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執事
「皇太后様! こちらにおいででしたか」
皇太后
「まぁ探してましたか?
今可愛いお客さんとお話をしていたの」
庭園の片隅でしゃがみ込んでいる皇太后の傍に行くと
そこにはチビヒロインがいた。
執事
「! ヒロイン様っ!」
皇太后
「あら、あなたもお友達なの?」
チビヒロイン
「うん! ひつじのおじいさん!」
皇太后
「ひつじ?」
執事
「ヒロイン様っ! 皇太后様にそのようなお言葉を」
皇太后
「いいのよ」
皇太后はそっとチビヒロインの頭を撫でた。
執事
「皇太后様、そろそろお時間ですが
お体の方はいかがですか?」
皇太后
「えぇ、大丈夫よ。
エドモンドの大切な日ですものね」
執事
「…はい。
とても素敵なご令嬢様です。 エドモンド様ともとってもお似合いです」
執事の決まりきった言葉に、皇太后はきっと同じ気持ちなのではないかと悟った。
エドモンドの立場は分かっているが、好きでもない相手と結婚をしなくてはいけない事。
執事もきっと心を痛めているのではないか?
チビヒロイン
「あの おひめさま?」
チビヒロインは昨日の晩餐会で、キラキラのドレスを着た令嬢をうっとりと眺めていた。
皇太后
「そうよ、エドモンドのお嫁さんになるかもしれないの」
チビヒロイン
「わぁ~ えどにぃちゃとおひめさま!
すごいねぇ~ すてきだねぇ~」
キャッキャッと無邪気に笑うチビヒロイン。
皇太后も執事も苦笑いをするしかなかった。
・・・・・・・・・・・・・・
執事が皇太后を連れて、城へと戻ると
ちょうど令嬢とその両親は、席を外していた。
エドモンド
「あぁ、母様
今、化粧直しへと行かれています。
お加減いかがですか?」
皇太后
「えぇ大丈夫よ」
皇太后はエドモンドの疲れた表情を見て、苦しくなった。
皇太后と、エドモンドの亡き父は
確かに最初は親同士の話し合いで見合いをさせられたが
以前から知っていた者同士で、2人とも好意を抱いていた上での結婚だった。
だから、エドモンドの事を思うと
無理強いさせたくはないと思ってしまう。
国の為に身を尽くす立場ではあるが、人として自由に生きて欲しいと思うのは
過保護な親心だろうか?
執事
「…あの、エドモンド様
実は…」
そう口にした瞬間、執事の後ろからチビヒロインが飛び出し
ギュッとエドモンドに抱き付いた。
チビヒロイン
「えどにぃちゃ! おはよー」
エドモンド
「!!」
突然の事にとても驚いたが、エドモンドは今までに感じた事のないような
温かな感情に包まれた。
そしてそっと小さなヒロインの頭を撫でた。
エドモンド
「あぁ、おはよう。
よく眠れたか?」
チビヒロイン
「うん! あっあとね、きのうはありがとうございました!」
姿勢を正して、ペコッとお辞儀をするチビヒロイン。
エドモンド
「ん? 何の事だ?」
チビヒロイン
「おどってくれたことと、おへやにはこんでくれたこと!
なぎにぃちゃがいってたから」
礼儀正しくお礼を言うチビヒロインが可愛くて
エドモンドは優しく微笑んだ。
エドモンド
「ふっ、いい子だな!
皆と遊んでいたのではないのか?」
チビヒロイン
「うん! かくれんぼしてたのっ!」
エドモンド
「そうか、今度私も混ぜてくれるか?」
チビヒロイン
「うん!!」
チビヒロインは嬉しそうに目を輝かせ、大きく頷いた。
それを見ていた皇太后は、自然と微笑んでいた事に気が付いた。
皇太后
「エドモンド、あなたの笑い方はお父様そっくりね?」
エドモンドは嬉しそうに笑った。
エドモンド
「ヒロイン? 私は今大切な用の最中なんだ。
もう少し皆と遊んでてくれるか?」
チビヒロイン
「うん! おひめさまとおはなしね!」
エドモンド
「…あぁ…」
一気にエドモンドの顔色が曇り、チビヒロインはどうしたのかと見上げた。
すると椅子に座ったエドモンドは、チビヒロインの脇の下に手を入れ、そっと抱き上げたかと思うと
膝の上に座らせた。
チビヒロイン
「? エドにぃちゃ?」
エドモンド
「…ヒロイン、お前はナギの事好きか?」
少し寂しそうな顔で聞いてくる。
チビヒロインは、少し躊躇いながら答えた。
チビヒロイン
「うん」
エドモンド
「…そうか… やはり子供になってもナギは特別なんだな…」
チビヒロイン
「でも、みーんなすきだよ?
せんちょも そうしにぃちゃも しんにぃちゃも
はあてにぃちゃも とわにぃちゃも…」
無邪気な答えに、エドモンドは苦笑いをした。
エドモンド
「そうか、本当にいい子だな?
…私は好きになれるのだろうか…」
皇太后&執事
「「!?」」
エドモンドの本心に、皇太后と執事はハッと顔を上げた。
エドモンド
「…いつかこの気持ちが消えて、違う誰かに寄り添う事が出来るのだろうか…」
寂しいエドモンドの笑顔に、チビヒロインは真剣に答えた。
チビヒロイン
「あのね、 すき はなるんじゃなくて
いつのまにかなってるんだって!」
エドモンド
「え?」
チビヒロイン
「ごほんにかいてあったよ?
ヒロイン、みーんながニコニコになるおまじないしってるよ?
だからえどにぃちゃもなかないで?
ヒロイン、えどにぃちゃもだーいすきだよ?」
膝の上に座るこの子が、本当の天使のように思えた。
そして、諦めかけていた想いが
沸々と湧き上がってくる感覚が体を駆け巡る。
執事
「! ヒロイン様、そろそろお戻りにならないと…
シリウスの皆様が心配されていますよ?」
チビヒロイン
「はぁい!
えどにぃちゃ、またあとでね?」
そう言ってチビヒロインは、執事と手を繋ぎ
部屋を出て行ってしまった。
皇太后と2人になったエドモンド。
本当の気持ちを吐き出してもいいだろうか…。
一国の主が、自分本位の気持ちを伝えてもいいのだろうか…?
エドモンドはギュッと拳を握り俯くと
大理石の床に、白い大振りな花びらが落ちている事に気が付いた。
(ヒロインが落としていったのか…?)
その花を拾い上げた時、部屋のドアが開き
令嬢一家が戻ってきた。
・・・・・・・・・・・・・
ナギ
「ヒロインっ!」
執事と一緒に城の庭園に出たチビヒロインは
心配した表情を浮かべたナギに抱きしめられていた。
執事
「皇太后様のお庭に紛れ込んでしまったようで…」
ナギ
「迷惑を掛けてすまなかった」
ナギは顔を上げて、執事に詫びると
執事は優しい笑みを浮かべた。
執事
「いえ、とんでもございません。
ヒロイン様のお陰で、私たちも目が覚めたような気がします」
ナギ
「?」
そう言い残し、執事は城へと戻っていった。
ハヤテ
「あっ! ヒロイン!
こんなトコに居たのかよ?」
ソウシ
「心配したんだよ?
次からは誰かと一緒に隠れようね?」
チビヒロイン
「ごめんなさい」
ナギの胸から離され、ギュッと手を握られたチビヒロイン。
小さいながらにも、エドモンドの表情が気になっていた。
シン
「…どうした?
何かあったのか?」
トワ
「怖い思いでもした?」
トワが背を合わせるように屈みこみ、チビヒロインを覗き込んだ。
チビヒロイン
「んーん…」
ナギ
「………」
その反応に、何かあったのだと
ナギはすぐに分かった。
だが、こうして無事に戻ってきた事だし
ナギはもう少し様子を見る事に決めた。
リュウガ
「よしっ! そんじゃかくれんぼやめて
新しい遊びでもするか!」
チビヒロイン
「うんっ!!」
・・・・・・・・・・・・・
令嬢の父
「やぁ、なんて素晴らしい庭だ」
令嬢の母
「これだけ手入れをされているお庭は初めて見ますわ」
皇太后の計らいで、庭園でお茶をする事になったエドモンドたち。
快晴の春の陽気は、何とも清々しく
気持ちが滅入っていたエドモンドは、少し気分が晴れた。
皇太后
「ありがとうございます」
エドモンド
「母は自然が好きなので、亡き父がたくさんの木を植えたのです」
令嬢の母
「まぁ、素敵な事。
そのお優しい所は、エドモンド様がしっかり受け継いでおいでですわね?」
愛想笑いを返すエドモンド。
…分かっている。
大人のこういう社交辞令は、大抵見抜く事が出来る。
若くして国王の座についたエドモンドには、大人の世界を人より早く知った。
表ではいい事を言い、裏では国王の座を奪おうと
信じられないような事をされた事だってある。
だから、こうして令嬢の両親が
自分と娘を結婚させる為に、必死でお世辞を述べているかなんて
すぐに分かった。
それにしても、当の令嬢は俯きながら黙ってばかりだ。
噂通り、顔立ちは文句ない。
ヒロインと出会う前の自分だったら、すぐにでも体の関係を結ばせただろう。
結婚しなくても、側室として置いておくくらいしたかもしれない。
だが、今の自分はそんな事が出来ないほど
ヒロインに心を奪われていた。
正直、ヒロインと出会ってから
一度も女を抱いていない。
欲すら湧かないと言った方がいいだろう。
周りの使用人たちが、逆に心配して
夜な夜な女を送り込んできたほどだ。
ヒロインにしか欲情しない。
そんな体になってしまったようだ…。
見合いの席にも関わらず、エドモンドはそんな事を考えていた。