しているその顔が
何とも可愛かった。
そしてナギは嬉しかった。
何年経っても、ヒロインもちゃんと嫉妬してくれている。
ナギは柔らかい笑みを浮かべて、キュッと水道のコックを捻り
水を止めた。
ナギ
「…お前が期待しているような答えはねぇから…」
ヒロイン
「期待してるって…?」
ナギ
「大切な彼女にもらったとか、惚れた女にもらったとか…
そういうのはねぇから…」
ヒロイン
「そ…そうなんだ… そっか…」
ナギの答えに満足したのか、ヒロインはホッとしたような
安堵の笑みを浮かべた。
その表情を見ただけで、どれだけヒロインが好きでいてくれているかが分かり
ナギは胸がキュンと疼いた。
そして少し意地悪を言いたくなった。
ナギ
「あ…でも、あったな…
すげぇ大切なヤツからもらった事…」
ヒロイン
「えっ!?」
嬉しそうに笑っていた顔がみるみる曇っていく。
ナギ
「オレに内緒で渡そうとしてくれて
コソコソ作ってたけど、バレバレだったり
他のヤツにも渡そうとして、ムカついたり…」
ナギはヒロインが初めてくれたバレンタインのチョコレートを思い出した。
ナギ
「…でも…オレだけに皆と違うのくれて…
まだ付き合う前だったけど、忘れられない…」
ナギはその当時の初々しいヒロインの表情や
戸惑った気持ちを思い出し、思わず微笑んだ。
ヒロイン
「…ナギにもそういうのあったんだ…
私が初めてナギに渡した時も似た感じだったけど…
もしかして、その彼女と重ねて見たりしてた…?」
さっきまでの笑みが消え、寂しそうに俯くヒロイン。
ナギはまた胸が締め付けられ、堪らなくなり
後ろからヒロインの事を抱きしめた。