chocolat
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
今年もこの日がやってきた。
シリウス号が、チョコレートの甘い香りで包まれる日。
ヒロインが船に乗ってからというもの、毎年この香りが船内を覆い
メンバー全員が、思わず微笑んでしまう。
トワ
「ん~~~っ! 今年もいい匂いですねぇ~♡
何作ってくれてるんだろう♪」
医務室でソウシの薬品の整理を手伝っているトワは
クンクンしながら、幸せそうに笑う。
ソウシ
「本当だね!
ヒロインちゃんの作るチョコは
毎年とっても美味しいからなぁ…」
ソウシとトワはこれまでバレンタインにヒロインが作ってくれた
チョコレートの菓子を思い出す。
トワ
「僕、一番初めに作ってくれた
シンプルなチョコ好きでした♪」
ソウシ
「私はガトーショコラかな?
ん~…でもどれも美味しかった記憶しかないな」
2人は口の中に、あの濃厚で甘いチョコレートの味が広がった。
ヒロインは朝食の片付けが終わってから
ずっと厨房に籠もっていた。
今日だけはナギも立ち入り禁止だ。
それなのに、甘い匂いに釣られたハヤテが厨房の中へと入ってきた。
ハヤテ
「ヒロイン~ハラ減って死にそう…
なんか食うもんくれ」
ヒロイン
「あ~ハヤテさん!!
立ち入り禁止ですよ! ハヤテさんだけ無しになっちゃいますよ!?」
エプロン姿のヒロインが振り返り
追い出すように怒ってきたが、
甘い匂いに包まれたヒロインを見てゴクリと喉を鳴らした。
ハヤテ
「…お前…何だか美味そうだな?」
ヒロイン
「なっ何言ってるんですか!!
セクハラですよ!?」
ハヤテ
「はぁ!? 全然そんな意味じゃねぇし!!
ただ単にハラが減って…」
ヒロイン
「…それで私の事上手そうって…
何だかそっちの方が問題有りです!」
ヒロインはグイグイとハヤテの背中を押して
厨房の外へと押しやる。
ハヤテ
「ヒロイン! 頼む!!
何でもいいから食うもんっ!」
ヒロイン
「もうすぐお昼ゴハンですよ?
待てませんか?」
今日は昼食も任せられており、ヒロインは両方の準備に追われていた。
ハヤテ
「頼むっ!!!」
両手を顔の前でパンッと合わせ、ハヤテは懇願した。
ヒロインは何だか可哀想になってしまい
昼食用のサンドイッチを乗せた皿を手に取ると
後ろからにゅっと手が伸びて
ガッツリとサンドイッチを取られてしまった。
ヒロイン
「あっっ!! ハヤテさん!」
ハヤテ
「いっただき~♪」
ヒロイン
「もぉ!! 子供なんだからぁ!!」
そう言ってヒロインは、頬を膨らませながら
皿の半分以上が無くなってしまい
これでは足りなくなってなってしまうと
新たにサンドイッチを作る事になってしまった。
まだバレンタインの準備も途中なのに
とんだタイムロスだ。
ヒロインは片付けたサンドイッチ用のパンと具を用意して
改めて作り出した。
少しすると、厨房にナギが顔を出した。
ナギ
「ヒロイン、昼メシの用意手伝うか?」
ヒロイン
「あ…」
ナギの顔を見てホッとした。
本当は今日一日、ナギを休ませてあげたくて出入り禁止にしていたのに…
もしナギに手伝ってもらったら、かなりスムーズに出来そうだ。
答えに困っていると、ナギは有無を言わさず
厨房に入ってきた。
ナギ
「昼はサンドイッチか?」
ヒロイン
「うん…
出来てたんだけど…」
ナギ
「ハヤテに食われたか?」
ヒロイン
「そうなの… スッゴイがっつり持って行かれちゃって…
まだ二皿残ってるけど、これだけじゃ足りないよね…」
話しながらも、ナギはパンにマスタードとマーガリンを塗ってくれた。
ナギ
「オレがいるとそんな事出来ないからな…
あとでハヤテにはキツく言っとく」
ヒロインは隣にナギがいるだけで
とても安心した。
いつもこうして料理をしているのに
一緒の時には感じなかった安心感を実感した。
ヒロイン
「…ふふっ」
ナギ
「ん?」
急に笑い出したヒロインを見下ろすと
とても嬉しそうに微笑んでいた。
ヒロイン
「んーん、何でもない」
ナギ
「?」
そう言いながらも、まだ顔はニヤケていた。
視界に入ってくるナギの顔が、ずっと不機嫌で
今年もその表情を見れた事に思わずニヤケていた。
ナギ
「…お前、チョコの用意できたのか?」
ヒロイン
「あっうん! あともう少しなの。
ナギがサンドイッチ手伝ってくれたから
何とかオヤツの時間までには出来上がりそうだよ?」
ナギ
「……今年は何作ったんだ?」
ヒロイン
「!」
ヒロインは一瞬目を見開いたが、すぐに笑みがこぼれた。
今朝起きた瞬間から、ナギはずっと不機嫌で
チョコの事なんて、気にもしていないようだったのに…
毎年ナギはバレンタインデーになると、決まって不機嫌だ。
…というのも、ヒロインが自分以外の男の為にチョコを作っていると思うと
胸が焦げ付いて、不機嫌にならずにはいられない。
一番初めの年なんかは、まだ付き合ってもいなかっただけに
見てられないくらい苛立ち、ヒロインを無視して悲しませてしまった。
ヒロインと恋人同士になり、少しは気持ちが穏やかにはなったが
やはりいい気はしない。
ヒロインはナギのこの表情を見ると、初めは戸惑っていたが
今では愛されているんだと、心から実感ができ
胸を弾ませた。
ヒロイン
「ふふっ内緒だよ?
ナギも楽しみにしていてね?」
そう言うと、ナギは顔をしかめて視線を手元に戻した。
ナギ
「…オレにも内緒なのかよ…」
ヒロイン
「え? なぁに?」
ナギ
「…いや… ほら、マスタード塗れたぞ」
自分があまりにも子供っぽい言葉を発していた事に気付き
ナギは慌てて話をすり替えた。
恋人同士になっても、やっぱり嫌なものは嫌だ。
だがこんな気持ちをヒロインに言える訳がない。
ナギは小さくタメ息をつき、ヒロインが用意したサンドイッチの中身を
一緒に挟み込んでいった。
・・・・・・・・・・・・・・
ハヤテ
「はぁ!? 何でオレだけこんな少しなんだよっ!!」
ハヤテは不満げに顔をしかめながら、皿に3個だけ乗ったサンドイッチを
ヒロインに向かって差し出した。
ヒロイン
「……自分の胸に聞いてください…」
ハヤテ
「まさかさっきの事で怒ってんのか!?
あんなの想定内だろ?!
ナギ兄なんか、いっつもその分も考えて多く作ってるんだぞ!?」
自分のしている事を棚に上げ、ハヤテはさも正論を言っているとでいうように捲し立ててくる。
シン
「チッ…騒がしいヤツだな…
ガキみたいにガッついてるからだろ?
自業自得だ」
ハヤテ
「っ! ガッついてなんかいねぇって!」
ソウシ
「でもローストチキンのサンドが絶品って言ってたじゃない。
ハニーマスタードがいい味出してるって…」
ハヤテ
「………」
その瞬間、あれだけ騒がしかった食堂が
一気に沈黙に包まれた。
ナギ
「……話は終わったのか?
ハヤテ、それで物足りねぇんだったら…」
ハヤテ
「えっ♪」
やはりナギは優しいと、満面の笑みで顔を上げると
ナギが大きなスプーンで山盛りのマッシュポテトを皿に盛っていた。
ナギ
「これでも食ってろ」
ハヤテ
「………」
ハヤテは悟った。
怒っているのはヒロインというよりは、
寧ろナギの方のようだ。
いつもだったら、摘まみ食いしても
言葉で怒られる程度で、ここまでの事はされない。
固まっているハヤテを見かねて
ヒロインが声を掛ける。
ヒロイン
「ハヤテさん、大丈夫ですよ?
サンドイッチ多めに作り直したんで
ちゃんと食べてくださいね?」
そう言って皿を差し出すと、
キョトンとしていたハヤテの目が
段々とキラキラ輝き出した。
そして気づいたら、テーブル越しに
ギュッと抱きしめられていた。
1/9ページ