コトダマ
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船に着くと、シリウスメンバーは驚かされた。
リュウガ
「すげぇな! これマホガニーか?」
シン
「この造り… さすがだな。
流線型のボディは水の抵抗をなくす。
これはスピードが出るな」
ハヤテ
「何だよこの床板!!
コレ掃除いらねぇくらい磨き掛かってんな!」
初めて見る卓越された船の造りに圧倒される。
ソウシ
「スゴイね。
豪華な造りの船はたくさん見てきたけど
ここまで理に適って造られた船は初めて見るよ」
ジョルジュ
「ふははっ! そんな事ねぇよ!
オレはお前らの船の方が気になるけどな?
何であんな丈夫なんだよ!?」
ジョルジュは豪快に笑い、自分の技術を自慢するでもなく
さっさと船内へと入っていく。
トワ
「…何だかめちゃくちゃいい人ですね…」
ヒロイン
「うん…
いっぱい聞きたい事あるよね…」
お宝の真相とか、違法薬品の事とか…
何故娼館の女を大勢相手しているのか…
ただの女好きとは思えない。
やっぱりジョルジュへの疑心感は膨れるばかりだ。
黙り込んでいるナギも、きっと同じ事考えているに決まってる。
メンバーは警戒心を抱きながらも、ジョルジュの後についていった。
・・・・・・・・・・・・・・
ジョルジュの部屋に案内され、
シリウス一行は極上の酒に、舌鼓を打っていた。
リュウガ
「がははっ! こんな美味い酒久しぶりだな!」
ジョルジュ
「そうかそうか!
オレもこんなに楽しい酒は久しぶりだ!」
ジョルジュも嬉しそうに酒を煽る。
ソウシ
「…それにしても、この船には他の船員がいないようだけど?」
シン
「…確かに。
いるのは警備をしているような輩ばかりだな?」
酒に飲まれまいと、ソウシとシンが話を切り出した。
ジョルジュ
「あぁ…アイツらはオレが雇ったヤツらだ。
この船に仲間はいねぇよ。
…というか、オレに仲間はいねぇ」
急にジョルジュの声のトーンが下がり、陽気に酒を飲んでいたリュウガの目つきが変わった。
リュウガ
「…お前、何企んでる」
ジョルジュ
「ふっ、それはこっちのセリフだ。
何を狙ってる。
随分演技が上手いじゃねぇか?」
いつものご機嫌なリュウガにしか見えなかったが
一気に空気が変わり、リュウガはほろ酔いのフリをしていたのだと分かった。
そんな事いつも一緒にいるヒロインにすら分からなかった。
やっぱりジョルジュはただ者ではない。
ヒロインはリュウガとジョルジュのやり取りに目を見張った。
リュウガ
「ふっ…おめぇも食えねぇ男だな?
よっしじゃあオレから話す!
オレ達はお前の隠し財産を狙ってる。
どっかの島に隠した、莫大な財産をな!」
堂々と宣言すると、一瞬目を見開いて驚いたジョルジュだったが
すぐに吹き出した。
ジョルジュ
「ぶっぶははっ!!
面白れぇ! クククッ船中警備のヤツらばっかだってのに
ハッキリ言ってくれるな? …クククッ」
リュウガ
「だろ? 海賊ってのは結構面白れぇヤツが多いんだぞ?」
ジョルジュ
「ふっ、どうもそうみてぇだな?
こんだけ和やかな時間を過ごしてても、誰一人殺気が消えてねぇ…」
ジョルジュは不敵な笑みを浮かべ、メンバー全員を見渡す。
ジョルジュ
「ま…そうだよな?
オレを狙っていたんだから、酒くれぇじゃ気ぃ許す訳ねぇよな…
じゃあ…そろそろ腹割って話すかな?」
そう言って、深く椅子に座り込んでいたジョルジュは
体を起こし、両膝に腕を乗せ
前屈みに話し出した。
ジョルジュ
「信じるか信じないかはお前らの勝手だ。
オレは知っての通り、ジョルジュ・クォーツ。
帆船業で財を成したサルマ・クォーツの孫だ。
今はじいちゃん亡くなって、親父が受け継い出るけど
…知ってるよな? 黒い噂…」
腕組みをしながら壁に寄り掛かっているシンが言う。
シン
「…違法な薬品をばら撒いているって事か?」
ジョルジュ
「…そうだ。
恥ずかしながら本当の事だ。
親父が金に目が眩み、手を出しちまった」
ハヤテ
「…お前も加担してんじゃねぇのか?」
ジョルジュ
「何度も誘われたよ。
殴られもしたし、オレが別の目的で船を出そうとした時も
勝手に積荷に薬品を乗せられたり…」
ジョルジュは情けなく笑った。
ジョルジュ
「オレはじいさんのやり方が好きだった。
職人気質で、頑固者だったけど芯の通ったやり方で
船以外の事で金儲けなんてしていなかった。
だからオレは親父を止めて、何としてでもこんな事やめさせたいと思ってる」
リュウガ
「…なるほどな。
で、お前は娼館に入り浸って何を探してる?
財産の話を吹き込んで、女にモテようとしてるとは思えねぇな?」
こんな状況でも、リュウガは酒を煽りながら
ジョルジュの話を聞いていた。
ジョルジュ
「ひとつは調査ってトコか…
違法な薬品が出回ると、そういう店に流れる事が多い。
誰からもらかったか、どこで買ったか知りたかった。
この島にはまだ親父が撒いた薬品は出回ってないようだ…
金がある話をすると、この手の話を漏らす女が多いからな…」
トワ
「…他にも理由が?」
ジョルジュ
「…実はオレも探してんだ…
その莫大な財産ってヤツを…」
リュウガ
「あ?」
ジョルジュ
「財産の持ち主はじいさんで
親父の悪事に勘付いていたじいさんが、悪用されないよう
どっかに隠したんだ」
ナギ
「どっかって… あまりにも漠然としているな…」
するとジョルジュは肩を上げ、お手上げのような動作をする。
ジョルジュ
「死ぬ間際にオレにだけ言われた言葉があってな…
でもどこを示すかも、何を表してるのかも分からねぇ…」
リュウガ
「…そいつをオレらに教えるつもりはねぇか?
一緒に探し当ててやる」
ジョルジュ
「…あいにく、まだお前らを信用した訳じゃねぇ。
名高いシリウス海賊団の事だ。
場所が分かった途端に殺されちまうかもしれねぇからな?」
ヒロイン
「そんな人達じゃありません!!」
今まで一言も口を開かず、ナギの後ろに隠れていたヒロインは
思わず声を上げてしまった。
するとジョルジュは体を起こし、テーブルに肩肘を置き
右の頬を預けながら、興味深そうに見つめてきた。
ジョルジュ
「オレはお前にも興味がある。
どうしてお前みたいなヤツが海賊船に乗ってる?」
ヒロイン
「そんなことっ…」
ナギ
「そんな事、お前が知る必要はない」
ヒロインが答えるよりも先に、ナギが答えた。
するとジョルジュはニッコリ笑った。
ジョルジュ
「ふ~ん…そういう事か…
…オレが娼館に入り浸っていたのにはもうひとつ理由がある。
でも、やめた。
もう見つけちまったからな?」
ヒロイン
「!?」
何だか嫌な予感がして、ヒロインはナギの背中に隠れた。
シン
「…なるほどな。
お前は父親の尻拭いをしている為に、家では反逆者扱いされ
仲間もいない。
てっとり早く女でも作って結婚して、家族でも作ろうって魂胆か?」
シンの鋭い読みは、ジョルジュの中で少なからず抱いていた理想だった。
ジョルジュ
「…恐ろしいな…
お前、航海士か?」
ジャケットの隙間から、腰に下げていたコンパスがチラリと見えた。
シン
「…そうだったらどうする」
シンの威圧的な物言いに、ジョルジュは苦笑いをした。
ジョルジュ
「帆船業界トップの航海室を見たくねぇかと思ってな?
良かったら、案内するぜ?」
ヒロインはナギの影から、シンの反応を見ていた。
表情は至って冷静で、1ミリも動いてないように見えたが
明らかに纏っている空気が、ワクワクした輝きに満ちていた。
(うわっシンさん嬉しそう…)
シン
「…やけに親切だな…」
ジョルジュ
「なーに、この辺りの海域は海流が入り組んでるからな。
プロの航海士様のご意見を伺いたいと思ったまでだ」
ニカッと笑うと、立ち上がりシンを促すように
部屋の外へと連れて行った。
ヒロイン
「あ…シンさん、大丈夫でしょうか…」
リュウガ
「大丈夫に決まってんだろ?」
ソウシ
「…むしろ丸め込まれて帰ってきそうだね…
現にここに丸め込まれた人が1人いるし…」
リュウガ
「なっ! オレは別に丸め込まれてなんかいねぇぞっ!」
手に持っていたグラスをテーブルに叩き付けて、リュウガは慌てて答える。
ハヤテ
「気に入らねぇな…
何企んでるか分かんねぇし… 結局オレらを仲間にしたいって事じゃないんスか?」
苛立ちながらハヤテは声を荒げた。
トワ
「宝の場所は教えたくない。
だけど、協力はして欲しいって事ですか?」
ソウシ
「ん~…確かに、クォーツ家を相手にひとりでどうこうするのは無謀だし
私たちと組む事は、彼にとってもかなり有利になるよね…」
ナギ
「…オレは宝なんてどうでもいい。
それにアイツと組むのは無理だ。
帰るぞヒロイン。」
静かにやり取りを見守っていたナギは、胸に抱いていた想いを口にすると
ヒロインの手を引いて引き返していく。
ヒロイン
「あっ!」
リュウガ
「まぁ待てよナギ!
…結構面白い事になりそうな気がするんだがよ?」
そう言って、視線をキャビネットの上に置いてある家族写真に向けた。
トワ
「? コレってクォーツ家の…ジョルジュさんの家族って事ですか?」
ソウシ
「これがジョルジュで…これは両親かな…
で、このジョルジュと手を繋いでる小さい子…女の子?」
リュウガ
「昔聞いた事があるんだが、クォーツ家ってのは
男系の血筋でな、もし女が産まれると不吉な事の前兆として
物心つく前にどこかに売り飛ばしちまうんだと」
ヒロイン
「そんなっ!」
リュウガ
「…だが、こんな噂も聞いた。
ある年に生まれた女の子は、先代のサルマ・クォーツが憐れんで
こっそり育ててたってな…
そしてその子に、全ての遺言を託して亡くなったと…」
ナギ
「…つまり、その女が見つかれば
今のクォーツ家の当主を引きずり降ろせるかも…って事ですか?」
そしてその答えが出た途端、メンバーの視線が一気にヒロインに集まった。
ヒロイン
「?? え…???」
ソウシ
「…なるほどね…」
ハヤテ
「ヒロインを替え玉にして連れて行くって事か?」
ハヤテの言葉に、ヒロインは驚きのあまり
目を見開いた。
ヒロイン
「!!?」
リュウガ
「ジョルジュとの年齢差を考えると、ヒロインはちょうどいい替え玉だ。
それに何となく顔立ちも似てるじゃねぇか」
リュウガは写真立てを手に取り、ヒロインに差し出した。
ヒロイン
「に、似てるって…
私、そんな大役出来る訳ないですし…」
そんな話をしていると、部屋のドアが開き
やれやれといった顔つきでジョルジュが戻ってきた。
スッとヒロインから写真立てを取り上げると
懐かしそうな眼差しを向けながら
ドカッと椅子に腰掛けた。
ジョルジュ
「はぁ… 何でも知ってるのな?
どこまで詳しいんだよ全く…」
リュウガ
「…本当の話なのか…?」
全員の視線が突き刺さるようにジョルジュに集まる。
そして観念したように、話し出した。
ジョルジュ
「…全部ホントの事だ。
娼館に入り浸ってたのも、妹に似ている女を探していた。
…顔は似てても、口が軽いヤツとか性格が全然違うヤツとか…
中々見つからなくてな…
演技をしてもらうにしても、リスクが大きい。
裏切られて親父の方に付かれたら、元も子もないからな…」
シン
「…何故本物を使わない。」
トワ
「そうですよ!
ヒロインさんや娼館の女性を使うより、一番いい方法です!」
そう言うと、ジョルジュは悔しそうに顔をしかめた。
ジョルジュ
「そうできるならとっくにそうしてる!
…いないんだよ… 妹はもうこの世にいないんだ!」
メンバー
「「っ!!」」
ジョルジュの話によると、妹は祖父母のみぞ知る場所で
ひっそりと暮らしていた。
その存在を知ったのは
ジョルジュが16歳を迎えた時だった。
生きていて、しかもずっと近い所にいた事を何よりも喜んだ。
しかし、その存在を知ったのもつかの間
妹は病を患い、亡くなってしまったと言う。