コトダマ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ジョルジュ
「そう拒むなって!
絶対後悔させないって!」
ヒロイン
「そんなの何であなたに分かるんですかっ!
大きな声出しますよ?!」
ジョルジュは、気の強い言葉と強い瞳に
ますます惹かれた。
こんな反応、商売女では味わえない。
金や名声を口に出せば、すぐに体を開く女たち。
そういう店に行っているのだから、当然の事なのだが
それでもジョルジュは探していた。
そんな状況でも、自分をしっかり持っている女を…。
(商売女じゃない女だったら、誰でもこういう反応をするよな…)
ジョルジュはいつまでも頑なに拒み続けるヒロインを見つめた。
ジョルジュ
「…一応聞くが、お前何者だ?
娼館の女…じゃないよな?」
ヒロイン
「違います!!
私は仲間と旅をしているんです!
だから、早く帰らないと仲間が心配しちゃうの!」
ジョルジュ
「旅? 船でか?!」
ヒロイン
「っ!」
何だか妙に食い付いてくるジョルジュに不審を抱き
ヒロインは口を閉ざした。
もし海賊とバレてしまったら、お宝の情報を得るどころか
海軍か役人に突き出されてしまうかもしれない。
ここはいち早く、この場を去らなくてはと
ヒロインは少々手荒かと思ったが、ソウシに習った護身術を使おうと
腰に回された手をグッと掴んだ。
ジョルジュ
「…やめとけ。
そんな事しても、オレには利かないぞ?」
ヒロイン
「っ!」
その言葉にジョルジュを見上げると、ニッコリと全てをお見通しというような笑顔を浮かべていた。
さっきからこの男、誰かに似ている…。
ヒロインは掴んだジョルジュの手を離した。
ジョルジュ
「ふっいい子だな?
やっぱアンタ、ただ者じゃねぇな?
…まぁ細かい事はいいかっ!
酒でも飲んで、お互いを知ればいい」
そう言って、またしても船の方へと連れて行かれる。
どうしようかと、パニック寸前の思考を働かせていると
もうすぐでシリウスメンバーがケンカをしていた路地に差し掛かる。
まだケンカをしているだろうか?
ここでジョルジュを引き止めた方がいいのだろうか…?
ヒロインはドキドキしながら、路地に視線を向けると
そこには誰も居なかった。
(えっ…?!)
ケンカが治まっていて良かったが、誰もいないとなると
別の不安がよぎる。
もうこの状況を助けてくれる人は誰もいない。
自分の事を忘れて、皆どこかへ行ってしまったのだろうか?
急に体の力が抜け、抵抗するのを止めたヒロインを不思議に思い
ジョルジュは覗き込んできた。
ジョルジュ
「どうした?」
ヒロイン
「………」
ヒロインは心細くなった。
どうやってこの状況を切り抜ければいいのだろう。
力も敵わない、それに全てを見透かされている。
もうどうしようもなく思えて、絶望感に襲われそうになる。
しかし、ヒロインはギュッと拳を握り
ジョルジュを睨みつけた。
ジョルジュ
「!? ん? 何だ??」
ヒロイン
「あのっ! 何で私なんですか?
私、ホントにただここを歩いていただけだし
あなたが思っているような女でもありません。
正直、このまま船に乗ったらどうなるかスゴク怖いし
こうやって強引に連れて行くなんて、スッゴイ卑怯です!!」
ジョルジュ
「!!」
この状況で、よくこんな事が言えた物だと
ジョルジュは感心してしまった。
そして影に潜む気配に気づき、大いに笑った。
ジョルジュ
「ふっあはははっ!!
お前面白い女だなぁ! ホント気に入ったぜ!」
何故か大笑いするジョルジュを見て、ヒロインは「あっ」と気づいた。
誰かに似てる… それはリュウガだった。
外見は似てないが、この豪快な笑い方も
何も考えていないようで、実は緻密に計算している所とか…
陽気なフリをしているリュウガにそっくりだった。
ジョルジュ
「ふはっ、お前名前は?」
ヒロイン
「……言いたくないです。
あなたと関わりたくないから…」
ジョルジュ
「なーんだよ冷てぇ事言うなって!」
そう言って、腰に当てた手を肩に回す。
ヒロイン
「言っときますけど、私こういう事する人の扱い慣れてますからね?!
これ以上触ると、本当に技掛けますよ?」
また強気な発言が飛び出し、ジョルジュは胸が高鳴った。
探してた女そのものだったからだ。
ジョルジュ
「そうかそうか!
そいじゃそろそろやめるかな?
…そうしねぇと、体が切り刻まれて穴でも開いちまいそうだからよ?」
ヒロイン
「?」
そう言ってニカッと笑うと、ジョルジュは身を引いた。
暗がりでしっかりと見えないが
歳はリュウガに近そうだ。
そして抱かれた時感じたが、とても鍛え抜かれた体をしていると思った。
一見、優しそうな顔立ちのせいで
か弱い男に見られてしまいそうだが、この男相当出来る… そう感じた。
ジョルジュは急に暗がりの方へと振り返った。
ジョルジュ
「もう何もしねぇよ。
そろそろ出てきたらどうだ?」
ヒロイン
「???」
何を言っているのかと、ジョルジュを見つめていると
暗がりから黒い影が揺らめき、自分たちを囲むように近づいてくる。
ヒロインはその状況を固唾を飲んで見守っていると
突然後ろからギュッと抱きしめられた。
ヒロイン
「!」
驚いたが、すぐに誰に抱きしめられたかが分かった。
ジョルジュ
「…参ったなぁ…
これはこれは、シリウス海賊団の皆様…
そんな怖い顔して見ないでよ」
一人ぼっちにされたと思っていたが、メンバー全員が
ちゃんと見守っていてくれた。
ヒロインはナギに抱きしめられている安心感に包まれ
ようやくホッとした。
ジョルジュの陽気な声とは裏腹に、メンバーの顔には緊張感が走っていた。
リュウガ
「…うちの船員が世話になったな?」
そう言うと、ジョルジュは肩をすくめながら
両手を上げた。
ジョルジュ
「まーだ何もしてねぇよ?
それにしても海賊王にお会いできるなんて、光栄の極み…」
大げさに頭を下げるジョルジュ。
何だか調子が狂う受け答えに、シンが苛立つ。
シン
「…何を企んでる。
お前、途中でヒロインが海賊だって分かってて連れて行こうとしたな?」
まだ銃を収めないシンに、ジョルジュはニッコリ微笑んだ。
ジョルジュ
「やっぱバレてたか?
いや~こんないい子が海賊なんて信じられなくてな?
ちょ~っと興味湧いちゃったんだよな!」
想像していたキャラクターとあまりにもかけ離れてて
メンバー全員が拍子抜けした。
ハヤテ
「オイお前! 何でヒロインを連れて行こうとしたんだよ?」
両手を上げたまま、背後にいるハヤテの方を振り返る。
ジョルジュ
「お~シリウス海賊団ってのは、随分男前が揃っているんだなっ!」
答えないジョルジュに、ハヤテは切先を向ける。
ハヤテ
「答えろっ!!」
リュウガ
「ハヤテ! …それにお前ら、武器を下げろ」
リュウガにそう言われ、メンバーは渋々闘争心を静めた。
ジョルジュ
「すげぇな! 忠誠心ってのが備わってるねぇ!
オレが雇った連中にも見習ってもらいたいわっ!」
いつまで経っても、お調子者の空気を出すジョルジュに
リュウガは詰め寄った。
リュウガ
「お前と話がしたい。
…どうもお前には海賊らしいやり方は通用しねぇみたいだからよ?」
そう言うと、ジョルジュは嬉しそうに笑う。
ジョルジュ
「それはこっちのセリフだ!
どれだけこの女が大事なんだよ?
大の男が、6人掛りで奪い返しに来るなんてよ?」
リュウガ
「ふはっ!そりゃそうだ!!
お前の船には美味い酒があるそうじゃねぇか!」
ジョルジュ
「あぁ、海賊王と酒を飲むなんて
滅多に出来る事じゃねぇ!
もちろんヒロインも来るんだろ?」
ナギにしっかり抱きしめられているヒロインに
バチッとウインクするジョルジュ。
抱きしめるナギの腕に力が入る。
ナギ
「…妙な事したらタダじゃおかねぇからな?」
思い切り睨みつけるナギを見て、ジョルジュはまた嬉しそうに笑う。
ジョルジュ
「ふははっ! こりゃ楽しい酒になりそうだ!
そうと決まったらさっさと行くぞ!
ついて来い!!」
そう言って、ジョルジュはウキウキしながら歩いて行く。
トワ
「…何だか船長が2人いるみたいです…。」
ソウシ
「ホントだね…。
この世に船長みたいな人が、他にもいるなんて…」
ハヤテ
「何か噂の男とイメージ違くね?
もっと悪そうなツラしてるかと思ったけど…」
確かにそれは言える。
ジョルジュ・クォーツだと信じていいのだろうか?
帆船業を生業にしているクォーツ家の男が、どうしてここまで闘いに慣れているのだろう。
リュウガと楽しそうに話をしながら歩くジョルジュを
皆で怪訝そうに見つめた。
シン
「…とにかく、油断するな。
勘が良すぎるのが、どうも引っかかる…」
皆が眉間に皺を寄せているのを見て
ヒロインはずっと胸に抱いていた思いを告げた。
ヒロイン
「あのっ!
…その…すいませんでした…」
ソウシ
「!? どうしたの?」
ヒロイン
「私のせいで…
何だかとんでとない事になっちゃって…」
そう言って、しょんぼり俯くヒロイン。
それを見て、隣にいたナギが
ポンッと頭に手を置いてきた。
ナギ
「…お前のせいじゃねぇ…」
トワ
「そうですよ!
あんな所でケンカをしている人達がいけないんです!」
シン
「…随分言うようになったじゃねぇか…」
トワ
「だ、だって…」
ソウシ
「トワの言う通りだよ?
ヒロインちゃんのせいじゃないよ。
それにもしかしたらチャンスかもしれないよ?」
ソウシやトワの言葉を聞いて、少しホッとしたが
それでもジョルジュの馴れ馴れしい態度は、どうも腑に落ちない。
それはリュウガも分かっているはずだが…。
ヒロイン
「…あの人…相当強いですよ…
抱かれた時、相当鍛えてる筋肉の感触がしました」
ハヤテ
「…そんなの皆分かってるっつーの!
お前はナギ兄から離れんなよ?
お前が絡むと、面倒な事になるのが多いからよ」
シン
「…お前が言える事か…」
トワ
「ちょっ!シンさん!!
もうやめましょうよ!」
またしてもモメてしまいそうなシンとハヤテの間に割って入り
トワが一生懸命に宥める。
リュウガ
「オ~イ! おめぇら何してる!
さっさとついて来い!!」
リュウガに促され、シンもハヤテも納得しない表情のまま歩き出す。
ヒロインは不安げにナギを見上げた。
ナギの大きな手がそっと右手を包み、「大丈夫だ」と言ってくれる。
ナギが傍にいるというだけで、こんなにも安心する。
だが、あの男
本当に油断してはいけない男だ。
ヒロインは繋がれたナギの手をギュッと握り返し
気持ちを引き締めた。