コトダマ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
夜が更け、あれだけ賑わっていた港近くの街も
ようやく静寂に包まれた。
闇に紛れながら、シリウス海賊団は
莫大な財産を持つという男の船を探していた。
ハヤテ
「あれか?」
リュウガ
「どうもそうみてぇだな」
シン
「…金を掛けるにも程がある…
襲ってくれと言っているようなモノだ」
ナギが娼館の女から仕入れてきた、資産家の情報通り
港には牡鹿の旗を掲げた、大きな船が停まっていた。
トワ
「ホントですね!
警備も厳重ですし、間違い無さそうです!」
船の外装は、素人が見ても分かるくらい金を掛けており
その部品を売っただけでも、相当金になりそうだ。
ソウシ
「船は分かったとして…
本人は? ジョルジュ・クォーツ…」
双眼鏡を覗きながら、灯りのつく窓を探ってみるが
それらしき人物は見当たらない。
ナギ
「宿屋にも姿がない」
リュウガ
「って事は、また女遊びにでも繰り出してるか…
船に乗り込めたら、話は早ぇがな…」
話しながら、作戦を練っているものの
なかなかいい案が浮かばない。
トワ
「ジョルジュ・クォーツって、確か帆船業で巨万の富を得た
サルマ・クォーツの孫でしたよね?」
シン
「あぁ、じぃさんのサルマの代は
かなり腕も立って、評判も良かったみたいだが
息子に代替わりした時から
かなり悪い事をするようになったらしな…」
トワ
「悪い事…?」
ソウシ
「…違法な薬の売買…
帆船を売りながら、全国にバラ撒いてるって噂。
結構船乗りの間では有名な話しだけど
海軍も役人も、クォーツ家の名が大き過ぎて
なかなか手を出せないらしいよ」
ナギ
「海軍や役人にも、世話んなってるヤツがいるって事だな…」
ハヤテ
「…たちが悪ぃな…
確かに帆船だけで、島に隠すほどの財産を手に入れるのは難しいよな…」
リュウガ
「汚い金だからこそ隠してんだよ。
こりゃ高い金払って、情報仕入れてきた甲斐あったな!!」
満足そうに笑っているが、もしガセネタだったら
誰にも断らずに、お宝情報を仕入れる為に
シリウス号の資金を根こそぎ注ぎ込んだリュウガは
メンバーから一体どんな仕打ちを受けていただろうか…。
ソウシ
「とにかく、本人を見つけて
その隠し財産の有無を確かめなきゃだね!」
シン
「…アイツの行きそうな娼館を
片っ端からハシゴしますか?」
ヒロイン
「!!?」
短い時間で、よくそこまで調べ上げたと
今まで皆の話を尊敬の眼差しで聞いていたヒロインは
その言葉にピクッと反応した。
リュウガ
「ハシゴか…
いい響きじゃねぇか! 体が保つか分かんねぇな!?
ガハハハ!」
冷たく見つめるメンバーの視線も気にせず、大いに笑うリュウガ。
きっと自分が居ないところでは、もっと際どい話をしているのだろうと
男の世界には、とてもついていけないと思った。
ソウシ
「…言っておきますけど、我々にそんな浮ついた金はありませんからね?
もし今回お宝にありつけなかったら、船長の酒と部屋にある調度品を売ります」
リュウガ
「なっ! 他にもあるだろう?!
ソウシ! お前こそ自分の読んでねぇ医学書を売れ!
本の重さで船が沈むぞっ!」
ソウシ
「…呆れましたね…
大体船長は、いつも後先考えず…」
珍しくリュウガとソウシの言い合いが始まり
これは長そうだと、他のメンバーは話を元に戻した。
ナギ
「居場所が掴めねぇとなると、ここで見張ってるしかねぇか…」
シン
「…原始的で、ものすごく腑に落ちないが
ヤツの情報がこれ以上持ち合わせてないとなると仕方ないな…」
トワ
「あっ! だったら僕見張ります!
皆さん宿に戻っていて下さい!」
トワは率先して名乗りを上げた。
ヒロイン
「! それだったら私も!
ひとりで見張りだと、動きがあった時他の人に伝えられないよね?」
今回何も手伝えないヒロインは、ようやく自分が出来る事を見つけ
体を乗り出した。
ナギ
「ダメだ。
お前は宿に戻れ」
ヒロイン
「何で?」
ナギ
「なんでって… 今夜は冷えるし
それに…」
何か言いづらそうに口籠っているナギ。
ヒロインは「?」マークを浮かべ、ナギを見つめていると
シンが呆れたようにタメ息をつきながら言った。
シン
「…男と2人きりになるのが不安なんだろう…
チッ…器の小さい男め…」
ヒロイン
「!」
「そうなの?」とナギに問いかけようとしたが
照れ隠しに不機嫌な顔をしながら、遠くに視線を送っているナギを見て
言わずとも分かってしまった。
ハヤテ
「何だよ…
そんじゃシン残れよ」
シン
「…どの思考を使ったらその答えが出てくる…」
ハヤテ
「あ? 自然な答えだろ?
船長とソウシさんはあんなだし、ナギ兄はヒロインと一緒の方が安心だし…」
シン
「…お前は?」
ハヤテ
「オレはお前らが寝てる時間から、ジョルジュの情報収集してたんだから
寝るに決まってるだろ?」
何を分かり切った事を言ってくるのだと、ハヤテは迷いなくシンに言ってのけた。
シン
「…ほぅ… それは名案だな…」
そう冷静に答えたかと思うと、わき腹に指した銃を引き抜いた。
ハヤテもその動きを瞬時に悟り、スラリと剣を二本とも構える。
トワ
「ちょっ! 2人とも何してるんですかっ!?
ジョルジュの警備に見つかりますよ!!」
ナギ
「バカな事してねぇで、お前らさっさとしまえ!!
チッ、ヒロイン! 危ねぇから少し下がってろ!!」
ヒロイン
「う、うん…」
ナギに言われ、ヒロインは身を潜めていた路地裏から少し出て
大通に面している道へと後ずさった。
何という光景だろう…。
奥ではリュウガとソウシが口喧嘩をしていて
手前では、一触即発のシンとハヤテを
ナギとトワが羽交い絞めにして抑えている。
こんなに騒いでいたら見つかってしまうのではないかと
ハラハラしながら見ていると、静まり返った大通りから賑やかな声が聞こえてきた。
ヒロイン
「!!」
ヒロインはマズイと思い、影に隠れようと思ったが
変に隠れるよりも、このケンカを気づかれないよう
上手く振る舞う方が得策かもしれない。
そう思ったヒロインは、シリウスメンバーから離れ
声のする方へと歩いて行った。
女1
「やぁ~ん、エッチなんだからぁ~」
女2
「本当に3人でするのぉ~?」
男
「そうだよ! こんな可愛い子、どっちかなんて選べねぇよ」
商売女のような、派手な格好をした女を両手に侍らせた男が
楽しそうにこちらに向かって歩いてくる。
ヒロインはどうしたらメンバーの事を気づかれないか考えたが
サッパリ浮かんで来ない。
しかし男たちはどんどん近づいてくる。
どうしていいのか分からず、胸がドキドキ音を立てる。
結局何も出来ず通り過ぎようとした時だった。
男の足がピタリと止まった。
女1
「? やんっ何?」
女2
「ちょっとどうしたの?」
突然足を止めた男に驚き、女たちは不思議そうに男を見つめる。
ヒロインは心臓の音が聞こえてしまうのではないかと思う程
バクバクとする胸のお陰で、男の動きなんて気づかずに
そのまま自然に通り過ぎた。
男
「……ちょっと待て」
後ろの方で声が聞こえたが、まさか自分の事ではないだろうと
ヒロインはそのまま歩き続けた。
すると、男は手を肩に回していた女たちを引き離し
ヒロインを追い掛けてきた。
男
「オイ! 待てと言ってるだろ?」
ヒロイン
「!」
突然グッと肩を掴まれ、あまりの事に言葉を失う。
怯えながら男を見上げる。
男
「っ! …お前…女がこんな所で何してる…」
ヒロイン
「え…わ、私…ですか?」
何故話し掛けられたのかも分からず、痛いくらいに跳ねる心臓が
言葉すら話せなくさせる。
するとその様子を見ていた女たちが、不機嫌に声を掛ける。
女2
「ちょっとー、ジョルジュ!
どういうつもり?」
女1
「そんな女ほっといて、早く船に連れてってよ~」
(ジョルジュ!!?)
女が発した名前に、ヒロインは大きく目を見開いた。
ジョルジュ
「…悪い、帰ってくれ」
女1
「はぁ? 何言ってんの?」
ジョルジュ
「帰れって言ってんだ!」
ジョルジュはヒロインの肩を掴んだまま、鬱陶しそうに女たちに言った。
女2
「何なの!? 最っ低!!」
女たちは怒りに狂った表情を浮かべ、キッとヒロインを睨み付けると
大通りを引き返して行ってしまった。
ジョルジュと2人きりになってしまったヒロイン。
恐怖心が襲ってくる。
(ナギ…っ!)
そう心の中で叫んだが、恐らくあの騒ぎの中
今自分がこんな状況になっているなんて想像もしていないだろう。
黙り込んでいると、ジョルジュは肩に掛けた手を離して
そっと覗き込んできた。
ジョルジュ
「…どうしてこんな時間にお前のような女がここにいる…」
「お前のような女」とは、きっと商売女でもない
平凡な女が何をしているのかという意味だろう。
ヒロインは誤魔化さなくてはと、ギコチなく答えた。
ヒロイン
「あ… 宿に帰る所です…
星がキレイだったので、港にきたらもっと良く見えるかと思って…」
そう言って、初めて男を見つめると
その顔立ちの良さに驚いた。
ナギやメンバーの皆も言っていたが、女には不自由するようなタイプには思えない。
それなのに何故娼館にばかり出入りしているのだろう。
さっきも商売女を連れ込もうとしていた。
ジョルジュは怪訝そうに見つめてきた。
嘘がバレてしまったのではないかと、ヒロインはまた胸がバクバク音を立て始める。
(…この沈黙…何?)
一言も話さないジョルジュ。
ヒロインは息苦しくなってきた。
すると、ジョルジュは今までの空気が嘘かのように
ニカッと微笑んだ。
ジョルジュ
「そうかそうかっ!
やっぱり星は海から眺めるのが一番だよなっ!
オレの船から眺める星は格別だぞ!?
あそこに停まってる船だ! さぁ!」
そう言って、腰に手を回すと
グッと引き寄せられる。
ヒロイン
「あっいやっ!
やめてください! あのっ宿に帰らないと!」
そう言って拒んだが、ヒロインはハッとした。
これはもしかしたらチャンスなのかもしれない。
船に連れて行ってもらえたら、お宝を探ることが出来るかもしれない。
しかし、相当女に手慣れている男だ。
連れて行かれたら、ただで済むとは思えない。
ジョルジュ
「いいじゃねぇか!
美味い酒も、特上の部屋も…それから…」
ヒロイン
「?」
何だろうと、ヒロインが見上げると
ジョルジュは不敵な笑みを浮かべて、ヒロインの耳に唇を寄せた。
ジョルジュ
「…最高に気持ちのいい夜にしてやるよ」
ヒロイン
「!!!!」
囁かれた言葉に、全身が泡立ち
ヒロインはグッとジョルジュの体を押した。
(やっぱ無理っ!!)
潜入捜査なんて絶対無理だ。
ジョルジュの船に乗り込んだ時点で、逃げられる自信がない。
皆の力になりたいが、それ以上に迷惑を掛けてしまう。
ヒロイン
「やっやめてください!!
私、そんなつもりないのでっ!
離してっ!」
思い切り抵抗をするも、ジョルジュはズルズルと引きずって行く。
1/14ページ