コトダマ
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それから3日が経ち、ヒロインは今ジョルジュの船に乗っていた。
ジョルジュの父がいる島まではあと少し、
その間ジョルジュの妹として怪しまれないよう
指導を受けていた。
ジョルジュ
「ん~…そこイントネーション違うな…」
ヒロイン
「う…すいません…
南部の方の訛りってあまり耳にした事がないので…」
シン
「フン、語学力が乏しいな…」
舵を取りながら、シンが呆れたように言ってきた。
ヒロイン
「6カ国語話せるシンさんには分からないですよっ!!」
頬を膨らませながら、ヒロインは机に伏せった。
するとジョルジュさんが優しく頭を撫でてくれた。
ヒロイン
「!」
ジョルジュ
「…ごめんな? こんな苦労をさせて…」
目線を合わせるように、覗き込むジョルジュ。
ヒロインには兄はいないが、いたらきっとこんな感じなのではないかと
胸の奥が温かくなった。
ヒロインはパッと体を起こし、気合いを入れ直した。
ヒロイン
「いえ! 着くまでに完璧にします!!」
そう意気込むと、ジョルジュは嬉しそうに笑った。
その笑顔がとても切なく感じた。
それはそうだ。
これから自分の父親を捕まえに行こうとしているのだ。
事業から手を引かせ、違法な薬品をばら撒く事を止めさせる。
実の父親がこんな事をしているなんて、それだけでジョルジュはどれだけ苦しんだだろう。
その上、自ら父親を裁きに行くなんて…。
ヒロインは考えるだけでとても悲しく
この件が上手くいったとしても、その後が一体どうなるのか
不安で堪らなかった。
シン
「…オイ、お前はあくまで替え玉だからな?
感情的になって面倒を起こすなよ?」
ヒロイン
「っ! め、面倒なんて起こしません!
…というか、シンさんいつまでこっちの船にいるんですか?
シリウス号の舵を取らなくていいんですか?」
シンは港を出航してから、ずっとジョルジュの船の舵を取っている。
シリウス号はリュウガが舵を取り、ジョルジュの船を追い掛けるように
ずっと後ろの方についてきている。
シン
「この辺りは海流が入り乱れているからな…
素人には操縦出来る訳がない」
船を造る事に長けているジョルジュだが、航海術はからっきりだ。
シンに舵を頼んだのはジョルジュだが、シンも満更ではないような表情をしていた。
それはそうだろう。
こんなに整備の行き届いた船は、滅多にお目にかかる事は出来ない。
全てが計算され、無駄のない造りのこの船を見たら
航海士であれば誰だって一度は動かしてみたいと思うはずだ。
饒舌に言い返すシンを見て、ヒロインは気づかれないように小さく笑った。
(…素直に操縦したいからって言えばいいのに…)
そんなシンを横目に、ヒロインはジョルジュから家族構成や
事業内容など、基本的な知識を叩き込まれた。
ジョルジュ
「一回休憩するか?」
ヒロイン
「…はい…ちょっと整理したいです…」
家族構成は分かりやすかったものの、ジョルジュの祖父の経歴などが複雑で
祖父にひっそりと育て上げられた妹とあれば、人一倍詳しくなければいけない。
ジョルジュが席を離れると、ヒロインは天井を見つめながら
ブツブツと呟いた。
ヒロイン
「…サルマさんがおじいさんで…その側近で親友の人が……」
シン
「コルトだろ?」
ヒロイン
「えっ? コルトさんはジョルジュさんのお母さんのお兄さんで…」
シン
「違うだろ! コルトは側近でサルマと一緒に帆船業を立ち上げた男だ」
舵を取りながらも、しっかり教えてもらっていたヒロインよりも
シンの方が格段に呑み込みが早い。
ヒロイン
「もぉ…シンさん、私パンクしそうです…」
そう言ってギュッと目を瞑り、椅子の背もたれに寄り掛かると
フワッとシンの香水の香りが鼻を掠めた。
ヒロイン
「!?」
ハッと目を開けると、舵を取っていたシンが
すぐ真横に立っていた。
シン
「…ナギにあれだけの啖呵を切っておきながら
随分簡単に根を上げるんだな?」
ヒロイン
「っ! 根なんか上げてません!!」
そう言って眉間にしわを寄せ、体を起こすと
ジョルジュが情報を書いてくれた紙を見つめた。
するとスッとシンの手がその紙の上に乗る。
ヒロイン
「? シンさん?」
どうしたのかと見上げると、シンの顔が思いの外近くにあった。
ヒロイン
「えっ…ど、どうし…」
戸惑っていると、シンが耳に唇を寄せながら言ってきた。
シン
「…ジョルジュが生まれた街はどこだ…」
吐息と共に吐き出された言葉に、ヒロインの体はゾクゾクッと反応した。
ヒロイン
「やっ! シンさん何をっ!」
グッとシンの体を押し返したが、シンはヒロインの背中に手を回し
逃げられないようにホールドした。
シン
「…早く答えないと、まずは耳から頂くぞ?」
ヒロイン
「えっ? やっあっ!!」
チュッと音を立てて、シンの唇が耳に触れ
そのまま甘噛みをする。
ヒロイン
「やっシンさっ…やめっ…んっ」
シン
「はぁ…やめて欲しかったら早く答えろ…」
ヒロインは信じられないシンの行動に怒りを感じながらも
思い切り反応してしまう事に、恥ずかしさを覚えた。
ヒロイン
「ド、ドリュッセルっ!!」
そう答えると、シンはそっと唇を耳から離し
悪戯な目で覗き込んできた。
シン
「ククッ…覚えがいいじゃねぇか…
じゃあ次の問題…」
ヒロイン
「~~~っ! いい加減にしてください!!
何考えてるんですかっ!」
体を寄せてきたシンから逃れるように、耳を抑えながら立ち上がるヒロイン。
すると航海室のドアが開き、オヤツを手に持ったナギが入ってきた。
ナギ
「カップケーキ焼いた… ……何かあったのか?」
変な空気と不自然なシンとヒロインの距離感に
ナギは不審感を抱く。
シン
「…いや、なかなか覚えられないと弱音をこぼしてたから
少し手伝ってやっただけだ。
な、ヒロイン?」
ニヤリと笑って視線を投げかけるシン。
ヒロインはキッとシンを睨みつけた。
ナギ
「…ヒロイン、覚えるなら厨房に来い。
オレが付き合うから。」
そう言ってナギはヒロインの手を取って、厨房まで歩いた。
ヒロイン
「………」
相変わらず耳を押さえているヒロイン。
ナギは何となく何があったかが分かり、「チッ」と舌打ちをした。
厨房に着くと、いきなりドンっと後ろからヒロインが抱きついてきた。
ナギ
「……どうした?」
背中に深く顔を埋めるヒロイン。
ナギはシンへの怒りで、胸が焦げ付いていた。
ヒロイン
「…ナギ…」
小さく名を呼ばれ、ナギはすぐに分かった。
そしてヒロインは、さらにギュッと抱きついてきた。
ナギはオナカに回った手に、そっと手を重ねた。
ナギ
「…ヒロイン」
ヒロイン
「ん?」
ナギ
「…弱音吐いたっていいんだからな?」
ヒロイン
「えっ…?」
ナギの言葉に驚いて、背中に付けていた顔をそっと離すと
ナギが振り返った。
ナギ
「…オレの前では、強がんなくていい。
ツラかったり、苦しい時は必ず言えよ?」
見上げたナギの顔が優しくて、ヒロインは何だか涙が浮かびそうになった。
そしてギュッとナギの胸に抱きついた。
ナギ
「ん? ふっ…どうした?」
そっと頭を撫でてくるナギ。
ヒロインは深くナギの胸に顔を埋め、答えた。
ヒロイン
「…じゃあ…ちょっとだけ…弱音…吐いてもい?」
ナギ
「ん?」
ナギの頭を撫でる手が止まった。
ヒロイン
「…実は…ちょっと寂しかった…
ナギこの処なんか上の空って感じで、素っ気なかったし
ジョルジュさんの船乗ってからは、何だか避けられてる感じだし…
だから…もう少しだけこうさせて?」
ナギ
「ヒロイン…」
ヒロインの腕が力強く体を抱く。
ナギはその力加減に、申し訳なさを覚える。
確かにここ数日、ヒロインとの接し方に悩んでいた。
海賊としてのヒロインを受け入れなくてはという事実と
そうあってはいけないという葛藤。
そしてジョルジュとの仲にも嫉妬していた。
妹を演じるのだから、当然の事なのだが
朝から晩までずっと一緒に行動し、しかもこの船に来てから
ナギとヒロインは別々の部屋で生活をしている。
何だか自分だけが取り残された感じがして、その感情が知らず知らず表に出ていたのだろう。
こういう部分が、いつもリュウガに言われる『不器用』な所だと
改めて反省した。
ナギはヒロインの背中に手を回し、大切に抱きしめた。
ナギ
「…別に避けてた訳じゃねぇ…
今回の事、心配でなかなか受け入れられなくて…
色々考えてた…」
ヒロイン
「…うん… そっか…
心配掛けてごめんね? でも…頑張るね?」
ナギ
「あぁ…」
ヒロインの言葉を聞いて、ナギもそれ以上何も言わなかった。
身代わりなんてやめろとか、大人しく船にいて欲しいとか
伝えたい本当の気持ちは隠し、ナギは頑張ろうとしているヒロインを応援する事にした。
ヒロイン
「…はぁ…ナギにこうしてもらうと落ち着くな…
ナギいい匂い…」
ナギ
「あ? それってカップケーキの匂いの事じゃねぇだろうな?」
こんな状況で菓子の事を言ってくるのかと、ナギは少し不機嫌に答えた。
ヒロイン
「ち、違うよ! …って違くもないけど…
でもナギの香り!
ナギにこうしてギュ~ってされると、いつも感じるの…」
ナギ
「ふっ…それ言ったらお前もそうだろ?
…まぁ…今はどういう訳だかシンの香水の香りしかしねぇけど?」
ナギの言葉にヒロインがパッと顔を上げる。
その顔を見れば、『シンに何かされました』と
思い切り書いてあるようなものだ。
ヒロイン
「あ…何も…されて…ない…っん!
ナ、ナギ??」
突然ナギが耳元に唇を寄せ、囁く。
ナギ
「…隠すのヘタ過ぎ…」
ヒロイン
「やっ…んっ…あっナギだめぇ…」
シンにされた耳とは反対の耳を、ナギが甘噛みする。
ナギにされるとこんなにも感じてしまうというのかというくらい
体がゾクゾクッと反応し、まともに立っていられなくなる。
ナギ
「ふっ…お前ここ弱いな…ほら、声…少し我慢しろ」
ヒロイン
「ぁ…ん…無理だよ…やっ…」
ナギ
「ピチャ…ん…はぁ…じゃあ…
ジョルジュのじいさんが隠れ家として使っていた島はどこだ?」
ヒロイン
「!!」
この状況、シンにされたのと全く一緒だ。
ナギは見ていたのだろうか?
ヒロイン
「あ…ナギ…んっ…やっ待って…」
ナギ
「チュッ…覚えるの手伝うって言ったろ?
ホラ…答えろよ…」
こんなの無理に決まってる。
シンの時は抵抗する事に必死だったが、ナギを欲していたヒロインには
急いで答える理由なんてなかった。