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エドモンド
「どうした? 眠いのか?」
するとチビヒロインはコクンと頷き
ギュッとエドモンドの首に手を回して抱き付いてきた。
その可愛らしい行動に、観衆はクスクス笑った。
エドモンドも優しく微笑むと、そっとヒロインを抱き上げた。
観衆の男
「エドモンド様は素敵な父上になりそうですな?」
観衆の女
「本当ですわ、ご令嬢とのお子なら可愛らしい子が産まれる事は間違いありません」
夢のようだった時間を壊すような言葉が胸をチクリと刺す。
しかしエドモンドは微笑みながら返した。
エドモンド
「まだ気が早いですよ?
ご令嬢の気持ちも聞いていないのですから…
皆は時間まで楽しんでくれ
私は少し席を外す」
そう言ってエドモンドはチビヒロインを抱えたまま晩餐会を後にした。
ナギ
「エドッ!」
廊下に出たエドモンドを追い掛け、ナギが声を掛けた。
エドモンド
「あぁナギ。
ヒロインは寝てしまったぞ?」
完全に力が抜け、クテッとエドモンドに全てを委ねているチビヒロイン。
しかしエドモンドは、愛しそうにチビヒロインを抱いていた。
ナギ
「…そうか…
部屋へ連れていく」
そう言って手を伸ばしたが、エドモンドはギュッとチビヒロインを抱く手に
力を入れた。
ナギ
「!?」
エドモンド
「…悪いが、私が部屋まで連れていってもいいか?」
ナギはその申し出に戸惑った。
本当だったら、すぐにでも「ダメだ」と言うべきところだが
エドモンドの気持ちを察すると、そんな言葉は言えなかった。
ナギ
「…分かった…」
そう言って、エドモンドとナギは
静まり返った廊下を歩いていった。
立場は違えど、ナギにだって同じような気持ちに立った事がある。
ヒロインに「好きだ」と初めて気持ちを伝えた日。
好きな気持ちは十分にあったが、自分の過去に巻き込んでしまう事
そして何より海賊として生きて行く事…
本当は諦めなくてはいけない気持ちなのに、ナギはその気持ちをヒロインに伝えた。
ヒロインはその気持ちを受け入れてくれ、今こうして一緒にしてくれるが
ナギ自身、何度も不安や後悔の念を抱く事がある。
本当に良かったのかと…。
ヒロインはこの手の話をすると怒るが、エドモンドに会って
ナギは久しぶりにこの感情に呑み込まれた。
どちらも口を開かずに歩いていたが、前を歩くエドモンドがボソッと呟いた。
エドモンド
「ふっ…不思議だな?
こんなに軽々運べるなんて… それにこんなに安心しきってくれるなんて…」
ナギ
「………」
きっとエドモンドは何度も想ったのだろう。
ヒロインが自分の女だったらと…。
ナギは何も答える事が出来なかった。
エドモンド
「…お前が羨ましい… 何でも満ち溢れているように見えて
私には自由なんてない」
ナギ
「…それはオレだって一緒だ。
海賊だからって、懸賞首でいつだって海軍に処刑されてもおかしくない身だ。
そこら辺のヤツらのように生きるなんて無理だ」
そう言うと、エドモンドは「ふっ」と寂しく笑った。
エドモンド
「…だがお前にはヒロインがいる…
それだけで特別だ…」
部屋のドアを開け、薄暗い部屋に入ると
エドモンドはそっとベッドにチビヒロインを寝かせた。
エドモンド
「無邪気なもんだ…
ふっ…気持ち良さそうだな…」
すぅすぅと寝息を立てているチビヒロイン。
エドモンドはベッドの縁に腰掛け、そっとチビヒロインの髪を撫でた。
ナギ
「…お前、結婚するのか?」
エドモンド
「……あぁ、きっとするだろうな…」
ナギ
「…そうか…」
それ以上何も言う事が出来なかった。
リュウガやソウシだったら、もっと気の利いた言葉が言えただろう。
それからしばらくチビヒロインを見ていたエドモンドは
執事が部屋へ呼びに来て、晩餐会へと戻っていった。
静まり返った部屋。
ナギは堅苦しいフロックコートを脱ぎ、タイを緩めた。
そしてエドモンドのように、ベッドの縁に腰掛ける。
重みを受け、ギシッとベッドが鳴った。
ナギ
「…ヒロイン…」
ふっくらとした頬を撫でると、チビヒロインは目を閉じたまま
顔を少しずらした。
ナギ
「…お前はいつも誰かに想われてるな…」
人の気も知らないで、眠り込んでいるヒロインが
憎らしくも思えてしまう。
ナギはそっとオデコに唇を当てた。
ナギ
「…早く大人に戻んねぇと、オレが心配し過ぎでおかしくなるぞ?」
返事なんて返ってくるはずもなく、そのままナギも一緒に
チビヒロインと寝る事にした。
明日は大人のヒロインに会えるようにと願いながら…。
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ハヤテ
「じゃあ数えるぞ~!!
いーち、にーい…」
チビヒロイン
「きゃあ~きゃははっ」
ナギの願いも虚しく、今朝はチビヒロインが腕の中で目を覚ました。
いつだってこのタイミングで戻って欲しいという時には戻ってくれない。
(…まぁ分かってた事だが…)
今日はエドモンドのお見合いの日とあって、
城中が慌ただしい。
シリウス海賊団は、邪魔をしないようにと
この場所だったら好きにしていいと言われたエリアで
チビヒロイン発案の、かくれんぼをする事になった。
ソウシ
「ヒロインちゃんはどこに隠れるの?」
チビヒロイン
「ひみつー!」
隠れるのは何度目かだが、ナギはその度チビヒロインと一緒に隠れていた。
ナギ
「あそこの木に登るか?」
ナギの指差した先には、大きな木が立っていた。
チビヒロイン
「んーん、こんどはひとりでかくれる!」
ナギ
「!?」
こんな返しをしてくるとは思わず、ナギは思い切りショックを受けた。
シン
「フン、立派な反抗期だな?」
ソウシ
「あははっ! ナギ、フラれちゃったね?」
ナギ
「チッ… ヒロイン、危ない所には行くなよ?
それと、行くなって場所には入るなよ?」
チビヒロイン
「うん!」
そう言ってチビヒロインは、お目当ての場所へと走り出した。
それを見送ったナギは、何とも言えない寂しさを感じた。
すると、ガシッと後ろから突然肩を組まれた。
ナギ
「!」
リュウガ
「随分すんなり行かせたな?
過保護は卒業か? くははっ」
ニヤニヤと意味深な笑みを浮かべるリュウガの腕を掴み
スルリと抜き取るナギ。
ナギ
「…過保護も何も、オレはアイツの親じゃないですから…」
不機嫌にそう言うと、ナギはどこかへ隠れに行った。
リュウガ
「…なーんだよ…機嫌悪りぃなぁ」
ソウシ
「ふっ…当たり前ですよ。
誰よりも一番、ナギが子供になった事を心配してるんですから…」
シン
「…知りませんよ?
アイツは根深い男だって事忘れてませんか?」
リュウガ
「………」
リュウガは軽はずみな言動をしてしまったと
少し胸が痛んだ。
勇んでひとりで隠れると豪語したチビヒロインは
ナギと一緒では隠れられないような場所を目指していた。
ナギはすぐに「危ない」だの「やめろ」とか
行きたい場所へは行かせてくれない。
チビヒロインは、ずっと気になっていた
背の高い生け垣の向こうを目指し、根元の隙間を四つん這いで進んで行った。
すると、そこには綺麗に手入れをされた庭園が現れた。
チビヒロイン
「わぁぁ~!!」
満開に咲き乱れたバラや、青い空に清々しく生え伸びた木。
その木には真っ白な花が咲いていた。
隣の木には淡いピンクの花が咲いている。
チビヒロイン
「きれー なんのはなだろ?」
高い枝先を見上げていると、そのまま後ろにコロンと転がってしまった。
???
「ふふふっ…
そのお花はモクレンよ?」
チビヒロイン
「?」
泥んこで、髪の毛には葉っぱが絡まっているチビヒロインは
声の方へと振り返った。
そこには、とても品のいい優しい雰囲気の
女性が立っていた。
ハッとしたチビヒロインは怒られるかと思い
その場に固まってしまった。
いつもだったら、隠れられるナギの足があるが
今はどうする事も出来ない。
女性
「可愛いお客さん
あなたのお名前は?」
チビヒロイン
「…ヒロイン…」
女性
「ヒロイン? そう、素敵なお名前ね?
あなたはエドモンドのお客さんかしら?」
その名前が出て、チビヒロインは安心したかのように
コクンと大きく頷いた。
女性
「ふふっ、そう!
エドモンドとはとっても仲良しのようね?
私はエドモンドの母よ?」
そう言ってニッコリ微笑む。
チビヒロイン
「お母さん…?」
皇太后
「そうよ。
エドモンドと仲良くしてくれてありがとう」
皇太后はチビヒロインの傍に寄ると、真っ白なハンカチで
顔の汚れを拭いてくれた。
皇太后
「お転婆なお嬢さんだ事」
そして笑いながら頭についた葉っぱを取ってくれた。
その優しい眼差しに、チビヒロインはうっとり見とれてしまった。
皇太后
「? どうしたの?」
チビヒロイン
「…おめめが えどにぃちゃそっくり!」
皇太后
「え?」
チビヒロイン
「やさしくて あたたかいの!
えどにぃちゃ、きのういっしょにおどってくれたんだよ!」
皇太后への言葉使いとはとても思えぬ態度だが、皇太后はそれよりも
チビヒロインの言葉に驚いた。
昨日は確か晩餐会だったはず。
ここの所体調を崩していた皇太后は、昨夜の晩餐会を欠席していた。
今日のお見合いは、頃合いを見て少し顔を出す事になっていた。
皇太后
「エドモンドがあなたと?」
チビヒロイン
「うん♡ おやくそくしたから きてくれたの!」
あれだけ大切な場だというのに、エドモンドはこの子の約束を守ったというのか?
それだけでエドモンドの本心が分かった気がした。
やはり気の進まない結婚なのだろう。
皇太后もエドモンドの中に、別の女性がいる事を知っていた。
以前に、クランベリーのスコーンを一緒に作った女性。
エドモンドをすっかり変え、いい方向へ導いてくれた子。
確か名前は…。
そう思い浮かべていると、目の前にいる子と一緒だったのではと
皇太后は目を見開いた。
…しかし、こんな子供ではない。
単なる偶然かと、思っていると
庭の芝生を踏みしめる足音が聞こえた。