Magnolia
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
のどかな時間が過ぎ、執事が焼きたての菓子を
3段のケーキスタンドに乗せて運んできた。
令嬢の母
「まぁ! なんて美味しそうなのかしら!」
エドモンド
「…何か好きな物は?」
エドモンドが気を利かせて、令嬢に話掛けるが
令嬢は驚いたように顔を上げ
「お任せします」と言った。
あまりグイグイ来られるのは好きじゃないが、
こうも無口だと、対応にも困ってしまう。
…もしかして、令嬢の方も乗り気ではないのかもしれない。
そう思うと、少しだけ希望が持てる。
この話をなかった事に出来るのではないかと…。
執事が丁寧に並んでいる菓子の説明を始めた時だった…
ハヤテ
「まーてぇ~~~! とうとう追い詰めたぞ海賊めっ!」
リュウガ
「ヒロインっ! 海軍が追いかけてきたぞっ!
捕まったら公開処刑だぞっ!」
チビヒロイン
「きゃ~~ つるしくびになる~~~!」
リュウガに肩車され、チビヒロインは楽しそうに声を上げる。
令嬢の父
「おや、あの方たちは?」
執事
「!!!! あ…あちらは…」
何というタイミグだろう。
庭園の中ほどで、シリウス海賊団が「鬼ごっこ」ならぬ
「海軍対海賊ごっこ」をしているではないか。
服装は、こちらで用意した物を着ているにしても
あの可愛らしいチビヒロインに、何て事を教えているのだろう。
執事はなるべくそちらに注意がいかない様
菓子や紅茶の説明を、大きな声で続けた。
シン
「お前たちに牢屋は用意されていない!
捕まったらすぐに処刑だ!」
執事
「!!! こ、こちらの段は、華やかな花畑をイメージしてまして…」
ソウシ
「船に乗せた財宝は、全て没収だっ!
大人しく降伏するんだ!」
執事
「ゴ、ゴホンっ! 三段目には砂糖菓子を敷き詰めた…」
チビヒロイン
「きゃ~つかまるぅ~
せんちょっ はしってはしってぇ~!」
リュウガ
「はぁ…バカ野郎、お前担いでこの丘は越えられねぇ!」
どれだけ誤魔化そうとしても、シリウス海賊団は一向に気に掛ける事もせず
大きな声で遊び続けている。
もうダメだと、声を涸らした執事が黙り込むと
沈黙の後、静かな笑い声が響いた。
エドモンド
「ふっふはは…」
令嬢
「ふふっ…クスクス…」
重なった笑い声に、エドモンドと令嬢はハッと顔を見合わせた。
令嬢
「…エドモンド様のご友人ですか?」
エドモンド
「あぁ、大切な友人だ」
令嬢
「そうですか…」
そう言って、微笑ましくシリウス一行を見つめている。
これにはエドモンドも驚いた、もっと嫌悪を示すかと思ったが
むしろ好意的に受け入れているようだ。
エドモンドは、思いもよらぬ反応を返す令嬢に
少しだけ興味を引かれた。
エドモンド
「…どうだろう。
少し2人で歩かないか…?」
令嬢
「……はい、喜んで…」
相手を知る事は、悪い事ではない。
もしかしたら、この子がヒロインを忘れさせてくれるかもしれない。
そんな期待もあったのかもしれない。
エドモンドが席を立つと、令嬢は侍女から真っ白な日傘を受け取り
静々と後をついてきた。
・・・・・・・・・・・・・・
存分に遊んだシリウス一行は、城の食堂でオヤツをもらっていた。
コック1(男)
「ナギ、今回は厨房入らないのか?
アンタの料理、また教えて欲しいけどな?」
以前、冷え切っていた城の雰囲気を取り戻すため
ナギとヒロインが厨房に入り、料理を作った。
それ以来、厨房のスタッフや給仕のスタッフとも仲良くなり
城を訪れる度に、快く受け入れてくれた。
ナギ
「そうしたいが、コイツを見てなきゃいけないからな…」
ナギの隣で、牛乳の入ったグラスを傾けて
ゴクゴク飲んでいるチビヒロインの頭を撫でた。
コック2(男)
「なんだぁ? 結婚したのか?
随分可愛い子じゃねぇか!」
ナギ
「…違う」
給仕スタッフ(女)
「なんだ違うの?
じゃあアタイだって、まだまだ望みがあるって事だね?」
ナギの年齢を2回りくらい越えているような女性が
大きく笑いながら言った。
コック1(男)
「この世に男と女がアンタとナギだけになっても
望みなんてねぇだろうよ!」
給仕スタッフ(女)
「なんだって~!?」
城の中であるにも関わらず、こういう砕けた空気間があるのは
とてもいい事だと思った。
「ぷはっ」と声を上げ、牛乳を一気に飲み干したチビヒロインは
グラスをテーブルに置いた。
リュウガ
「おぉ! いい飲みっぷりだなっ!
お前はこんな時から気持ちのいい飲み方が出来るんだな?! がははっ!」
可愛い顔をしながら、意外に酒の強いヒロインを思い出し
リュウガは大きく笑った。
ソウシ
「ホントだね、そうやって見ると
こんなに小さくても、大人のヒロインちゃんの要素がたくさん見えるよね?」
するとハヤテはコソッとチビヒロインに言った。
ハヤテ
「ヒロイン、もっとたくさん牛乳を飲め!
そうすりゃ後々ナギ兄が喜ぶからな?」
チビヒロイン
「?」
不埒なハヤテの発言に、ゴツンとナギはゲンコツを食らわした。
ハヤテ
「ってぇ~! 何すんだよ!!
ナギ兄だって、デカイ方が好きだろ?」
頭を押さえながら、ハヤテが言うと
シンが冷めた口調で返してきた。
シン
「ほぉ、お前の好みはデカイのか…?
クッ…お前ほどの男が選り好みするなんて、贅沢だぞ?」
ハヤテ
「あぁん? どういう意味だよ!?」
テーブルを挟んでいがみ合っている2人。
トワ
「もぉ~やめましょうよ!
ヒロインちゃんが怖がりますよ?」
ハヤテ
「チッ、お前の捻くれた性格どうにかしろよっ!
少しはヒロインを見習えっつーの!
なぁヒロイン?」
同意を求めるように、ハヤテがチビヒロインの肩を抱いた。
チビヒロインは、厚焼きのクッキーを頬張っていたが
口からボロボロこぼしながら答えた。
チビヒロイン
「? しんにぃちゃはやさしいよ?
はあてにぃちゃも いっぱいあそんでくれるから だいすき!!」
ハヤテ&シン
「「!!」」
無垢な笑顔と言葉に、シンもハヤテも大人気ない自分たちが恥ずかしくなった。
ナギ
「オラ、口からこぼれてるぞ?
少しずつ食え、いっぱいあるんだから」
チビヒロイン
「はぁい」
ソウシ
「ふふっ、いい子だなぁヒロインちゃん。
ヒロインちゃんが居ればケンカなんてなくなっちゃうね?」
リュウガ
「ホントだな?」
お気楽に話すリュウガとソウシ。
誰もナギの心中なんて気にしていないのだろう。
いつかは大人に戻るのだろうが、日を追うごとに不安になる。
このまま子供のままだったらどうしようと…。
これまでの事を考えると、そんな事はありえないが
ここ最近、子供になる事が続いていたので
不安は一層強くなった。
コック2(男)
「じゃあ、お嬢ちゃんも一緒に厨房入ったらどうだ?
おじさんがおいし~い、スープを作ってやるからっ!」
チビヒロイン
「スープ?!」
目を輝かせたチビヒロインが、訴えるようにナギに視線を送る。
ナギ
「……分かった。
厨房は、船の中と違って火力も強いし
危ないもんもいっぱいあるから、ちゃんと言う事聞けるか?」
チビヒロイン
「うん!!」
気持ちのいい返事を返すチビヒロイン。
ナギ自身も、城の厨房を使えるのも
この国の珍しい食材を使えるのも、楽しみで仕方なかった。
ハヤテ
「じゃあ今夜はご馳走だなっ!
ナギ兄、肉料理は必須な!?」
ナギ
「ふっ…分かった。
ヒロイン、行くか?」
チビヒロイン
「ん…… でも おしっこいきたい…」
もじもじと恥ずかしそうにするチビヒロイン。
ナギは手を取って、トイレへと向かった。
チビヒロイン
「なぎにぃちゃっ! ごはんなにつくるの?」
ワクワクしながら聞いてくるその瞳に
ナギは大人のヒロインを思い出した。
ナギ
「そうだなぁ… お前は何が食いたい?」
チビヒロイン
「ん~~ コロッケ!」
ナギ
「コロッケ? 珍しいな?」
チビヒロイン
「うん! なかにチーズいれたりするのっ」
それを聞いて、確かに一緒に作ったら楽しそうだと
ナギは納得した。
トイレに着くと、ナギは外で待つ事にした。
ナギ
「ひとりで平気か?」
チビヒロイン
「うん!」
そう言ってひとりで中に入ると、チビヒロインは驚いた。
今まで見た事のない程、中は広く
そして絵画をモチーフにした壁画で覆われ、天井はガラス張りで
とても豪華な造りになっていた。
使用人
「さぁこちらへ」
あまりにもスゴイ過ぎて、気が引けてしまい
ナギの元へと戻ろうかと思ったが、トイレの中にまで使用人がいて
きっとドレスを着飾った婦人たちのお手伝いをする役目なのだろう。
しかしチビヒロインには、そんな事は分からない。
どうしようか戸惑ったが、トイレを済まさないと漏らしてしまいそうだ。
ドキドキしながらついて行ったが、トイレは至って普通で
安心して用を足せた。
手洗い場で手を洗うと、トイレの中にもう一人女性がいた。
そしてその人が、別のドアを案内してくれた。
チビヒロイン
「どこいくの?」
???
「いいところよ?」
チビヒロイン
「おそとで なぎにぃちゃがまってるの」
???
「そう、じゃあ後で一緒に連れて来るわね?」
小さいヒロインは、何だかとても怖く感じ
抵抗するかのように、立ち止まった。