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ナギ
「…ヒロイン? どうした?」
ヒロイン
「……え?」
肩に手を掛けヒロインを覗き込むと、ナギはその表情に驚いた。
焦点の合わないようなボンヤリとした目を向けるヒロイン。
ただ事ではない様子に、ナギが目を見開いていると
信じられない事が起こった。
ヒロインが手に持っていたカップがガシャンと音を立ててテーブルに落ちると同時に
ナギの触れていたヒロインの肩がみるみる小さくなっていく。
ナギ
「ヒロインっ!?」
その声にメンバーとエドモンドも、咄嗟にヒロインを見た。
真っ白なテーブルクロスに広がっていく紅茶のシミ。
そのシミが広がり終わる頃には、ヒロインは子供のようになっていた。
ソウシ
「…ついに…見ちゃったね…」
完全にいつものように、子供の体になってしまったヒロイン。
今までに二回同じ事が起こったが、子供になる瞬間を見たのは初めてだった。
エドモンド
「…何が…起こったんだ…?」
全く状況についていけないエドモンドは、目の前で子供になってしまったヒロインを
ただただ見つめるしかできなかった。
ナギ
「オイヒロイン? 大丈夫か?」
ナギに抱きしめられながら、目を閉じてグッタリとしているチビヒロイン。
今までと同じなら、目が覚めた時に自分の事やメンバーの事くらい覚えているはずだ。
ブカブカになったドレスを手繰り寄せ、ナギはもう一度チビヒロインに声を掛けた。
チビヒロイン
「ん…」
ナギ
「ヒロイン!!」
目の前の席に座っていたソウシも、急いでナギの元に駆け寄った。
腕の中にスッポリと入ってしまう小さな体がピクッと動き
そして薄っすら目を開けた。
チビヒロイン
「………」
ナギ
「ヒロイン?」
ナギはそっとチビヒロインの前髪をすくい上げ、顔を覗き込んだ。
するとチビヒロインは小さな手を広げ、ナギのシャツを掴むと
ギュッと胸に顔を埋めた。
ソウシ
「ヒロインちゃん?
ソウシだよ? どこか痛い所とか苦しい所はない?
私にお顔見せて欲しいな?」
優しくそう言ってみたが、ヒロインは恥ずかしがって更に力強くナギにしがみ付いた。
いつだって最初はこんな反応だ。
ソウシ
「…見た所いつもと変わらなそうだけど…
どうして急に…」
状況が呑み込めているメンバーとは裏腹に、エドモンドの固まりようといったら
とんでもないものだった。
それはそうだろう。
自分たちだって、初めてこの姿を見た時はとても信じられなかった。
ヒロインがある男からもらった「ククススの実」という若返りの果実を食べてしまったせいで
時折この姿になってしまう事がある。
ソウシが調べた結果、「ククススの実」の成分は、一度口にすると
体内に残り続け、何かの拍子で効果を表してしまう事があるらしい。
以前なった時は、初めて「ククススの実」を食べた時と
高熱でうなされているヒロインに、副作用を承知で薬を飲ませた時。
今日は一体何に反応したというのだろう。
ナギもソウシも、小さく丸まるチビヒロインが心配で
険しい表情をしているのに、他のメンバーは何だか嬉しそうに集まってきた。
リュウガ
「なーんだ? まぁた小さくなっちまったのかお前は?」
リュウガはナギの胸に抱かれるチビヒロインの頭をワシワシと撫でた。
ハヤテ
「ヒロイン! オレだぞ?ハヤテ!
オラ、いつまでもナギ兄にくっついてないで遊ぼうぜ?」
トワ
「ヒロインちゃん、ホラ美味しいお菓子もあるんだよ?
今お城に来てて、エドモンドさんっていう国王様のお部屋にいるんだよ?」
すると今までしがみついていたチビヒロインは、モソッと体を起こした。
チビヒロイン
「…こくおうさま?」
幼く可愛い声のチビヒロインに、メンバー全員がほんわかした気持ちになった。
シン
「この国で一番偉い人だ」
チビヒロイン
「…せんちょよりも?」
ヒロインの小さな頭の中の世界では、船の中で一番偉いリュウガが
どこにいたって一番偉いものだと思い込んでいるらしい。
リュウガ
「がーっはっは!
そうだな! オレよりも偉いヤツはいないかもなっ!?」
嬉しそうなリュウガの笑顔を見て、チビヒロインはようやくニッコリ笑った。
エドモンド
「…何が何だか分からないが…」
ナギ
「エド、悪いが子供用の服なんてあるか?
コイツに着せてやりたいんだが…」
エドモンド
「あ、あぁ、用意させよう」
そう言ってエドモンドは手元のベルを鳴らした。
すぐに部屋のドアが開いて、執事が入ってきた。
執事
「エドモンド様、お呼びで…… あの…こちらのお子様は?」
ナギ
「事情は後で話す。
さきに着るものもらえるか?」
執事
「は、はい。
ではお部屋の方へお持ちします」
そう言って、執事と一緒にチビヒロインを抱きかかえたナギは部屋を出ていった。
エドモンド
「…信じられん…」
まだ納得の仕切れていないエドモンド。
信じられないのは、こちらだってそうだ。
今回は何に反応して子供になってしまったのだろう?
ソウシは茶色に染まったテーブルクロスを見つめた。
・・・・・・・・・・・・
チビヒロイン
「どぉして おしろにいるの?」
ブカブカの洋服を脱ぎ、子供用の小さなドレスを着せているナギ。
さっきまでこの部屋で、このベッドで大人のヒロインと抱き合っていたというのに…
背中のチャックをジィ~っと上げながら
ナギは答えた。
ナギ
「さっき会った国王は、オレ達の友達だ」
チビヒロイン
「おともだち?」
ナギ
「あぁ、エドモンドって言って
オレ達はエドって呼んでる」
チビヒロイン
「えど…にぃちゃ」
背中を向けているチビヒロインは、キョロキョロと部屋の中を見回している。
ナギ
「どうした?」
チビヒロイン
「おへやひろ~いね! あれはなぁに?」
ヒロインが指差す天井には、百合の画が描いてある。
ナギ
「あれは百合って花だ」
チビヒロイン
「あれは?」
ナギ
「あれは天蓋だ」
チビヒロイン
「てんがい?」
ナギ
「ベッドの上からついてるヒラヒラした白い布の事だ」
きっとコレをつける意味とかあるのだろうが
そこまでナギも知らない。
それからも、目につくもの全て「あれは何?」の
質問攻めに合い、最初の内は真面目に答えていたナギも
答えた回答に対して、また質問をされるという
堂々巡りのやり取りに参ってしまった。
ナギ
「…オラ、着れたぞ! 鏡で見てみろ」
もうこれ以上無理だと感じたナギは、さっさと着替えさせ
気を逸らす作戦に出た。
案の定、チビヒロインはワクワクしながら大きな姿見の前に立った。
チビヒロイン
「わっわぁ~!! なぎにぃちゃ かわい?」
クルッと振り返り、淡いピンクのドレスがフワッと広がった。
ナギ
「ふっ… あぁ、可愛いよ」
その答えに満足したのか、ニコニコしながら
小さくジャンプをするチビヒロイン。
その姿が本当に可愛くて、ナギも顔が緩んでしまった。
ヒロインが子供になってしまうと、恋人である立場から
いつだって父親のような立場にならないといけなくなる。
その事がなんとも複雑で、ナギはこの気持ちを整理する事が出来ない。
その上、いつ大人に戻るか分からない。
こうして子供用のドレスを着ている今だって、大人に戻ってもおかしくないのだ。
そう思う反面、たまに会えるこの可愛さに
いつもヤラれてしまう…。
嬉しそうに何度も鏡に自分の姿を映し、チビヒロインは笑っていた。
チビヒロイン
「ねぇなぎにぃちゃ!
ヒロインもおうじさまとおどれる?」
ナギ
「ん?」
チビヒロイン
「ヒロインもおひめさまドレスきたから
おうじさまとおどりたい!」
目を輝かせながら、聞いてくるヒロイン。
きっと以前、シンが買い与えた絵本の中に
そういう類の物語があったのだろう。
そして「王子様」はエドモンドの事だろう。
ナギ
「…何だ? ヒロインはエドと踊りたいのか?」
チビヒロイン
「うん♡ キラキラのおうじさまとおどりたい!」
ナギ
「!」
屈託のない笑みに、ナギは何とも言えないモヤモヤした気持ちが湧いてきた。
いつも自分の事が一番だと言ってくれているのに
エドモンドを前にしたら、あっさり持っていかれてしまったという事か?
子供になってまで嫉妬してしまう自分もどうかしているが
それよりもナギは妙に不安に駆られてしまった。
そんな事を考えていると、コンコンとドアをノックする音が響いた。
そしてドアから顔を覗かせたのは、ソウシだった。
ソウシ
「着替え終わったかな? …わぁ!
ヒロインちゃんお姫様みたい!!」
チビヒロインを見つけたソウシは、ニッコリ笑ってそう言った。
チビヒロイン
「あっ! そうしにぃちゃっ!」
するとヒロインも嬉しそうに、ソウシの元に駆け寄り
両手を広げて、ソウシに抱っこを求めた。
ソウシ
「よっと… 光栄だな、ヒロイン姫を抱っこできるなんて!」
チビヒロイン
「きゃはっ そうしにぃちゃ、ヒロインかわい?」
ソウシ
「うん! 今まで見たお姫様の中で一番可愛い!」
するとヒロインは更にニッコリと微笑み、ソウシの頬を両手で挟んだ。
ソウシ
「ん?」
ナギはそのままキスでもするのではないかと
ハラハラしていた。
チビヒロイン
「そうしにぃちゃ、きょうもかみのけ かわいくしてくれる?」
ソウシ
「髪の毛? あぁ、もちろんだよ!
ふふっヒロイン姫はどんなのがご所望かな?」
チビヒロイン
「やったぁ~! あのね ここがねフワフワッてしててね
ここにねピカピカのギザギザのをのせたいの!!」
…つまり、緩いウェーブをつけて
頭の上にクラウンを置きたいという事だろう。
あまりにも女の子らしい要望に、ソウシはクスクス笑ってしまった。
そしてソウシは、不機嫌にその様子を見ているナギに
笑いながら聞いた。
ソウシ
「…だって? よろしいですか?
ナギパパ? ふふっ」
ナギ
「!! チッ…勝手にしろ!
オレは先に大広間戻ってるからっ」
そう言ってナギは顔を赤くしながら部屋を出て行ってしまった。
チビヒロイン
「…そうしにぃちゃ…」
不安そうに腕の中で顔をしかめるチビヒロイン。
ソウシはニッコリして、ドレッサーの前にチビヒロインを降ろした。
ソウシ
「大丈夫だよ?
とびきり可愛くなって、ナギにも見せてあげようね?」
チビヒロイン
「うん♡」
一気に表情が明るくなり、やはりいつでもヒロインの中ではナギが一番特別なんだと思ったソウシ。
(…ナギはヒロインちゃんの事となると…)
あの余裕のない表情を思い出し、ソウシは「ふふっ」と笑った。